ターンアラウンドマネジャーとは

「ターンアラウンドマネジャー(Turnaround Manager:TAM)」とは経営破綻した企業や経営破綻に陥る可能性が高い企業に対して、事業承継・事業再生・企業再建のために経営者として登用される人材です。

多くの場合、ターンアラウンドマネジャーは企業の最高経営責任者として任命されることになります。
ターンアラウンドマネジャーは対象となる企業を再生させるために、財務・事業・組織・人・企業文化など、多岐にわたる視点から事業の在り方を見直します。

企業再生までの計画を立案して具体的な戦略にまとめ上げ、企業価値を高めるための施策を行います。ときには大胆な事業戦略や組織改革が求められるため、リーダーシップを発揮しながら経営を行う力が必要です。

ターンアラウンドマネジャーが注目される背景

ターンアラウンドマネジャーの存在が注目されはじめたのは2000年代に入ってからになりますが、それ以前から事業再生において、外部から経営者を呼び、企業を立て直す人材は存在していました。

90年代の「バブル崩壊」の際、数多くの企業が経営難に陥った際、債権放棄や資産売却などを中心に事業再生を手掛けていたのは、親会社やメインバンク、企業再生ファンドから出向を命じられた人材です。したがって、資産の売却や債権の放棄など、財務的な業務が中心でした。

2000年以降のインターネット普及やグローバル化に伴い注目を集める

2000年代前半になるとインターネットの普及や事業のグローバル化などが進み、事業の実体は複雑化していきます。

さらに、従来の経営手法が通用しなくなった業界や業種が増え、財務処置だけでなく組織改革や成長戦略の策定など、事業再生に関する業務も多様化しました。
その結果、「経営のスペシャリスト」としてのターンアラウンドマネジャーの需要が急増したのです。

「産業再生機構」の設立を例とした、事業再生を専門的に請け負う人材を派遣する事業再生ファンドがビジネスとして活性化しました。

ターンアラウンドマネジャーの事例

ターンアラウンドマネジャーの代表的な事例について3つご紹介します。

産業再生機構

ターンアラウンドマネジャーの事例で欠かせないのが、2003年に設立された「産業再生機構」です。
産業再生機構はFMI代表の大西・松岡両代表が過去に在籍していた時限的な特殊会社です。
ターンアラウンドを専門的に行う人材を経営の苦しい企業に送り込み、事業を再生する事業再生ファンドとして活躍しました。

2007年3月に解散(同年6月に清算を結了)するまでの4年間、41件もの再生支援を決定。支援対象企業には「カネボウ」「ダイエー」なども含まれています。

カルロス・ゴーン氏(日産)

ターンアラウンドマネジャーとして、カルロス・ゴーン氏を外すことはできないでしょう。

1999年当時に経営危機であった日産自動車とフランスのルノーのあいだに業務提携が締結され、ゴーン氏が日産自動車の最高執行責任者(COO)に就任、経営再建を果たしました。

工場閉鎖や大幅な人員削減就、関連会社の保有株式売却など、大規模な再建計画「日産リバイバルプラン」を実行。その結果、就任当時には2兆円ほどあった負債を2003年には全額を返済、一時12%まで下落していた国内シェアを20%近くまで回復させるという実績を残しています。

稲盛和夫氏(JAL)

当時、負債2兆円超で会社更生法適用が施行されて経営危機にあったJALに、京セラ・KDDIの創業者である稲盛和夫氏が2010年2月1日に会長として就任しました。

従業員の意識改革や部門間同士の連携を重視した人材教育を実施することにより、2年で営業利益2000億円の成功をあげています。

ターンアラウンドマネジャーの需要は高まる

外部環境の変化スピード早い現代経済においては変化に対応できない企業は淘汰されます。しかしながら、既存の人材や組織だけでは解決できない経営上の問題は、外部の人材を呼び入れることで解決できるケースも少なくありません。市場環境は常に変動し続け、既存の戦略では企業としての形を維持することが難しくなるケースも多く、ターンアラウンドマネジャーが必要とされる機会が増えていくことでしょう。

関連記事

ハイブリッドクラウドを導入するメリット・デメリットや活用事例を紹介

現在多くの企業は、業務効率化や生産性向上のため、IT化によって自社のサーバーやデータを管理する必要があります。 従来は企業内だけで通信するネットワーク内にサーバーを設置し、データを管理するオンプレミス(自社運用型)が主流でしたが、近年はクラウド環境の導入が進んでいます。 クラウド(クラウド・コンピューティング)とは、誰でもアクセスできるインターネット経由でサービスを利用できる技術です。 さらにクラウド技術の活用が進むにつれ、最近では「ハイブリッドクラウド」という運用スタイルが広がっています。このスタイルには一体どのようなメリットがあるのでしょうか? 今回は、ハイブリッドクラウドについての基礎知識やメリット・デメリット、ハイブリッドクラウドを活用した事例などを解説します。

実店舗が取り組みたい、位置情報を活用したマーケティングとは?

「緊急事態宣言で渋谷で7割減、梅田で8割減」――コロナ禍の外出制限下で、スマホの位置情報によって人の移動を計測したニュースを目にした方は多かったでしょう。スマホの位置情報は、現在位置の確認のだけではありません。災害への対応や道路の渋滞緩和など様々な分野で利活用が進んでおり、ビジネスにおいては特に実店舗のマーケティングにおいて大きな注目を集めています。今回は「位置情報マーケティング」について解説していきます。

スピンオフとスピンアウトの違いとは?国内外の事例や税制についても解説

近年、複数の市場に挑戦する多角化企業が事業を分離し、企業価値の向上のためにそれぞれの事業に集中特化した経営戦略を採用する事例が目立ちます。 こうした事業フォーカスを強化するための事業展開に、「スピンオフ」や「スピンアウト」と呼ばれる手法があります。 それぞれどのような共通点や違いがあり、どのようなメリットがあるのでしょうか?本稿では、国内外の事例や税制の観点も交えてご紹介します。

ランキング記事

1

GDP2065年までに4割減予想 中小企業の生産性向上が不可欠

日本の生産年齢人口がこのまま減り続け、企業の生産性が向上しなければ、日本のGDPは現在より2065年には約4割減ることになる。そうならないためには、企業数の99%以上を占める中小企業の生産性向上が不可欠だ。中小企業再編の議論が高まる中、特に地方企業が何をするべきか、考察した。

2

2021年展望  化粧品業界 急回復もレッドオーシャン化する中国市場

国内化粧品市場は厳しい環境が続く中で、多くの化粧品企業が来期以降の業績回復の牽引役として、中国経済圏での売上拡大を掲げている。しかし、中国市場は欧米、中国、韓国メーカーの勢いが増しており、レッドオーシャン化しつつある。グローバル競合が激化する化粧品市場において、消費者に向き合ったコミュニケーションの進化が差別化のカギとなる。

3

コロナ禍に有効なアーンアウト条項とは シンガポール案件からの考察

コロナ状況下でもASEAN地域においてPEファンドによる売却が積極的に行われている。アーンアウト条項を通じ、コロナ状況下のリスクを買い手と売り手で分担している例もみられ、危機時の参考事例として紹介・考察したい。

4

パワー半導体の世界シェアは?注目市場の今後の動向を解説

パワー半導体(パワートランジスタ)は、家電や電気自動車をはじめとして、さまざまなデバイスの電源管理に使われています。 多くの分野で需要が伸びており、長期的な成長が期待できるマーケットです。 日本の企業や大学発ベンチャーが競争力を保っている分野でもあり、「パワー半導体強国」として世界市場でのシェアを獲得するべく、積極的に研究開発を行っています。 本記事では、世界規模で成長をつづけるパワー半導体の市場規模や、今後の展望を解説します。

5

村上春樹さんに学ぶ経営⑨どや、兄ちゃん、よかったやろ?クーっとくるやろ?

過去2回、「ニッチ」とは「すきま」ではなく、はるかに深い概念であることを見てきました。では、どんな状態になると真の「ニッチ企業」になったといえるのでしょうか?

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中