アジャイル経営とは?ソフトウェア開発技法をルーツとする考え方

アジャイル(俊敏な)経営とは、文字通りスピード感に優れた組織経営です。

アイデア発想から顧客へ価値を提供するまでのサイクルが高速となる経営のしくみとも言い換えられます。

「アジャイル経営」は、もともとソフトウェア開発で納期を大幅に短縮できる手法として注目された「アジャイル開発」がルーツです。

一般的にソフトウェア開発は、要件定義、設計、開発、テストまでを一貫して長期間で行う「ウォーターフォール開発」が主流とされます。

一方のアジャイル開発では、1〜2週間という短い期間を設定し、細かい単位で開発テストとリリースを並行させながらシステムを完成させていきます。

これによって、顧客の要望をシステムに取り入れやすく、納期の短縮とリスクの分散を可能にするのです。

このように、仕事のプロセスを並列にして細かく分ける考え方を組織経営に応用したものがアジャイル経営となります。

参考:アジャイルソフトウェア開発宣言

アジャイル経営に欠かせないスクラムとは?

アジャイル経営に導入するフレームワークとして欠かせないのが「スクラム」です。

スクラムは、職務横断型の小さなチームのことで、フォワードが肩を組み合うラグビーのスクラムが由来になります。

アジャイル経営の組織では、職務ごとの縦割り構造を壊し、営業やマーケティング、技術開発といった異なる部門のメンバーが割り当てられた3人〜10人程度のスクラムチームをネットワーク状に編成するのが基本です。

各スクラムには権限と責任が与えられ、少数精鋭のメンバーが密な関係を築きつつ、全員が一丸となって目標に向かいます。

最大の特徴は、チームの行動指針はトップの指示ではなく、メンバーの自律的な判断に基づいている点です。

経営企画部からの干渉は予算の割り当て程度にとどまり、仕事の優先順位はチームが独自に決めます。

このように自ら考えるチームを中心とした組織構成にすることで、無駄な決裁や承認プロセスをなくし、意思決定のスピードが高まるのです。

アジャイル経営のスピーディな意思決定がもたらすメリットは2つ

アジャイル経営の本質は、単なるスピーディな意思決定ではなく、そこから派生するメリットにあります。

では、主に挙げられる2つのメリットについてみていきましょう。

環境の変化に強くなる

一般的に非アジャイル型、いわゆるトップダウン型の組織では、仕事を実行する現場と仕事を計画する経営層が情報連携するプロセスにタイムラグが生じます。

たとえば、経営層が作り込んだ経営計画は、一度中間管理層へ周知され、それをもとにした現場への指示により実行されることが一般的です。

また、反対に現場から情報が経営層に届くまでには、段階的に上長の承認フローを経由することになります。

つまり、計画・決裁から実行までに時間を要し、その間に起こった市場や顧客ニーズの変化に対応しにくいのが非アジャイル型の問題点です。

一方のアジャイル経営では、チームそのものに権限が与えられるため決裁が基本的に必要ありません。

つまり、環境が変化した場合に比較的迅速に対応ができ、市場競争における生存確率を高めることができます。

現場の人間が主体的に顧客と接点を持つようになる

アジャイル経営では、スクラムチームが計画と実行を高速で繰り返し、市場の競合プレイヤーや顧客ニーズなどの外部環境に頻繁にアプローチします。

社員自らが関わったものを直接顧客に届け、フィードバックが得られるサイクルを高速化しやすいのが特徴です。

スクラムのチーム全員が主体的に顧客にとっての価値を考え、顧客と接点を持ちやすいというメリットもあります。

つまり、社員のモチベーションが「会社のため」から「顧客のため」へシフトし、顧客満足度の向上ひいては会社の利益につながる結果が期待できます。

さらに、社員が顧客を巻き込んでどのような製品・サービスを作るべきか議論し、仮説やPoC(概念実証)を繰り返しながら新しいビジネスを模索するとより効果的でしょう。

アジャイル経営へシフトするためのポイント

では、現在トップダウン型の組織形態をとる企業がアジャイル経営へシフトする場合、どういったポイントがあるのでしょうか。

マインドセットや運営プロセスなどの側面を含めて、次の3つを解説します。

トップ層がアジャイル経営への理解を高める

アジャイル経営は、スクラム編成などの方法論はもちろん、「変化への適応を前提としたマインドセット」という側面もあります。

そのため、トップダウン型のような中央集権型の経営とは哲学が根底から異なります。

その根底の部分を変えないまま形式だけ権限を分散したり、顧客と積極的に関わるアジャイル型の仕事を一部取り入れたりしても、組織全体としてうまく機能しない可能性があります。

「最近はアジャイルがトレンドだから」「あの競合他社はアジャイル経営でうまくいっているから」といった理由で採用するのは適切とはいえないでしょう。

まずは、会社のトップ層がアジャイル経営の哲学を理解し、共感を覚えることが大切です。

従業員にアジャイルな働き方を浸透させる

経営層のマインドセット定着が進んだ後、次はマネージャー層から下の従業員へ向けた啓発を行います。

そのためには、社内研修や有志で開催されるカンファレンスなどへの参加を促し、アジャイルの考え方への深い共感をもってもらうようなアプローチが考えられます。

それだけでなく、各社が独自で設定するミッションやビジョンの共有も必要です。

「自分たちは常に変化し続ける世界で仕事をしている」「自分たちが顧客に自社が提供する価値を届ける存在である」というようなマインドセットを組織全体へ浸透させる必要があります。

そこからは、経営層から実践層へ「何をするか」「なぜやるか」を伝え、各自の主体的な実践と学習に期待することになります。

組織全体が同じ方向を向いていれば、個別の意思決定はチームに委ねつつも、その結果が組織の理念から乖離するのを防ぐことが可能です。

スクラムの導入は段階的に行う

アジャイル型のマインドセットが全体へ浸透したうえで、どのようなスクラム編成をとるのか、どうすばやく意思決定を進めるのか、といった構造やプロセスの部分を考えていきます。

とりわけ、スクラムの導入は段階的に行うのがポイントです。

はじめは試験的にアジャイルな働き方を実証し、実際の成果を検証することで徐々に部隊を増やしていくことが有効とされています。

企業内で先行パイロット部隊を編成したり、グループ企業内にアジャイル経営特化の会社を設けたりと、試験方法はさまざまです。

成果が出るまでに時間を要するかもしれませんが、成功例が挙がれば後続の士気につながるでしょう。

各社に合ったアジャイル経営で不確実性の高い時代を生き抜く

近年はデジタル化の影響から、顧客主体で欲しいものを選択し、企業側はそれに合った価値を提供する必要性が高まっています。

目まぐるしく変化する顧客ニーズに対応するためにも、アジャイル経営で迅速に意思決定していくことは今後重要となっていくでしょう。

組織形態をアジャイル経営へシフトする際には、ビジョンを含めたマインドセットの地盤を築き、持続性のある組織文化として根付かせる必要があります。

そのためスクラムなどの方法論を除けば、アジャイル経営のあり方は企業の数だけ存在するのです。

それぞれが自社に合ったアジャイル経営を実施し、不確実性の高い時代を生き抜ける組織づくりを目指しましょう。

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