サードパーティロジスティクスの意味は?アセット型とノンアセット型の違いを解説

サードパーティロジスティクス(Third Party Logistics)は、荷物の送り手である荷主の物流業務全体を包括的に請け負う物流サービスのことで、3PLと略されます。

「サードパーティ」とは、荷物の送り手と受け手の間にあって、荷主でもなく従来型の物流業でもない「第3者」としての物流主体であることからきています(注2)。

ファーストパーティはメーカーや荷主、セカンドは小売や商社です。

さらに、サードパーティロジスティクスは「アセット型」と「ノンアセット型」の2つに分類されます。

アセット型

アセット型とは、3PL企業が自社で倉庫や車両、物流センターなどの物流システム、つまり資産(アセット)を有したサービスの提供です。

従来型の物流業者や倉庫業者などが、3PL企業として役割を担うこともあります。

自社システムや設備を使用して他社を介さないため、スピーディな対応ができる点が特徴です。
荷主企業が、自社のサービスを気に入り使用してくれるため、持続的な取引にも繋がりやすくなります。

3PL企業は、どのような規模で倉庫や配送網を備えているかがポイントになります。

ノンアセット型

ノンアセット型は、自社倉庫などの物流資産を持ちません。

荷主業者の商品や業態、納品時間などの希望に応じて物流システムの提案や効率化施策など柔軟なサービス提供ができる点が特徴的です。

倉庫やトラックなどの物流のための資産も全て「外注化」することで、カスタマイズ性が高くなります。

荷主企業は配送ルートなどの戦略立案から運営管理までを3PL企業に任せることができます。

仮に売上が悪く、荷量の減少が見込まれる場合でも、配送計画や配送ルートの見直しなどの柔軟な対応ができます。

荷主企業が、物流費の削減を行いたい時にも、輸送会社や倉庫会社の変更をすることで素早く対応可能です。

物流現場が抱える課題

サードパーティロジティクスが注目される背景には、物流現場での、慢性的な「人手不足」の問題があります。

国土交通省の統計によると、トラックドライバーが不足していると感じている企業は増加傾向にあり、2019年は約70%の企業が「不足」又は「やや不足」と回答(注3)。

ここからは、物流現場が抱える課題である「人手不足」について解説します。

サードパーティロジティクスには、物流現場が抱える課題解決も期待されています。

深刻な人手不足

B to BやB to Cの業態に関わらず、現場の人手不足は深刻で、主な原因は下記の通りです。

  • 過酷な労働環境
  • 物流需要の急激な増加

長時間の運転や拘束時間、荷積みや荷下ろし、受取人不在による再配達などで労働環境は過酷です。
そもそも、物流サービス自体に定休日はありません。

また、ECサイトなどの台頭により、個人が自宅に配送依頼する機会も増えました。

需要の急激な増加で物流側の供給が間に合っていません。

そこで、この状況を鑑みた厚生労働省が、1ヶ月の拘束時間を293時間を限度とするなど、トラック運転者の労働条件の改善を推進しています(注4)。

しかし、ドライバーの労働環境の改善により企業側は配送効率が落ちてしまい、供給が追いつかない状況を加速させる一因にもなりました。

自社の人材だけでは、不足する恐れのあるドライバーの確保や現場運営を、外部委託することで、人件費の増減や人手不足による機会損失など、余計なリスクを取る必要もありません。

サードパーティロジスティクスのメリット

物流における倉庫業務や運送業務のみならず、業務効率化のシステムや配送ルートの見直しなどの改善提案を行うサードパーティロジスティクス。

ここからは、さらに具体的にサードパーティロジスティクスの導入メリットを紹介します。

コア業務へのリソース集中

サードパーティロジスティクスは、荷主企業の生産性を向上させます。

なぜなら、サードパーティロジスティクスを導入することで、物流業務へのリソース投下が必要最小限で済むためです。

サードパーティロジスティクス導入による余剰人員や資金で、取り組むべきコア業務へ経営資源を集中できます。
営業部門や開発部門の人員追加、設備投資に対する資金投下などが例として挙げられます。

物流費用のコストダウン

サードパーティロジスティクスの導入で物流業務を包括的に委託でき、物流コストの最適化を図れます。

外部の運送便や自社便などの輸送形態、配送ルートや出荷時間との連携など、物流費用を抑える手段はいくつもあります。

しかし、荷主企業が自社内で新たに物流面でも専門性の高い人材を育成することは難しいです。

サードパーティロジスティクスであれば、物流の専門家に管理運営を任せることができます。

物流品質の向上

荷主企業は、自社で物流の経験値をゼロから貯めて、トライ&エラーを繰り返す必要がありません。
ノウハウを既に備えたプロが物流の品質を向上させてくれるためです。

例えば、出荷時間と納品時間から導ける最適な出荷形態の提案や、自動倉庫によるピッキングミスをなくすような提案です。

素人の目線ではわからないポイントや切り口で、物流品質の向上に繋げることができます。

サードパーティロジスティクスのデメリット

サードパーティロジスティクスには、物流ノウハウを持ったプロに現場を一任できるメリットの反面、他社が介入するリスク・デメリットが発生してしまいます。

ここでは、下記2つのデメリットを詳しく解説します。

緊急時のフォローに時間を要する

万が一、配送ミスや現場での緊急を要するクレームなどが発生した場合、注文主は荷主企業に連絡を入れてきます。

しかし、実際に物流を動かしているのは、サードパーティーの3PL企業です。

そのため、クレーム内容を共有するための時間を設ける必要があります。

また、注文主へ報告を入れる時でも、3PL企業と報告内容を共有して認識を一致させる必要があります。

しかし、構造的にこの問題を避けることはできません。3PL企業と平時から、いかにコミュニケーションを密に取れるかがポイントになります。

自社の改善力が育たない

緊急時のフォローにも関連するデメリットが、自社の物流品質を改善する力が伸びないことです。
改善のタネは、机上ではなく多くの場合で現場にヒントがあります。

しかし、3PL企業に物流をアウトソーシングしている限りは、自社の物流品質を向上させる改善力は付きません。
物流面での人材が育成できないことも同様のデメリットになります。

サードパーティロジスティクスの導入事例

サードパーティロジスティクスは、物流の変化が激しくなるに従って導入企業も徐々に増えてきました。
サードパーティロジスティクスの発祥の地である、アメリカでは1996年から2002年のたった6年間で2倍以上の市場規模になっています(注5)。

下記では、ニーズが高まっているサードパーティロジスティクスの導入事例から、2社の導入事例を紹介します。

集約と自動化でコスト削減・ミスの減少を実現|株式会社ロッテ

株式会社ロッテは、韓国に本社を置くチューイングガムやチョコレートなどを製造する菓子メーカーです。
サードパーティの3PL企業として、世界有数の物流システムやマテハン機器の実績を持つ、株式会社ダイフクとタッグを組んでいます。

ロッテでは、量販店やコンビニの店舗拡大などで、物流ニーズが多角化したことで、物流コストの削減と誤出荷や納期遅延トラブルの解決が課題でした。

そこで、ダイフクの自動倉庫システムを導入して、分散していた物流センターを集約させることで、これまで、手作業で行っていたピッキングなどを自動化させ、コスト削減、物流ミス削減と抱えていた課題解決が実現できました。

改築前と同スペースで保有量20%UPを実現|株式会社八ちゃん堂

株式会社八ちゃん堂は福岡県に本社を置く、冷凍食品製造メーカーです。サードパーティの3PL企業として、株式会社IHIとタッグを組みました。

設備老朽化に伴う、物流センターの改築と物流効率の向上、省スペース化が八ちゃん堂が目指すゴールです。

そこでIHIは、物流センターのリニューアルと同時に、建築の設計に配慮した提案で、自動倉庫管理システムによる出荷ミスの軽減、ならびに従来と同じスペースで保有量の20%アップを実現しました。

サードパーティロジスティクス導入の注意点

サードパーティロジスティクスの導入検討時においては、3PL企業との信頼関係を重要視します。

3PL企業と契約締結をする際には、契約内容の認識を一致させる必要があります。
業務の範囲や定義は認識のズレが発生しやすいため、トラブル回避のためにもしっかりと明文化することが重要です。

また、サードパーティロジスティクスのデメリットでも紹介したように、緊急時の対応スピードは3PL企業とのコミュニケーション(信頼関係)に表れます。

サードパーティロジスティクスで業務効率を改善

物流ニーズがBtoBやBtoCの業態に関わらず、多様化しています。企業は、多様なニーズに応えなければいけません。

そこで、サードパーティロジスティクスを導入することで、コア業務にリソース投下をしながら、物流コスト削減と品質の向上も見込めます。

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引用(参考)
注1:3PL事業の総合支援 – 物流 – |国土交通省
注2:物流アウトソーシングマニュアル – 中小企業庁 -| 経済産業省 中部経済産業局
注3:最近の物流政策について|国土交通省
注4:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省労働基準局
注5:日本における3PLビジネスの育成に関する調査

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