「ニンジャラ」の成功に見る、任天堂Switch向けフリー・トゥ・プレイ(F2P)の可能性

任天堂Switch向けゲーム「ニンジャラ」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)が、グローバルで700万ダウンロードを突破するなど好調だ。無料でゲームを始められ、アイテムなどで課金するフリー・トゥ・プレイ(F2P)は、コンソールゲーム機(家庭用ゲーム機)でも拡がりをみせている。日本製ゲーム(特にアクション)は、存在感の薄かったF2P分野で、ヒットを連発することができるだろうか。

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フリー・トゥ・プレイ(F2P)とは

フリー・トゥ・プレイ(F2P)とは

フリー・トゥ・プレイ(F2P)は、ゲームのダウンロードは無料だが、武器やアイテムの購入や、「ガチャ」を引く際に課金する仕組みだ。当初、オンラインゲームの多くは月額の料金制だったが、1990年代末の韓国製のオンラインゲームをきっかけにF2Pが普及した。ゲームの間口を広くし、熱心なユーザーからはより多くの課金ができる事から、現在ではスマートフォンゲームだけでなく、コンソールゲーム機(家庭用ゲーム機)でも拡がりをみせている。

代表的なタイトルは、Epic Games社製「Fortnite」で、Switch版の登場により特に未成年から若年層に同タイトルのプレイ機会が拡がった。グローバルで人気ジャンルとなっているバトルロイヤル型ゲームについて、日本国内での認知を拡げたと見られる。

Switch向けF2Pゲームタイトルについても、グローバル、PC向けに展開されている海外人気タイトルが移植されるケースが多い。

ニンジャラ成功の背景

ニンジャラ成功の背景

日本製F2Pアクションゲームの存在感が見られない現況下で、健闘をみせているのが、ガンホー・オンライン・エンターテイメント製の「ニンジャラ」だ。Switch専用に開発/リリースされ(2020年6月)、21年5月までにグローバルで700万ダウンロードを突破するヒットを達成している。

ガンホーにとっても、2012年のサービス開始から9年が経過したパズル&ドラゴンズ(パズドラ)に続く、主力タイトルに位置づけている。

「ニンジャラ」は、任天堂製の人気3Dアクションゲーム「スプラトゥーン」でも見られた、カジュアルな画面テイストを特長としている。最大8人での対戦を気軽に楽しむことができ、敷居が高く見られがちな3Dオンラインアクションゲームを、初心者にも親しみやすくアピールすることに成功している。

テンセントと共同開発のMOBA「ポケモンユナイト」への期待

テンセントと共同開発のMOBA「ポケモンユナイト」への期待

「ニンジャラ」に続くSwitch向けF2Pゲームとして期待されるのは、株式会社ポケモンがテンセントと共同開発している「ポケモンユナイト」である。同タイトルは、ポケモンをベースとしたシリーズ初の5対5チーム戦略バトルゲーム(MOBA:マルチプレーヤー・オンライン・バトル・アリーナ)であり、2021年7月にSwitch向けに、9月にスマートフォン向けにリリースされる予定である。

eスポーツを含むグローバルのオンラインゲームシーンでは、MOBAは主要タイトルとなっている。しかし、日本での一般的な人気/認知が低いとされており、最有力IPの一つであるポケモンをベースとした同タイトルが、どこまで国内、そして中国を含めたグローバルでの人気を得られるかが注目される。

「ニンジャラ」の成功に続き、「ポケモンユナイト」がグローバルで高評価を獲得するケースでは、3Dアクションゲーム開発を不得手とする国内スマートフォンゲーム会社の開発スタイルに一石を投じる可能性が考えられる。

ユーザーがスマホゲームに求めるクオリティは高まっており、開発費も高騰している。「課金ガチャ」に依存する新作カードゲームタイトルのヒット確率の低下など、昨今の国内スマートフォンゲーム開発は、従来よりもリスクが高まっている。

スマートフォンゲーム各社は、過去の開発資産を活かせない3Dアクションゲームなどの新規ジャンル開拓にさらに消極的となるという悪循環が見られる。

期待される任天堂Switch向けF2P

期待される任天堂Switch向けF2P

2021年3月末で、グローバル8,459万台の普及を達成した任天堂のコンソールゲーム機「Switch」は、持ち運び可能なコンソールゲーム機というユニークな地位を確立。従来のポータブルゲーム機の用途も包含することで、国内では他のゲーム機を圧倒する2,004万台という普及台数を誇っている。

日本のゲーム業界の悪循環を打破する契機として、まずはSwitch向けにF2Pアクションゲームを開発/リリースして、人気度合いを見極めたうえでスマートフォン版をリリースする開発スタイルが考えられる。

Switchという単一ハード向け開発では、スマートフォン各機種への調整の手間が不要となるため開発費が効率化される他、UnityやUnreal Engineなどの汎用ゲームエンジンをベースに開発すれば、主要部分が共通化されているため、のちにスマートフォン版を展開する際にもSwitch版での開発資産を有効に活用することが可能となる。

まずはSwitchから、の流れを

将来的にeスポーツ拡大を目論む業界各社にとって、eスポーツ向けに国内で開発された人気タイトル確立は不可欠だ。ヒット確率が低くなっているスマホゲームで新規アクションゲームのヒットを狙うより、“ヒット可能性のリトマス試験紙”として、先行的にSwitch向けにグローバルeスポーツの主要ジャンルであるバトルロイヤルやMOBAゲームをリリースするといった開発スタイルが考えられるだろう。今後のSwitch向けF2Pゲーム展開とヒット状況、ならびにゲーム各社の取り組みに注目していきたい。

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