デットエクイティスワップ(DES)とは?メリット・デメリットや税務上の注意点も解説

経営不振に陥ってしまった企業に対する金融支援策は多岐にわたります。借入過多と赤字計上などの要因により債務超過に陥ってしまった企業に対し、抜本的な財務内容の改善策として提供される支援策の1つがデットエクイティスワップ(DES)です。 今回はDESのメリット・デメリットや実務的な税務上の課題などについて、債権者と債務者、両方の視点を交えて解説します。

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デットエクイティスワップ(DES)とは

デットエクイティスワップ(DES:Debt Equity Swap)とは、企業が有する債務(デット)を資本(エクイティ)に交換する(スワップ)する金融手法です。主に経営不振により過剰債務に陥っている企業に対する支援策として一般的になってきています。

企業への貸付金を有する金融機関が主体となって行うケースが多いといえ、過去不振に陥っていたダイエーなどの公開企業に対して1,000億円規模で行われるものから、中小企業に対する金融支援の一環として幅広く活用されるようになっています。

一般的に債務超過の企業は追加的な金融支援を受けづらくなります。また、事業面においても仕入れ条件が悪化することも想定され、厳しい状況に面することも考えられます。DESによって負債の一部を資本に振りかえ、債務超過を脱することにより、外部環境を改善させ、再起を図ることが可能なのです。

具体的には負債が10億円、純資産が2億円、欠損金が3億円の債務超過(債務超過額1億円=欠損金3億円-純資産2億円)の企業があったとします。そこで、債権者である銀行が負債の一部である1億円をDESにより株式に振り替えることによって、企業は債務超過を脱することができます。

デットエクイティスワップ(DES)のメリット

対象企業の再起復活に資するDESですが、上記以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。債権者、債務者の側からみたDESのメリットを解説します。。

債権者側のメリット

DESは、従来の貸付金(債権)が株式(資本)に代わります。したがって、債権者のメリットとしては、対象企業が再建した場合、株式の譲渡によりキャピタルゲイン(譲渡益)や、配当収入の獲得がまず考えられます。

また、銀行などの金融機関は貸付先の財務状況に応じて債務者区分を設定し、区分に応じた引当金と呼ばれる、いわば将来的な損失に備えた予備費を計上しています。債務超過を脱することができるDESによって、対象企業の債務者区分が改善する可能性があります。

その結果、引当金の減少や、本来であれば債権放棄を余儀なくされていた対象企業がDESを行うことで、債権を損失計上しなくてよい場合がある点もメリットと言えるでしょう。

債務者側のメリット

債務者である対象企業にとっては借入過多となっていた有利子負債が削減することにより財務内容が改善します。その結果、返済すべき元金+利息よりも配当金の方が少ない場合、資金繰りも安定します。

また、債務者区分の改善により新たな金融支援を受けることができる点や、取引先との取引関係が改善する点がメリットとして考えられます。

デットエクイティスワップ(DES)のデメリット

債権者、債務者が企業の再起を共同歩調で図ることができるDESですが、メリットばかりではありません。債権者側、債務者側から見たデメリットを検討していきます。

債権者側のデメリット

通常、企業が経営破綻してしまった場合、残余財産の回収順位は債権が資本に優先します。そのため、貸付金などの債権の回収が終了したさらに残りの財産しか資本の提供者は得ることができません。

一般的には、経営破綻する企業の資本の出し手が回収することができる金額は、ゼロか極めてわずかといえます。

したがって、DESにより資本に交換された従来の債権は、対象企業が経営破綻に陥った場合の回収が債権に比べて著しく劣後するというハイリスクハイリターンとなってしまう点が最大のリスクでもあり、デメリットでもあります。

また、債権であった時には得られていた利息収入はなくなるため、対象企業が配当可能な場合しか配当を得られない状況となってしまいます。加えて、非上場企業の場合は実務上、株式の処分が困難であることや、株式の評価が煩雑なことなどがデメリットとして考えられます。

債務者側のデメリット

債務者側のデメリットとして、株主となった従来の債権者による経営への関与により、経営の自由度が制限される点があげられます。

DESを行うほどの金融支援を受ける対象企業は、金融機関などの関係者と歩調をそろえて再建に向かって歩むことが必要であるため、そもそも経営への関与は歓迎すべきことといえます。ただし、時として意見に食い違いが生じた場合など、やっかいな存在となってしまうかもしれません。

またすべての企業ではありませんが、DESを行うことで資本金の額が増加した結果、法人住民税の均等割部分の負担増加や外形標準課税の負担増加、中小企業の税制特例が受けられなくなる場合があるなど、、税制面でデメリットが生じる可能性があるため、事前の確認が必要です。

デットエクイティスワップ(DES)の税務

DESは税務上、現物出資型とするのか?現金払込型にするのか?といった実務的な方法の違いがあります。

現物出資型は法的安全性が高い

現物出資型とは、債権者が債務者に対する債権を債務者に現物出資し、株式の割り当てを受ける方法です。

法的安全性が高い点がメリットですが、債務者に債務消滅益が生じる場合、課税が発生する可能性があります。

現金払込型は債務者消滅益が発生しない

現金払込型とは、債権者は現金を払い込み債務者から株式の割り当てを受け、債務者は払い込まれた現金により債権者に対し即座に弁済する方法です。

債務者にとっては、出資を受けた金銭で債務を弁済する形式をとるため、債務消滅益が発生しない点がメリットですが、増資資金の第三者からの差し押さえリスクや「見せ金」リスク、「詐害行為」などの法的なリスクを有します。

現物出資型とするか、現金払込型とするかについてはメリット・デメリットがあるため、案件によって各々選択されますが、税務上の相違点もあるため注意が必要です。

債務者側の税務上の処理

債務者側の税務上の処理として、現金払込型のDESの場合、現実に現金による払い込みがあるため債務消滅益は発生しません。

一方で、現物出資型のDESの場合、後ほどご説明する適格現物出資の場合を除き、券面金額(実際の債務額)と債務の「時価」の差額を債務消滅益として認識する必要があります。適格現物出資とは、対象会社が100%の資本関係を有することや、100%未満でも従業員や事業の継続、株式継続保有といった要件を満たすことなどの条件を満たす出資です。

事業会社がグループ会社化を強化する目的でDESを行う場合などはこの条件を満たすことがありますが、一般的な金融機関が主導するDESの場合は100%子会社となることは想定されていません。結果的に金融機関が主導する現物出資型DESの場合、対象会社に債務消滅益が発生する可能性が大きくなります。

ただし、DESは対象会社の財務内容改善のために行われる施策であり、債務消滅益が発生します。その利益に対して課税が行われれば、結果的に対象企業の資金繰りを圧迫する可能性があります。

そこで、平成18年の税制改正により、企業更生法や民事再生法による場合の資産の評価損計上が認められました。その結果、これら法的整理や法的拘束力はないものの手続きの透明性や公平性が定められた私的整理ガイドライン。再生企業に対し債権者と債務者間の合意により金融債務を猶予したり減免したりする手法である事業再生ADRなどの私的整理の場合にDESを行う場合、債務消滅益を欠損金や資産の評価損と相殺することができ、課税を回避することも可能となりました。

債権者側の税務上の処理

債権者側の税務上の処理を見てみましょう。

現金払込型のDESの場合、出資により同額の債権を回収したことになるため、税務上損金処理することはできません。

一方で、合理的な再建計画に基づいて行われた現物出資型のDESの場合、取得した株式はその時の時価で引き受けたことになるため、元来の債権額と株式の時価との差額は譲渡損失として認識されることになります。

企業再生手法としてのデットエクイティスワップ(DES)は、今後、更なる活用が促進される

企業再生支援の手法としてDESは一般的となっており、平成26年4月施行の銀行法の改正なども含め、今後さらなる活用が促進されるでしょう。

自社ないしは取引先が経営不振に陥ることは不幸なことではありますが、そういった場合の再生手法の一つとしてDESを念頭において金融機関等と交渉してみるのもよいかもしれません。

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