そもそも「炎上」とは?

 
そもそも「炎上」とは?

炎上とは何か?

何がどうなると炎上となるのか、答えられるだろうか?

実は、炎上については、統一の客観的な基準や定義がある訳ではない。国際大学グローバル山口真一主任研究員によると「ある人物や企業が発信した内容や行った行為について、ソーシャルメディアに批判的なコメントが殺到する現象」(「ネット炎上の研究」勁草書房、田中辰雄・山口真一、P5)となっている。

概ね、どこでも似たような表現になるが、統計の取り方も研究者や企業によって異なっており(注1)、実態が今一つはっきりしない。

ある会社の統計によれば、2020年の炎上件数は、1年間で1,415(注2)となっている。

実に1日あたり約4件の炎上が発生していることになる。炎上の対象は企業であったり、著名人であったり、最近再び注目を集めているバイトテロのような個人であったりと様々となっている。

構成比率も業者によって変わるため、一概に企業・団体の比率が高い、低いとは言えない。

炎上は怖い?

炎上は怖い?

2021年2月、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」といった東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長の発言を受けて、世界的に非難が集中したのは記憶に新しい。

開会式、閉会式の楽曲を担当したミュージシャンの小山田圭吾氏は、障害者へのいじめや暴力を告白した記事により辞任。

演出を担当した小林賢太郎氏はユダヤ人大量虐殺を揶揄した過去のコント映像に非難が集中し、解任された。

オリンピックのような公的な行事だけでなく、企業にとっても広告やSNS上の発信、店員や社員の電話口での対応などをきっかけに、ネット上の炎上は頻繁に起きている。

明らかな犯罪行為や失言、製品の欠陥がある場合はともかく、企業にとって突如降りかかる炎上を「恐怖」と感じる方も多いだろう。

意図的に作られる「炎上」

意図的に作られる「炎上」

▼出典はコチラ
総務省:『令和元年版情報通信白書』からフロンティア・マネジメント作成。15%以上の項目を抜粋して掲載

なぜ「炎上が怖い」となるのかは、その発生の仕組みと、拡大の過程によるところが大きい。

炎上は自然発生的に起きるものもあるだろうが、多くは炎上をさせたい人が意思を持って起こすものである。炎上のネタを探し、執拗な書き込みや拡散という形で薪をくべる人がいて、ネットニュースやまとめサイトやワイドショーなどのメディアが油を注ぐことで大炎上するという流れである。

マスメディアに取り上げられる前であれば、さほど大きな影響はなく、前述のように1日に4件も炎上が起きている中では、多くはすぐに忘れさられる。実際に炎上を認知する経路としては、大半がテレビのワイドショーを挙げているように、そこまでは限られた世界の中での話題に留まる。

注意をしなければならないのは、メディアでの報道に繋がる有力な「まとめサイト」に載るかどうかである。最近では、ネットニュースやバラエティー番組などでネットユーザーのコメントを紹介する機会が増えている。

昨今のマスメディアにおいて、「炎上した」ということが「ニュース性」を判断する一つの目安となっていることがうかがえる。また、報道により炎上が拡がることによってニュース性がさらに高まるといった面もある。

炎上ネタを探し、炎上を作りたい、炎上によってニュース性を高めたい、という面では、両者の利害は一致しており、Win-Winの関係にあると言えよう。

「炎上=世論」に非ず

「炎上=世論」に非ず

炎上に書き込み等で加担しているインターネットユーザーの比率は1%未満と言われている。その中でも執拗に書き込みをしている人は更に限られるのが実情である。前述の山口氏の研究では、ネット炎上参加者の属性として「年収が多い、子持ちである、ラジオ利用時間が長い等の属性」(山口真一、ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」)が優位となっていたとされる。

食品に関する炎上事件が頻発していた際に、筆者自身も一般の消費者を対象にまとまった数の座談会を実施したが、書き込みをしたことがある者は見られなかった。

炎上に参加しないどころか「自分が炎上の的になるのが怖い」と、商品等に対する発信することを控えたり、書き込みを「特別な世界」と距離を置いていたりしている人が大半であった。

ネットに掲載された写真についても「加工したものではないか」と感じている人も多く、炎上の外側にいる人の反応は予想した以上に冷静、客観的だったことに驚かされたことを覚えている。

ネット炎上とは少し離れるが、あるインスタントラーメンのコマーシャルに対し、婦人団体が「男女の役割の固定化につながる」ということで放映中止を求めたものが、日本でいわゆるジェンダー問題が認識されるきっかけと言われている。

この時(1975年当時)、会社には100件近い消費者からのメッセージが寄せられたそうだが、そのうち、CMに対して「けしからん」と婦人団体と同様に非難していたのは3件に留まり、他は好意的な評価であったと言われている。

当時のマスコミの論調を含め世論は、婦人団体に対しむしろ冷めた姿勢をとっていた。

ただ、このCMは約2カ月後に放送中止となり、これをきっかけに男女の役割分担に関する表現は徐々に見直しが進み、最近のCMではジェンダーの役割表現について配慮するのが常識となっている。

この当時から時代は大きく変わったが、“炎上”が必ずしもその時代の一般世論を示したものでないことは、認識しておくことが重要である。

慌てず、炎上のどの段階かを認識

どの程度話題になったかのバロメーターとして、ツイッターの「トレンド入り」が挙げられる。

直近で大きな話題になった小山田氏のいじめ問題は、内容の悪質性もあってツイート数が膨らんだが、それでも7日間で16万件と、IOCのバッハ会長に関するツイート数(注3)には届いていない。

一般にネットニュースやワイドショーなどで取り上げられ「大炎上」したとされるものでも、TwitterのトレンドでTop10に入ってくることは少なく、2~3日もすれば沈静化するのが大半である。情報の消費はそれだけ早いのである。

最上の「炎上対策」は、注意深い情報発信

最上の「炎上対策」は、注意深い情報発信

炎上対策は、何よりも炎上しやすいテーマを認識し、注意深く発信をしていくことである。ジェンダー、人種、格差、宗教、政治、戦争といったテーマは特に注意を要するテーマとされる。

最近では、ジェンダーや人種に配慮して、新幹線の車内放送を「レディース・アンド・ジェントルマン」を「オールパッセンジャーズ」に見直し、化粧品の「美白」を「ブライトニング」に変更するといった、ポリティカル・コレクトネスに配慮した取り組みが増えてきている。

広告をはじめとする企業の情報発信は、「ターゲット」を意識した情報発信が行われる。

しかし、SNSの時代において情報はターゲットのみに届くわけではなく、その周辺の人々にも届く。誰かを傷つける表現になっていないか、慎重な配慮が求められる。

慌てて謝罪しない

慌てて謝罪しない

慎重な情報発信に努めていても、炎上することはある。

かと言って、慌てて謝罪する必要はない。

まずは、批判が妥当かどうか見極める必要がある。

そして、炎上がどの段階であるのか、SNS上にとどまっているのか、有力なまとめサイトに取り上げられているのかどうかの確認が必要だ。

反射的に自社の主張を発信することは、避けるべきである。

コメントを切り取られて火に油を注ぐことになりかねない。大事なことは、炎上の外側にいる大多数の消費者をいかに味方につけるかを念頭に、丁寧に慎重に発信していくことである。

ターゲットの周辺の人々にも配慮する

発信者の想いをターゲットに届けるかどうかは大切なことだが、メッセージを伝えたい対象だけでなく、その周辺にいる人達がどのように受け止めるかが、とても重要だ。一方で常に炎上を狙っている人々がいることを忘れずに発信していくことが今まで以上に求められる。

注1:シエンプレデジタル・クライシス総合研究所では、関連する投稿が100件以上となったもの炎上としてカウントしているのに対し、エルテス社では当社指定のまとめサイトに掲載され、かつ、リツイートが50回以上となったものを炎上としてカウントしている。

注2:「デジタル・クライシス白書2021」シエンプレデジタル・クライシス総合研究所調べ

注3: Yahoo Japanリアルタイム検索で両名の名前を検索し、7日のツイート件数をカウント。2021年7月20日16:30現在。

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