高市政権の長期化で企業が直面する人事課題と戦略の再設計

与党の議席が2/3超となる大勝で終わった衆議院選挙。新たに発足した第2次高市政権は、公約に掲げた政策を果敢に行っていくことでしょう。「責任ある積極財政」の下で行われる政策は企業にとっても期待が大きなものがあります。

ただ、企業が生き残っていくためには注力・転換すべきテーマが幾つも出てきそうです。今回は高市政権の長期化を前提に、企業が直面し得る人事課題や転換すべきテーマと、その打ち手について考えていきます。

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高市内閣の長期化で企業が直面する人事課題

高市内閣の長期化で企業が直面する人事課題

大勝した高市政権では「経済安全保障」「戦略的産業育成」「価値観外交」「財政規律と成長投資の両立」といった政策軸が、より鮮明になっていきます。こうした方向性を前提にすると、日本企業に求められる人事戦略は、単なる人材確保にとどまらず「国家戦略と整合する組織能力の構築」へと進化することです。

仮に進化できなかったらどうなるのか?某お笑い芸人の質問を引用したわけではありませんが、急激に価値を高めていく他社に取り残される可能性が高まります。人事の領域で例えるなら、魅力ある企業ではなくなり、人材確保がますます困難になるのは間違いありません。

そのような、「乗り遅れた企業」にならないためにも人事戦略はこれまで以上に政策環境との整合性を問われる時代になります。受け身ではなく、明確な対策を講じながら「攻め」に転じる必要性が高まるのは間違いありません。では、直面すると想定される人事課題について整理していきます。

1. 経済安全保障強化と「人材の内製化」

経済安全保障強化と「人材の内製化」

2022年に成立した経済安全保障推進法は、サプライチェーンの強靭化、基幹インフラの安全確保、先端重要技術の育成などを柱としています。目的は特定国への過度な依存を減らし、国家の戦略的自律を高めることです。背景には、米中対立の長期化、半導体やレアアースなどの戦略物資を巡る国際的緊張、サイバーセキュリティーリスクの増大などがあります。

こうした経済安全保障の強化をする動きに呼応するため、企業には「人材の自律性=内製化」を軸とした人材戦略の再設計が必要になっていきます。例えば、次のような人材です。

  • テクノロジー主導型の「戦略IT人材」
  • サプライチェーン再設計を担う「地政学リテラシー人材」
  • 研究開発の内製強化を牽引する「基盤技術人材」

技術の先端性や機密性を維持するためには、外注に依存するのではなく内製化を進めることが重要です。さらに必要とする人材を明確にして、人材獲得の競争に勝てる職場環境を整備することも不可欠です。同時に、足りない人材を自社で育成するプログラムの開発も必要になります。

2. 財政規律と賃上げ圧力の同時進行

長期政権では経済政策の一貫性が担保されやすい一方、物価上昇や人手不足が続く場合、賃上げ圧力も継続する可能性が高まります。高市政権は「物価高を超える賃上げ」を目標の一つとして掲げており、政労使会議などを開いて企業や労働組合に協力を要請する動きがあります。賃上げ環境の整備策として、中小企業を対象とした賃上げ促進税制の活用支援や中小企業の投資支援拡充などが示されています。

政府主導の賃上げ要請が続けば、企業は人件費増加を前提とした人事戦略を構築しなければなりません。しかし、賃上げ原資が十分でない企業では、年功的賃金体系の見直しや成果連動型報酬へのシフトが不可避となります。これに伴い、評価制度の透明性向上や管理職の評価スキル強化が急務となるでしょう。公平性を欠けば、エンゲージメント低下や離職率上昇を招きかねません。結果として企業への影響は三極化すると想定されます。

  • 価格転嫁できる企業→ 賃上げ可能となり、人材確保を強化
  • 価格転嫁できない企業→ 利益が圧迫され淘汰圧力が高まる
  • 高付加価値へ転換できた企業→ 人材を選別する高賃金モデルへ

つまり「賃上げできる企業だけが生き残る」構造が加速する可能性があります。

3. 労働市場改革と制度運用の高度化

労働市場改革と制度運用の高度化

高市政権は発足から「働き方改革(労働時間短縮)」からの転換点として「働きたい改革(労働時間の柔軟化・規制緩和)」を掲げ、労働市場改革と制度運用の高度化を進めています。

2010年代後半、安倍晋三政権下で進められた「働き方改革」は、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の推進など、「労働時間の抑制」と「保護」を軸とした制度改革でした。

これに対し、高市政権が新たに掲げると想定される「働きたい改革」は、労働時間の上限規制を緩和し、本人の希望に応じてより柔軟に働ける環境整備を進める方向性と考えられます。これは「規制による一律抑制」から「選択による多様化」への転換を意味します。

この政策は、構造的賃上げ、人材の流動化、そして人的資本経営の強化を目的としています。一律に設計された働き方から脱却し、「ひとそれぞれ」にカスタマイズされた働き方を容認することにもつながります。

時代の要望に応じた方針と言えますが、企業にとっては、人事制度というハード面だけではなく、社員のキャリア観や働き方の価値観といったソフト面まで考慮して、方向転換を迫られることになります。

ここまであげてきた3つの課題に加えて、国内投資促進や製造業の国内回帰による地方分散への変化に対応した人材確保や女性活躍推進の再定義など、想定できる課題は幾つもあります。

高市政権の長期化によって打ち出される政策に呼応して人事の領域も果敢に攻めていきましょう。ただ、多くの企業の人事部門は長くにわたり「守り」で取り組む体質になっている傾向があります。経営からの指示に対して動く部門という位置付けや、日常業務に追われるなかで「攻めへの転換」を難しいもの、あるいはネガティブなものとして捉える傾向があります。

出典:戦略人事の機能不全、原因は「リソース不足」と「経営陣」が5割超|日本の人事部

前述しましたように注力・転換すべき人事課題は今後さらに増えていきます。攻めなければ、企業として取り残される可能性が高まります。攻めに転換するために重要なことは、人事部の組織改革ではないでしょうか?

人事部の組織改革とは?

これからの時代に求められる人事部門の組織改革とは「管理部門」から「経営の中枢機能」への転換です。役割・組織構造・評価指標・人材構成を抜本的に変える必要があります。政策環境や経済安全保障、賃上げ圧力が強まる局面では、人事は制度運用者ではなく経営意思決定の設計者であるべきです。具体的には次の2つの転換が求められます。

  • 人事部門のミッションを「管理」から「経営成果創出」へ再定義する
  • 経営会議の常設メンバーになる

合わせて、求める人材を人事部門の主導で定義し、その定義に基づいて必要な人材をアサインします。足りなければ、育成・採用を行うべきです。大きな時代のうねりに対応するためには人事部の改革が不可欠です。急ぎ、取り組みを始める必要があります。

ただ、現状との乖離がある企業が多いことは十分に理解できます。そこまで潤沢な人事部門を備えることは簡単ではありません。まずは経営者のなかで人事に関するミッションを担う責任者を決め、経営者の視点から人事の課題を認識し人事部と共に解決に向けて取り組んでみてはどうでしょうか?いわゆる、最高人事責任者(CHRO)の任用です。CHROは、経営戦略を人材ポートフォリオに落とし込む存在です。

  • どの事業を伸ばすのか
  • どのスキルを内製化するのか
  • どの人材を外部調達するのか
  • どの層に賃金を重点配分するのか

こうした問いに答えながら、人事と経営の「翻訳者」の役割を果たします。高市政権の長期化でさまざまな人事課題に直面するなか、今こそ任用すべきではないでしょうか?社内の経営メンバーで議論されることを提案いたします。

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