エリアマーケティング戦略とは?分析のポイントや手法を解説

これから店舗を出店するとき、あるいは既存店舗の戦略の見直しを行うときに有効なのが「エリアマーケティング」です。特に、今後人口の減少が見込まれている日本では、競合店との競争は激化の一途をたどると予想されます。限られた顧客を確保するためにも、エリアマーケティングの重要性はますます高まっていくでしょう。 ここではエリアマーケティングを行う目的やその指標、分析のポイントなどについて解説します。

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エリアマーケティングとは

エリアマーケティングとは、特定の地域にターゲットを限定してマーケティングを行う戦略です。「地域密着型ビジネス」と言い換えてもいいでしょう。

現在、エリアマーケティングは大規模チェーンから小規模店舗まで多くの店舗が実践しています。
エリアマーケティングの概念自体は昔から存在するため、言葉は知らなかったとしても以前から実践していた店舗も多いはずです。

たとえば、あなたがスーパーを経営していたとしましょう。どんな商品を仕入れるかを考える際、自店舗の周辺にどんな人が住んでいるか必ず調査するはずです。もし大学生が多いなら若者が好む商品を置き、ファミリー層がメインの住宅街なら家族連れをターゲットにした商品を並べるでしょう。

これも立派なエリアマーケティングといえます。

エリアマーケティングのメリットと手法

エリアマーケティングには多くのメリットがあります。

ここではメリットの享受のために実践すべきエリアマーケティングの手法について確認し、具体的なメリットも解説していきます。

最初に商圏を設定する

エリアマーケティングの最初のステップは、「商圏」の設定です。

商圏とは「自店舗の顧客となる可能性のある人がいるエリア」のこと。エリアマーケティングは商圏に対して実施します。商圏の範囲が曖昧なままだと施策の効果が得にくくなってしまうため、「商圏」の設定は欠かせないステップです。

売上や需要の予測をする

次に、設定した商圏における自店舗の売上や需要の予測を行います。

売上に関連しそうな要因をピックアップし、総合的に考えましょう。具体的には店舗の大きさ、従業員数、広告の出稿ボリューム、利益率、競合する店舗の数などの要因があります。

また、需要の予測ではハフモデルという考え方を使うと便利です。
ハフモデルとは消費者の行動圏内において、どの店舗を選んで買い物をするのかという確率を求める手法のこと。基本的に消費者は「より近く、より大きな店舗に足を運ぶ」傾向があるとされています。ハフモデルではこの消費者行動をベースに自店舗が選ばれる確率の導出が可能です。

売上と需要の予測で市場のボリュームが明らかになり、出店戦略につながっていきます。

販売促進施策のデータを活用する

販売促進施策はエリアマーケティングのベースとなる重要なデータです。

DMの投函数や投函範囲、チラシの枚数、オンライン広告のインプレッション、クーポンの利用率など、これまでの販売促進施策のデータをエリアマーケティングに取り入れていきましょう。

また、エリアマーケティングにより取得したデータは、販売促進につながります。販売促進施策の実行でエリアマーケティングの精度が高まり、エリアマーケティングにより販売促進につながるという正のスパイラルも期待できるでしょう。

顧客について分析する

エリアマーケティングを行うにあたり、顧客分析は必要不可欠です。

自社の商品を購入してくれるのはどんな層なのか。性別、年齢、居住地、職業、ライフスタイル、家族構成など、自社が保有する顧客データをもとにできるだけ詳細な顧客像を考えます。

自社の顧客について理解が進むと、新規顧客へのアプローチの精度が上がるでしょう。また、既存顧客への対応の向上にもつながります。

エリアマーケティングの分析ポイント

エリアマーケティングの基本的な流れだけでは、具体的な分析のイメージがわかないという方もいらっしゃるかもしれません。

ここでは、具体的な例を挙げながらエリアマーケティングのポイントを解説していきます。

エリアマーケティングの一例

今回は新規出店のコンビニチェーンを例にとり、仮想のエリアマーケティングを行います。

まず商圏設定です。商圏分析には既存店舗のデータを利用しましょう。

たとえばポイントカードの会員データやPOSデータなどが利用できます。新規出店する地域に似た地域の既存店舗の顧客データを分析すれば、自ずと商圏が予測できるでしょう。

なお、コンビニやスーパーなど生活に根ざした店舗は比較的商圏は狭いといわれています。
特にコンビニは店舗ごとの違いがそれほど大きくないため、近くに同じチェーンのコンビニがあるにも関わらずわざわざ遠くのコンビニまで足を運ぶケースはそれほど多くありません。このように業種ならではの特性も加味して商圏を設定します。

次に商圏内の潜在顧客についてさらに詳しく分析します。
ここで活用できるものが総務省により実施されている国勢調査のデータです。国勢調査データからは人口や世帯の種類、配偶者の有無、就業状況など様々な情報が取得できます。

また、実際に現地に足を運び、どんな人が歩いているのかなどを自身の目で確認することも大切です。

続いては、売上と需要の予測です。
出店計画を確認し、予定している店舗の広さや従業員数、同じ商圏内の競合店舗の数などをもとに予測を立てます。競合店舗については経済産業省が実施する「商業統計」を参照すると良いでしょう。もちろん、自身の目での確認も重要です。

ここで商圏の市場ボリュームを把握すると、出店計画をよりブラッシュアップできます。

このようにして分析を進めたら、新規出店にあたってのマーケティング施策を開始します。たとえばチラシのポスティングを考えてみましょう。アバウトな範囲設定ではなく、商圏の大きさと潜在顧客の居住地に絞ったポスティングにより無駄を省き効率化できます。

エリアマーケティングで活用できるサービス

エリアマーケティングでは多くのデータが必要です。自社で保有していないデータについては公開されているデータを使います。
そのようなデータの取得のために役立つサービスを紹介します。

地域経済分析システム「RESAS」

まず紹介するのは、地域経済分析システム「RESAS」です。地方創生の取り組みに対する情報面の支援を目的に、経済産業省と内閣官房が提供しています。日本全国の市町村の産業構造や人口動態、人の流れなどのビッグデータを集約し、可視化するシステムです。

たとえば特定の地域に絞った人口構成や、年代を区切った人口増減が確認できます。

この他にも企業の情報や地方財政、観光、盛んな産業など様々な視点で地域の特性を知れる便利なサービスです。

jSTAT MAP

次に紹介するのは、様々な統計を地図で確認できるサイト「jSTAT MAP」です。

総務省統計局が整備し、独立行政法人統計センターが運用管理を担当しています。

指定した地点の周辺エリアの様々な情報を詳細に表示できます。

中でも、人口構成、人員別世帯構成等のデータはエリアマーケティングでも非常に有用です。

時代に合ったマーケティング戦略を行う

新規出店や既存店舗の戦略の見直しにおいて、エリアマーケティングは重要な施策です。すでに小売業の多くは、地理的位置をもとに高度なデータ分析を行う技術「地理情報システム(GIS)」を駆使したエリアマーケティングに取り組んでいます。

ITの進歩により、エリアマーケティングにおける分析の精度はどんどん向上していくでしょう。今後は積極的に新しい技術や手法を取り入れ、戦略的にマーケティング施策を進める必要があります。

参考URL
エリアマーケティングに欠かせない商圏分析とは?ポイントを徹底解説
エリアマーケティングとは?その目的と実施のポイント|コラム(東京MP部)
ハフモデルとは? | 用語集とGISの使い方 | 株式会社パスコ
重回帰分析とは|市場調査ならインテージ
コンビニの商圏は距離と人口が重要!商圏内の移動者もポイントに | エリマケ!
RESAS 地域経済分析システム
地図で見る統計(jSTAT MAP)とは | 政府統計の総合窓口
商圏分析のやり方、商圏調査の方法 | マップマーケティング株式会社
商圏分析とは?やり方・販促に利用できるデータの種類と活用例 | マーケティングコラム
GISとは・・・ | 国土地理院

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