ヴィレッジヴァンガードに見る個性派ブランド 成長のキーポイント

近年ではD2Cブランドなど、小規模でも成立する低コストのビジネスモデルの登場により様々な個性派ブランドが台頭している。 そうした中、奇抜で個性的な店舗で知られるのがヴィレッジヴァンガードだ。「サブカルの聖地」として多くのファンからの支持を集めてきたが、足元の業績は冴えない状況が続いている。 その背景に対する考察として様々な意見が飛び交っているが、本稿ではマーケットデータを用いてヴィレッジヴァンガードの顧客層の変遷を捉えることにより、個性的なブランドが押さえておくべきポイントを考察したい。

シェアする
ポストする

ヴィレッジヴァンガードの業績推移

ヴィレッジヴァンガードの業績推移

ヴィレッジヴァンガードは、愛知県名古屋市に本社を置く株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーションが運営する雑貨店である。店舗数は2023年11月末時点で、306店舗(直営302店舗、FC4店舗)となっている。

下図はヴィレッジヴァンガードがジャスダック(現、東証スタンダード)市場に上場した2003年5月期以降の連結の売上高と営業利益の推移を示している。

当時の連結子会社(現在は売却済)のチチカカを除いたヴィレッジヴァンガード本体で見た場合の成長のピークである2013年5月期の売上高438億円、営業利益25.3億円に対し、足元2023年5月期は売上高253億円、営業利益1.3億円まで減少している。

さらに直近2024年5月期第2四半期累計では営業損失が7.5億円と大幅な赤字を計上しており、前年同期の営業損失1.8億円と比較しても赤字幅拡大が著しい状況だ。

顧客層の変遷 個性重視層の減少幅大

ヴィレッジヴァンガードの業績推移の背景において、同社の顧客層はどのような反応を示していたのか。当社がアクセス可能な独自の消費者調査データにおける2013年12月(ピーク時)と、足元2023年7月(ピーク後)時点のデータを用いて、同社顧客層の変遷を見ていく。

まず、2013年12月(ピーク時)時点の「ヴィレヴァン好意者出現率」に注目したい。

これは各セグメントに属する消費者が好きな雑貨屋としてヴィレッジヴァンガードを挙げた割合であり、この数字が高いほど当該セグメントから強く支持されていると言える。

消費嗜好性をもとに四つに分類されたセグメントの中で、ヴィレッジヴァンガードに最も反応しているセグメントは個性重視層(サブカルなど個性や斬新さ求める顧客層、出現率2.2%)、次いでトレンド追随層(流行りやトレンドを追いかける顧客層、出現率1.3%)である。
個性重視層からの支持が強いことは言わずもがなであるが、同社のビジネスモデルは、サブカル好きの個性重視層向けに路面店中心に尖った商品を多数揃え(投資し)、その中でヒット商品を育て、トレンド追随層向けにショッピングセンター店舗中心にマネタイズを図るというバランスを持っている点が特徴である。

トレンド追随層からの支持の高さはこの点が反映されていると理解できる。

一方、2023年7月調査(ピーク後)時点では、これらセグメントの出現率が大きく減少している。特に個性重視層の減少幅が大きく、個性重視層が求める「尖り」が薄まっていることが危惧される。

こうした背景には急激な店舗拡大による個性を体現する人材の不足(同社は各店舗に裁量を持たせているため各店舗にマーケットをリードする個性的な人材を配置する必要がある)や、イオンモールなどの郊外型ショッピングセンターへの出店拡大といった内部要因に加え、個性的なブランドの競争激化といった外部要因が挙げられると推察される。

例えばドン・キホーテは八重洲地下街の「お菓子ドンキ」「お酒ドンキ」に始まり、「コスメドンキ」や「驚辛ドンキ」、Z世代向けの「キラキラドンキ」、PB品に特化した「ドミセ渋谷」など、様々なカテゴリに特化した個性的な出店を続けているし、アニメイトなど漫画やアニメキャラクター商材を扱う専門店もその存在感を拡大させている。

スマホ普及による賢い消費も逆風に

さらにトレンド追随層については、調査対象の母数が減少していることも注目するべきポイントだ。

2013年12月調査において、調査母数に占めるトレンド追随層の構成比率は30.3%であったのに対し、2023年7月調査では24.3%まで減少しており、品質・快適性重視層や、コンサバ層(ブランドの歴史や慣習を重視する層)に移行しているものと考えられる。

その背景には、2010年代におけるスマホ普及によりネット環境へ容易にアクセス可能となったことに加え、SNSの発達も含め年々ネット上の情報が質・量共に充実してきたことなどにより、企業と消費者間における情報の非対称性が消失し、消費者が自ら収集した情報をもとに自身で消費の選択をしやすくなったことが寄与していると想定される。

スマホが普及する一昔前であれば、企業が作り出した商品トレンドを全面に訴求することで一定の顧客獲得ができていた側面も少なからずあったものと想定される。

だが、スマホが普及したことで消費者が情報という武器を手に入れ、賢い消費をするよう進化してきているため、従来のようなトレンド訴求の重要性は低下し、むしろそのブランドがターゲットとする顧客の趣味嗜好を満足させるような「特化型」のブランドづくりの重要性が以前にも増して高まっていると考える。

ブランドの原点に立ち戻れ

個性派ブランドがいま一度振り返るべきは、個性のない店舗では消費者を満足させることができず、台頭するカテゴリ特化型専門店などに顧客を奪われてしまうということだ。

改めてブランドの原点に立ち戻り、ブランドコアとなる個性を磨き、際立たせることに再注力すべきである。

サブカルを含め個性を重視するマーケットがなくなっているわけではない。消費者が賢くなっている今、むしろ今後はより重視されるべきセグメントであろう。

ヴィレッジヴァンガードについても、やり方次第でその存在感を再拡大することは可能と思われる。個性重視層向けのブランドコアにさらに磨きをかけ、より輝いていくことに期待したい。

コメントを送る

頂いたコメントは管理者のみ確認できます。表示はされませんのでご注意ください。

※メールアドレスをご記入の上送信いただいた方は、当社の利用規約およびプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

コメントが送信されました。

関連記事