銀行法等改定に伴う地域金融機関における事業多角化の潮流

2021年11月22日に施行された銀行法等改正(以降本改正)により、業務範囲規制及び出資規制が緩和されました。それに伴い、各地域金融機関での事業多角化(コンサル、人材派遣、投資専門子会社、地域商社など)が進んでいます。銀行の業務拡大範囲や問題点などについて解説します。

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主な業務範囲規制緩和内容

主な業務範囲緩和内容

今まで銀行は、認可を受けることでフィンテック企業などのいわゆる銀行業高度化等会社(情報通信技術やその他の技術などを用いて銀行業の高度化が図れる会社)を子会社・兄弟会社にすることができました。

しかし、今回の本改正に伴い銀行業高度化等会社に地方創生に関わる会社(地域の活性化や産業の生産性の向上その他持続可能な社会の構築に貢献できる会社)が追加され、さらに認可を要することなく子会社化することが出来るようになりました。内閣府令にて列挙されているのは以下になります。

  1. フィンテック
  2. 地域商社(在庫保有、製造・加工を原則行わないもの)
  3. 自行アプリやITシステムの販売
  4. データ分析・マーケティング広告
  5. 登録型人材派遣
  6. ATM保守点検
  7. 障害者雇用促進法上に係る特例子会社
  8. 地域と連携した成年後見

また、銀行本体及び銀行持ち株会社においても、以下の業務が内閣府令において個別列挙されたことにより、機動的な体制を構築しやすくなりました。

  • 銀行業の経営資源(銀行が保有する人材、情報技術、設備など)を活用して営むデジタル化業務
  • 地方創生など持続可能な社会構築に資する業務

                        
(出典:「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律」金融庁)

主な出資規制緩和内容

主な出資規制緩和内容

通常、銀行本体による事業会社への出資は原則5%(持ち株会社15%)までに制限されています(いわゆる5%ルール)。また、投資専門子会社を通じてベンチャーや事業再生会社に出資する場合は要件を満たせば議決権ベースで100%の株式保有が認められています。その中で、本改正により非上場の地域活性化事業会社に対しても50 %出資上限から100%出資が可能となりました。

さらに投資専門子会社が行える業務に関しても「出融資に付随する業務」に限定されていましたが、投資専門子会社の経営執行支援能力(ハンズオン)を強化する目的でコンサルティング業務なども追加されました。

今年に入ってからの地域金融機関による主な専門子会社設立の動き(銀行法改正以降2021年度設立は割愛)

設立日 母体行 設立子会社 業態
2022年1月14日 山形銀行 やまがた協創パートナーズ 投資
2022年3月18日 関西みらいフィナンシャルG みらいリーナルパートナーズ コンサル
2022年4月1日 中国銀行 ちゅうぎんキャピタルパートナーズ 投資
2022年4月1日 十六フィナンシャルG カンダまちおこし 地域創生
2022年5月30日予定 中国銀行 ちゅうぎんヒューマンイノベーションズ 人材紹介
2022年7月予定 山陰合同銀行 ごうぎんエナジー 再生エネ関連事業
2022年8月予定 七十七銀行 未決定 人材紹介
各行リリース発表を参考にFMIにて作成

                      

規制緩和に伴う銀行の事業参入の壁~現場はつらいよ~

本改正を受け、各地域金融機関で続々と新たな子会社が設立されています。しかし、現状営業現場や本部の人的リソースが限られる中、専門子会社を任せられる人材が不足していると予想されます。

そのため、人材不足を補うために積極的に専門知識のある外部人材を中途採用する動きが活発化しています。その動きの中で障壁となるのが、過去から脈々と培われてきた独特の行内文化・組織、いわゆる「行風」ではないでしょうか。

専門知識を持った優秀な外部人材を、銀行特有の「行風」の枠にはめてしまうと、モチベーションの低下につながる懸念があります。多様性を受け入れ、専門知識を今以上に伸ばせる環境作りや人事制度・組織体制が求められるでしょう。また今後新たな視点で独創性のある専門子会社を設立していく上では、銀行特有の減点主義を排除し、失敗しても再チャレンジすることが新たな「行風」となるような人事制度・組織体制が必要と考えられます。

すべては地域企業の為に~ビヨンド・ザ・銀行~

各地域金融機関による専門子会社設立の動きは今後さらに加速していく中で、まず求められるのは各事業の「ビジネス化」ではないかと考えます。

「収益化」ではなくあえてビジネス化としているのは、近江商人の「三方よし」の精神が求められるのではと考えるためです。三方よしは、目指すゴールは「地域経済の活性化」であり、「商い」によって巡り巡って、収益は後から戻ってくるという理念になります。

地域経済の活性化とは、地域だけにとどまらずその枠を越えて他地域、はたまた、国内にとどまらず海外などにも目を向けることによって持続可能な「商い」の仕組みを作り上げることなのではないでしょうか。

既に地域金融機関の中には、柔軟な思考で常に他行の先を行くトップランナー的な立場の地銀が存在しています。その中で、各行には以下のような期待をしています。

  • 独自色の前面的なアピール
  • 外部人材や、銀行組織にまだ染まっていない若手の積極的な登用
  • 「やってみなはれ」の精神で今までの銀行の枠を越えた斬新かつ、ユニークな専門子会社の設立

最後にA・猪木氏の言葉をお借りして
「この道を行けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし
踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる
迷わず行けよ 行けばわかるさ・・・・」

事業承継、人事・組織改革、DX、海外事業など地域企業またはそれを支える地域金融機関の様々な問題解決に、当社がお力になれればと思います。

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