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中国消費者の行動変化 即席麺の復権とコストコの開業
中国において、即席麺の消費が再び増加傾向にある。中国は世界最大の即席麺市場で、世界全体の約4割を消費する。 消費量は2013年をピークに、一時は下降していた。理由は「不健康で低所得者向け」というイメージが広がったことと、消費の主体である20~35歳の若者がより鮮度(作りたて)を感じられる外食のECケータリング、大都市を中心とした店内調理も行うコンビニエンスストアの中食に移行したためだと考えられる。 アリババを中心としたEC企業はO2O(Online to Offline,オンラインとオフラインの購買活動の相互連携)化促進の中、食品スーパーを展開し、盛況だ。 販売している食材を、調理して提供するグローサラントサービスも、より鮮度を感じさせるものであり、ランチ時はオフィスからの来店者でにぎわっている。
即席麺が高付加価値化で復活
一方で、鮮度感とは対極にあるような即席麺の消費は、次のように変化している。世界最大の即席麺メーカー康師傅(カン・シー・フー)の即席麺販売額は18年の売上が約240億元(3720億円)と対前年比5.7%増で出荷額市場シェアは48.2%を占める。市場全体も対前年比8%増と拡大している。
これは、康師傅が原材料の安全保証と、各地方にローカライズした味付けの高単価の付加価値商品の開発を進めたことの影響が大きい。
また、外食ケータリング事業者の寡占化による同市場の値上げ傾向に対する反発もあり、即席麺の品質に対する「値ごろ感」が消費者に受けているとも考えられる。
外資小売店の好調な開業
流通業のトピックとしては、2019年8月末にアメリカのCOSTCO(コストコ)が上海に開業したことがあげられる。面積1.4万㎡ 、1200台の駐車場スペースを持つ同店には、開業初日は来場者数の多さによる混乱回避のため5時間のみの営業となった。
翌日も1回の入場者数を2000人に限定したものの、入場を待つ長蛇の列ができた。
これは1995年にヤオハンと上海第一百貨店の合弁で「上海第一八佰伴」が開業したときをほうふつとせる混雑ぶりだ。
同店は、当時107万人の来場者数を記録したが、売り上げは低迷。アジア通貨危機とヤオハンの経営悪化に伴い、売却された(ヤオハン倒産後も、同店は同じ名前で営業中)。
当時と現在が大きく異なるのは、所得水準と商品供給量だ。ヤオハンは、購買できないが、見物に来る来場者で賑わっていた。
今は、他店でも購買できる商品が多くある中でもコストコ(アメリカに本社を置く会員制倉庫型販売店、COSTCO)に来場者が押しかける開業状況だった。
COSTCOは2014年、天猫(アリババのECサービス)にいち早く旗艦店を出店。中国市場にはオンラインから参入した。
ここでの実績と知名度をもってさらに会員制システムを導入し、開業に伴う会員クーポン配布も行ったことで、リアルな店舗でも大盛況となった。
開業時には、茅台酒(中国の高級蒸留酒)やプラダのアパレルなどの高級品の低価格販売が集客につながった。
モバイルで、何でも並ばずに購買できる現在の中国。店舗に行くのは、高級品が本物であるかの確認ができることや、「お値打ち感」のある商品探しでもあったと考えられる。
消費者は「付加価値」をチェックしている
ここまでに述べた人気商品や店舗にも、課題はある。即席麺は中食、外食との激しい競争が続く。COSTCOは、商品SKU(在庫管理単位)も多くなく、高級ブランド商品の低価格販売だけで今後も爆発的な売上が継続するとは思えない。
商品供給が潤沢な中国市場では、商品の選択基準が変わってきており、「付加価値」があるのかを消費者が確認するようになっている。中食、外食より安いのに満足感が得られる即席麺。
有名高級ブランド商品が、どこよりも安く買える店舗。こうしたものを見出すため、消費者層は異なりますが、「品質」、「ブランド」、「価格」チェックが常時行われている。
現在は「価格」に注目が集まる点が、景気後退への始まりのようにも見えるが、中国企業の動きからは消費者の選択基準を満たす新商品、ブランドの提供が求められており、そのために外資との取り組みも現地企業は望んでいるように見受けられる。
※機関誌「FRONTIER EYES」vol.27(2019年11月発行)掲載記事を修正の上再掲
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