

2022-04-22
「SPYxFAMILY」(少年ジャンプ+掲載)に注目~ボーンデジタルの大ヒットアニメとなるか?~
2022年4月から放映開始されたアニメ「SPYxFAMILY」が注目されている。原作は週刊少年ジャンプ本誌には掲載されておらず、デジタル版「少年ジャンプ+」での連載のみ。デジタル発としては異例の大ヒット作のアニメ化に、大きな期待が寄せられている。

シニア・アナリスト、産業調査部
1993年に三井信託銀行㈱(現、三井住友信託銀行㈱)に入行。八重洲口支店を経て、受託資産運用部にてバイサイド・アナリスト業務を担当。1999年に興銀証券㈱(現、みずほ証券㈱)、2000年に日興ソロモン・スミスバーニー証券会社(現、シティグループ証券)に入社し、セルサイド・アナリスト業務を担当。2003年から2005年にマイクロソフト㈱(現、日本マイクロソフト㈱)に在籍し、2005年日興シティグループ証券㈱(現、シティグループ証券)にセルサイド・アナリストとして復職。同社に2014年まで勤務し、フィールズ㈱を経て、2016年にフロンティア・マネジメント㈱に入社し、シニア・アナリストに就任。
詳しいプロフィール >>「SPYxFAMILY」とは
「SPYxFAMILY」(遠藤達哉作)は、集英社がデジタルで展開する「少年ジャンプ+」の主要作品だ。2019年3月に隔週で連載が開始されて以来、トップクラスの人気を獲得してきた。
「週刊少年ジャンプ」本誌(紙)には掲載されていないものの、紙でのコミック化もなされており、2022年4月時点で累計1,600万部以上(9巻まで刊行)を誇る。既にコミック新刊の初版は100万部以上となっており、今後も巻を重ねるにつれてその数字は増えていくとみられる。
力の入るマーケティング
映像メディア展開前のデジタルを起点としたコンテンツ(=ボーンデジタル)としては、異例の大ヒットとなっており、新しいコンテンツ創出経路を確立するために、IPホルダーたる集英社も、アニメ化に大きな期待を寄せているとみられる。
制作には「進撃の巨人」で著名なWIT STUDIOを起用、主題歌に人気アーティストOfficial髭男dism、エンディングに星野源を起用するなど、「SPYxFAMILY」への非常に大きな期待を窺わせる制作体制/マーケティングが展開された。
アニメ放送前にSHIBUYA109などに巨大広告を掲示、放映開始直前に日経新聞に一面広告を出稿するなど、マーケティングにも力が入る。
集英社「少年ジャンプ+」の成長
集英社「少年ジャンプ+」は、2014年9月から配信されている、無料/有料を組み合わせたアプリである。
複数のウェブコミックを無料配信するほか、週刊少年ジャンプ本誌や、ジャンプコミックスの電子販売も行っている。創刊当初は、人気作品や本誌の電子販売に、新人漫画家育成機能が付加されたような建付けであり、ユーザーへの提供価値があまり高くないと見られたことから、アクティブユーザー数の停滞が見られた。
しかし、2016年からは、地道な新人育成が功を奏し、複数の「少年ジャンプ+」オリジナル作品にヒットが見られ、アクティブユーザーを掘り起こし、更に新しい漫画家がオリジナル作品でヒットを創出するというポジティブ・フィードバック・ループが生まれるようになった。
加えて、広告収入の漫画家への還元や、無料閲読範囲の拡大といったプラットフォームの地道な改善により、ボーンデジタルによるオリジナルコミックの源流として、存在感を示すこととなった。
このような「少年ジャンプ+」のボーンデジタルでの存在感を、更にもう一段引き上げるべく、「少年ジャンプ+」の最上位人気作品である「SPYxFAMILY」は、満を持してアニメ化を迎えたものと見られる。
「デジタル発」のメディアミックスが本格的に加速
「SPYxFAMILY」アニメが期待通りのヒットを見せた場合、ボーンデジタル作品のメディアミックス展開が加速していくものと考えられる。
ボーンデジタル作品は、Webという特性を生かし、ユーザーの反応/反響や特性が見えやすいため、映像メディアへの展開に際してファン層の特定が相対的に容易と考えられ、大ヒット作品の存在は、そのプロセスの正当性を強化することになると考えられる。
韓国勢「NAVER」「KAKAO」とのグローバルでの競争
「SPYxFAMILY」がグローバルでヒットする場合、「少年ジャンプ+」が、ボーンデジタルのオリジナルコンテンツの源流として海外でも存在感を高める可能性がある。
現在、NAVERやKAKAOといった韓国勢が「縦読みスクロール型」電子コミック展開をグローバルで進めている。集英社が、韓国勢への対抗軸を構築する際に、有力なポジションを得る可能性も考えられるだろう。
デジタル発の動向に注目
「鬼滅の刃」「呪術廻戦」という大ヒットアニメを生み出した集英社が繰り出す次の一手「SPYxFAMILY」の動向、ならびにボーンデジタルによるヒットコンテンツの創出動向を注目していきたい。
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「SPYxFAMILY」とは「SPYxFAMILY」(遠藤達哉作)は、集英社がデジタルで展開する「少年ジャンプ+」の主要作品だ。2019年3月に隔週で連載が開始されて以来、トップクラスの人気を獲得してきた。 「週刊少年ジャンプ」本誌(紙)には掲載されていないものの、紙でのコミック化もなされており、2022年4月時点で累計1,600万部以上(9巻まで刊行)を誇る。既にコミック新刊の初版は100万部以上となっており、今後も巻を重ねるにつれてその数字は増えていくとみられる。 力の入るマーケティング映像メディア展開前のデジタルを起点としたコンテンツ(=ボーンデジタル)としては、異例の大ヒットとなっており、新しいコンテンツ創出経路を確立するために、IPホルダーたる集英社も、アニメ化に大きな期待を寄せているとみられる。 制作には「進撃の巨人」で著名なWIT STUDIOを起用、主題歌に人気アーティストOfficial髭男dism、エンディングに星野源を起用するなど、「SPYxFAMILY」への非常に大きな期待を窺わせる制作体制/マーケティングが展開された。 アニメ放送前にSHIBUYA109などに巨大広告を掲示、放映開始直前に日経新聞に一面広告を出稿するなど、マーケティングにも力が入る。 集英社「少年ジャンプ+」の成長集英社「少年ジャンプ+」は、2014年9月から配信されている、無料/有料を組み合わせたアプリである。 複数のウェブコミックを無料配信するほか、週刊少年ジャンプ本誌や、ジャンプコミックスの電子販売も行っている。創刊当初は、人気作品や本誌の電子販売に、新人漫画家育成機能が付加されたような建付けであり、ユーザーへの提供価値があまり高くないと見られたことから、アクティブユーザー数の停滞が見られた。 しかし、2016年からは、地道な新人育成が功を奏し、複数の「少年ジャンプ+」オリジナル作品にヒットが見られ、アクティブユーザーを掘り起こし、更に新しい漫画家がオリジナル作品でヒットを創出するというポジティブ・フィードバック・ループが生まれるようになった。 加えて、広告収入の漫画家への還元や、無料閲読範囲の拡大といったプラットフォームの地道な改善により、ボーンデジタルによるオリジナルコミックの源流として、存在感を示すこととなった。 このような「少年ジャンプ+」のボーンデジタルでの存在感を、更にもう一段引き上げるべく、「少年ジャンプ+」の最上位人気作品である「SPYxFAMILY」は、満を持してアニメ化を迎えたものと見られる。 「デジタル発」のメディアミックスが本格的に加速「SPYxFAMILY」アニメが期待通りのヒットを見せた場合、ボーンデジタル作品のメディアミックス展開が加速していくものと考えられる。 ボーンデジタル作品は、Webという特性を生かし、ユーザーの反応/反響や特性が見えやすいため、映像メディアへの展開に際してファン層の特定が相対的に容易と考えられ、大ヒット作品の存在は、そのプロセスの正当性を強化することになると考えられる。 韓国勢「NAVER」「KAKAO」とのグローバルでの競争「SPYxFAMILY」がグローバルでヒットする場合、「少年ジャンプ+」が、ボーンデジタルのオリジナルコンテンツの源流として海外でも存在感を高める可能性がある。 現在、NAVERやKAKAOといった韓国勢が「縦読みスクロール型」電子コミック展開をグローバルで進めている。集英社が、韓国勢への対抗軸を構築する際に、有力なポジションを得る可能性も考えられるだろう。 デジタル発の動向に注目「鬼滅の刃」「呪術廻戦」という大ヒットアニメを生み出した集英社が繰り出す次の一手「SPYxFAMILY」の動向、ならびにボーンデジタルによるヒットコンテンツの創出動向を注目していきたい。 |
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