チャーンレートとは?解約率改善とLTVの関係とともに解説

「サブスク全盛」とも言える昨今、音楽配信や動画配信だけでなく家具や洋服、野菜やコーヒーまで、様々なサービスがサブスクリプションモデルで提供されるようになりました。サブスクサービスで成功を収めるために重視したい指標が「チャーンレート(解約率)」です。今回は、チャーンレートを重視すべき理由から、チャーンレートの求め方、改善方法などを解説していきます。

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チャーンレートとは?サブスクサービスの重要指標

チャーンレートとは「解約率」のこと。すべての顧客のうち解約した顧客の割合を示すもので、「顧客離脱率」や「退会率」と言われることもあります。チャーンレートは、サブスクサービスで成功を収めるために非常に重要な指標とされています。

チャーンレートの計算方法は、顧客数をベースにする「カスタマーチャーンレート」と、収益をベースにする「レベニューチャーンレート」があります。

カスタマーチャーンレート

カスタマーチャーンレートとは、顧客数をもとに算出する解約率のこと。計算方法は以下のとおりです。

カスタマーチャーンレート(%) =
(一定期間に解約した顧客数 ÷ 期間前の顧客数) × 100

一般的に「チャーンレート」と言うと、カスタマーチャーンレートを指します。カスタマーチャーンレートでは、有料会員から無料会員へダウングレードした顧客も解約とみなして計算に含めます。

カスタマーチャーンレートは業界やサービス、企業規模などによって大きく変わってきますが、3〜10%程度が平均で、3%以内に収めることができれば理想的だとされています。

レベニューチャーンレート

レベニューチャーンレートとは、収益をもとに算出する解約率のこと。計算方法は以下のとおりです。

レベニューチャーンレート(%) =
(サービス単価 × 一定期間に解約した顧客数 ÷ 一定期間の総収益) × 100

レベニューチャーンレートも解約による損失だけでなく、有料会員から無料会員へダウングレードした場合の損失も含めて計算します。

複数の料金プランがあるサービスでは、カスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートで違いが出てくるため、レベニューチャーンレートもチェックしていく必要があります。

サブスクサービスの台頭~所有から利用の時代へ~

近年の消費行動の変化を見ると、「所有から利用」へのシフトが顕著になっています。IT技術の目覚ましい発展によって消費のデジタル化が進むと同時に、サブスクリプションモデル(一定期間の利用料を支払うビジネスモデル)の商品・サービスが次々と誕生しました。

ひと昔前であれば所有することが当たり前だったモノでも、必要なときに必要なだけ利用するスタイルが一般的になりつつあります。

2020年は、新型コロナウイルスの流行にともなう巣ごもり消費の拡大によって、音楽配信や動画配信などのサブスクサービスへのニーズが高まりました。その他にも、家具や洋服、自動車や子どものおもちゃ、野菜やコーヒーなど、サブスクサービスは日に日に増加しています。

関連記事:リカーリングビジネスはサブスクリプションとどう違う? 新しい収益モデルを解説
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チャーンレートを重視すべき3つの理由

サブスクサービスを展開するうえで、チャーンレートが重要だと言われる理由についてご説明します。

1.新規顧客を獲得するより効率的に収益を得られる

「チャーンレートが高いのであれば、新規顧客を増やせばいい」と考える方もいるかもしれませんが、新規顧客を獲得するには大きなコストを要します。

「1:5の法則」では、新規顧客を獲得するために必要なコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかるとされています。

このことを踏まえると、新規顧客の獲得に注力するより、既存顧客の維持、つまりチャーンレートの低減に努めたほうが効率的に収益を拡大できるのです。

2.サービスの本質的な改善につながる

顧客がサービスに満足している状態であれば、通常は解約することはありません。

解約に至ったということは、顧客がサービスに対して何らかの不満を抱えていたはずです。つまり、チャーンレートは顧客の不満が如実に現れる指標だと言えます。

チャーンレートが高い場合は、「どのタイミングで、どんな顧客が、どんな理由で解約しているのか」を分析して、サービスの本質的な改善につなげましょう。

3.LTVに与えるインパクトが大きい

サブスクサービスでは顧客との関係を継続していくことが前提になります。そこで一人の顧客が一生のうちにもたらす価値である「LTV」も重要な指標です。

詳しくは後述しますが、チャーンレートが上がるとLTVは下がります。チャーンレートの増減がLTVに大きな影響を与え、サブスクサービスの収益に大きな差を生み出すことは認識しておかなければなりません。

チャーンレートの改善方法

チャーンレートの改善方法として一般的に言われているのが、以下の3点です。

解約原因に応じてサービスを見直す

チャーンレートを下げるには、顧客のサービス利用状況を把握して、解約原因を見極める必要があります。

たとえば、「月のログイン回数が3回以下になると半年以内に解約する」「1回あたりの滞在時間が10分を下回る顧客は解約に至りやすい」など解約の傾向が見えてくれば、機能追加や料金体系の変更といったサービスの見直しができます。

解約した顧客へのアンケートなどもおこない、解約原因に応じた対策を講じることが重要です。

カスタマーサポートなどCRMを充実させる

上述のとおり、顧客満足度が高い状態にあれば解約に至る確率も低くなります。CRMの充実によって顧客満足度を上げることがチャーンレートの改善につながるでしょう。メールや電話、チャットなどによる相談窓口を設置し、顧客の不満・ストレスの解消に努めることが重要です。

オンボーディングに力を入れる

「サービスの魅力を理解していない」「機能を使いこなせていない」といった理由で解約する顧客は少なくありません。

長期にわたってサービスを利用してもらうために、ユーザーが早い段階でサービスに慣れ、日常的に利用することが重要です。

そのためには、オンボーディングに力を入れてサービスの価値や使い方を分かりやすく伝えていかなければなりません。

投資家がチェックするMRRとは

投資家はビジネスの成長性・効率性・継続性を重視しており、なかでも、サブスクビジネスの成長性を表す指標である「MRR」は重要なチェックポイントとされています。

事業の成長性を表すMRRとは

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは「月次経常収益」のことです。端的に言えば毎月決まって発生する売上のことで、以下のとおり、すべての顧客から得られる収益を合算して求めます。

当月MRR =
前月MRR + (①New MRR + ②Downgrade MRR + ③Expansion MRR + ④Churn MRR)

※ ①New MRR:新規顧客から得られるMRR
※ ②Downgrade MRR:前月よりも取引額が減少した顧客から得られるMRR
※ ③Expansion MRR:前月よりも取引額が増加した顧客から得られるMRR
※ ④Churn MRR:当月に解約した顧客によるMRR

MRRを月次で比較することでそのサブスクサービスの成長性を見通せるため、投資判断においても重要な指標となるのです。

LTVとMRRとチャーンレートの関係

サブスクサービスの事業性を評価する指標として「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」の重要性が増しています。

LTVとは、一人の顧客が生涯のうちにどれだけの利益を企業にもたらすかを算出したものです。以下の計算方法で求めることができます。

LTV=
顧客一人あたりの平均MRR ÷ チャーンレート

LTVを最大化するには、MRRを上げる、もしくはチャーンレートを下げる必要があります。

サブスクサービスの要は、チャーンレートを下げLTVを上げること

「売って終わり」の時代は終わり、「売ってからが始まり」の時代になりました。

サブスクサービスの収益性に課題のある企業も、将来的にサブスクサービスの展開を検討している企業も、顧客のロイヤリティを高めることでチャーンレートを下げ、LTVを高めることを強く意識していきましょう。

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