ボーンデジタルとは

hachiイメージ
▲米津玄師は、今年からストリーミングサービスへの楽曲提供を始めた

当初よりデジタルでのコンテンツ消費を前提として制作されるスタイルは“ボーンデジタル”と呼称される。ネットで人気が出たデジタルコンテンツを、逐次他のデジタルフォーマットにライセンスアウトして、当該コンテンツの経済圏を大きくしていくパターンが特徴だ。
紙の書籍やCDを発売することもあるが、あくまでも副次的な存在で、作品がたとえ大ヒットしてもネット上の無料公開をやめない例がほとんどだ。

音楽だけでなく漫画、アニメ業界でも、ネット動画配信や、電子コミック、小説投稿サイトといったデジタルプラットフォームの普及に伴い、コンテンツのヒットパターンに同様の変化が見られる。

従来型「ドラマ主題歌→CDヒット」からの転換

YOASOBIイメージ

音楽業界であれば、旧来型ヒットパターンは、地上波キー局が製作するドラマに楽曲を提供し、パッケージメディアであるCD販売を伸ばし、アーティストの認知を向上させるというものであった。ドラマがヒットすれば、ドラマのビデオなりDVDといった映像パッケージ販売が好調に推移し、ヒットドラマに使用されたアーティスト/楽曲のCD販売や、原作書籍というパッケージメディアも潤うという構図が一般的であった。

もちろん、現在でもこのようなパターンでアーティスト/楽曲がヒットする事例は数多く存在する。しかし、若年層の“テレビ離れ”、“ネット接触時間の増大”は、旧来型ヒットパターンではない経路で新たなヒットコンテンツを創出する契機となっている。

先に挙げた音楽業界では、10年以上前から、ネット上での若年層のバズが新たなアーティストの誕生を促してきた。
今や、現代を代表するアーティストとなった米津玄師も、もともと「ハチ」名義でVocaloidプロデューサー(ボカロP)として、ニコニコ動画を中心に活躍していたことはよく知られている。

あいみょんも、地道にインディーズ活動からスタートし、ネット動画を通じて女性の反響/共感を高めていったことなどにも、ネット上での若年層のバズの影響力が垣間見える。

投稿小説サイト コンテンツの「源流」に

タナトスの誘惑イメージ

このような若年層のバズを、投稿小説と音楽とを絡めることでスパイラル的に生起させようという試みが見られるのは、ソニーミュージックの投稿小説サイト「monogatary.com」だ。
2020年を代表するヒット曲となったYOASOBIの「夜に駆ける」(19年12月配信)は、短篇投稿小説「タナトスの誘惑」を原作としている。(2020年7月20日付のBillboard JAPANストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”で総再生回数1億回を突破)。

YOASOBIは、その後も「あの夢をなぞって」(原作「夢の雫と星の花」)、「たぶん」(原作「たぶん」)など、「monogatary.com」上の投稿小説をモチーフにした楽曲を続々とリリース。YOASABIの楽曲のモチーフとなった小説が「monogatary.com」の上位にそろってランクインするなど、投稿小説と楽曲の相乗効果が確認される。

Re:ゼロ 投稿小説のヒット

投稿イメージ
▲Re:ゼロの続編は、数日ごとにネット上で更新されている

小説投稿サイト「小説家になろう」の投稿小説を初出とした「Re:ゼロから始める異世界生活」(Re:ゼロ)は、ネット上のヒットから書籍化され、すでに24巻まで刊行。アニメも大ヒットしている。最近では、パチスロやスマホゲームもリリースされるなど、様々なメディアに進出している。

「レム」や「ラム」など人気キャラクターの誕生で、現在を代表する人気作品に成長した現在でも、Re:ゼロは「小説家になろう」において全編無料で読むことが可能なほか、続編も数日ごとにリリースされている。

ボーンデジタルはビジネスを変える

PS5イメージ
▲プレイステーション5は、ディスクドライブのないモデルも登場した

このような“ボーンデジタル”コンテンツの浸透は、コンテンツの旧来型ヒットパターンに依拠しパッケージ販売を前提としたビジネスモデルに依存してきた企業に、“ボーンデジタル”コンテンツを発信する新しい事業開発を促すこととなるだろう。

その中で、“ボーンデジタル”コミックを電子化された既存作品に組み合わせて配信可能な電子コミック配信事業者は、コロナ禍の“巣ごもり消費”で好調な収益を計上していると見られる。既に、DeNAの電子コミック事業「マンガボックス」にTBSが出資する、「LINEマンガ」運営会社が韓国NAVER社に実質買収されるなど、業界全般にM&Aが活性化している。

存在感増す投稿小説サイト

今後は、「monogatary.com」の成功に触発され、コンテンツの源流、ならびに投稿小説と他のデジタルコンテンツとの同時配信プラットフォームとして、小説投稿サイトが改めて注目される可能性があるだろう。

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