中国の規制強化、低調だった2018年世界市場

作画イメージ

日本動画協会が2019年12月に発表した「アニメ産業レポート2019」によると、2018年の日本アニメ産業のグローバル市場規模は2兆1814億円(前年比0.9%)だった。これまで2009年からの10年間の推移をみると、2012年までは1兆3,000億円程度だったが、その後2013年~2017年は順調な右肩上がりで2兆円を突破。そのため、2018年になって成長がやや鈍化した。

近年、日本アニメ産業の成長要因となっていたのが、海外での売上増加だ。海外における売上は、2012年の2,408億円(構成比18%)から2017年には9,948億円(同46%)と約4倍に急拡大。しかし、2018年の海外売上は、1兆円を突破したものの、前年比ほぼ横ばいの1兆0,092億円(同46%)となっている。

2017年までの成長は、インターネット動画配信がグローバルで普及したことで番組販売が活発となり、また番組視聴による認知度向上によりアニメベースのゲームやグッズの売上が好調に推移したことが要因だった。

では、2018年に海外売上の成長が鈍化した理由は何なのか。考えられるのは、中国による日本アニメの規制強化だ。中国政府が2018年、日本アニメの総量を規制したり、配信内容を事前検閲したりして規制を強めた結果、中国の動画配信事業者の日本アニメ買い付けと配信の意欲が減退。それが一因となり、日本アニメ産業の成長が鈍った可能性が高い。

鬼滅の刃、天気の子…豊作だった2019年のアニメ市場

2019年に関しては、国内で、少年ジャンプ(集英社)連載中の「鬼滅の刃」が、アニメを起点(2019年4月より半年間放送)として大ヒットを記録した。鬼滅の刃の単行本の最新刊は、書店に不在という状況も見られるなど、漫画出版市場をも前年比プラスに導いた模様だ。結果、鬼滅の刃の大ヒットは関連市場への波及が期待され、また新海誠監督の最新作「天気の子」の着実なヒットや定番劇場アニメの堅調な興行成績も見られたことなどにより、アニメファンの関連消費に対する熱量が減退したとは考えにくいことから、2019年の国内アニメ市場は、前年比プラスで推移したものと期待される。

2019年の海外アニメ市場については、既にシーズン2制作が決定した「ウルトラマン」などがNetflixで配信された。Warner傘下のアニメ専門配信プラットフォームCrunch Rollで配信された「俺のヒーローアカデミア」が北米で好評価を得るなど、引き続きネット動画配信事業者によるグローバル配信が牽引役となり、関連市場を巻き込んで北米を中心に順調に推移したと考えられる。

一方、中国の規制強化が通年で影響し、日本アニメの買付意欲は減退したものと考えられる。後述するような、中国のアニメ配信と連動した関連商品展開の本格化は2020年以降と考えられることから、2019年の海外アニメ市場も、微増に留まったものと考えられる。

ネット配信業者との協業がカギ

コミックマーケット

2020年以降の日本アニメ産業を俯瞰しても、重要な課題は、少子高齢化の進展の影響が不可避な国内売上の減少を防ぎつつ、いかに海外売上を拡大するかという点にある。特に、米系のグローバルネット動画配信事業者との協業をいかに進め、中国でアニメ関連商品やサービスをいかに伸ばすかが鍵を握るだろう。

アメリカのインターネット動画配信の雄であるNetflixは、アニメ制作に関する意思決定の拠点を東京に置いている模様で、制作資金を積極的に拠出してオリジナルアニメ作品の配信を強化しているほか、日本の有力アニメ制作会社との事業提携を加速している。

既に、海外の視聴比率が90%を大きく超える日本アニメのタイトルも見られるようだ。また、動画配信事業を立ち上げたAppleや、動画配信プラットフォームを立ち上げたDisney、Crunch Rollを傘下に持つWarnerなどのグローバルプレーヤーも、オリジナルコンテンツへの投資を積極的に行うと見られ、アニメもその対象となる可能性が高い。

このような動画配信プラットフォームは、配信する動画コンテンツに関連するゲームやグッズ販売との連携を更に強めるものと見られ、海外売上の底上げに貢献するものと考えられる。

中国に関しては、総量規制の枠から外れて事前検閲が緩む、日本側との共同制作の動きが強まる可能性もある。それに加えて日本アニメ配信を得意とするBiliBiliは、フィギュアやプラモデルといった関連商材の販売を強化する動きも見られる。短期的にも、新型肺炎で外出が抑制される結果、中国では“巣ごもり消費”とも言うべきネット動画視聴やゲームへの消費が喚起されている模様であり、日本アニメの視聴頻度上昇がグッズやゲームといった関連商品、サービス消費に向けられるかも注目される。

“海外で躍動する日本アニメ”という姿を保持し続けるには、コンテンツのアイデアや資金調達を含む制作スキームを国内に閉じたままでは達成困難だ。日本のアニメ産業は、戦略面や人材面でグローバル対応力をますます強化することが求められることになるだろう。

関連記事

スーパーシティとは?定義やスマートシティとの違い、海外事例とともに解説

現在の日本では、少子高齢化や労働人口減少、地方の過疎化や空き家、都市部の交通渋滞やCO2排出など、様々な課題があります。これらの課題を、AIやIoT、5Gなどのテクノロジーを駆使して解決しようとするのが内閣府が推進する「スーパーシティ構想」です。また、最先端の技術で生活のスマート化を目指す「スマートシティ」は世界各国の都市で導入されている一方、様々な課題があります。 今回は、スーパーシティの概要や課題、スマートシティとの違いを解説するとともに、海外におけるスマートシティの事例を紹介していきます。

百貨店の進むべき道

百貨店の苦境が、加速している。日本百貨店協会によると、全国の百貨店の売上高は消費増税後の2019年10月から8カ月連続で下落。コロナ休業明けの6月も、大手3社の売上高は回復していない。この記事では、百貨店本来の提供価値が失われている現状に着目し、トランスフォームが求められる、百貨店の在り方について考えてみたい。

「新しい生活様式」(ニューノーマル) 化粧品業界に求められるDX対応

コロナウイルスによる影響が長期化し、化粧品の販売現場も、変化が迫られている。6月の商業施設の再開後も、美容部員による対面販売サービスや自由なテスター試用といった従来の販促活動が大幅に制限。デジタルトランスフォーメーション(DX)によるマーケティングの進化が欠かせない状況だ。

ランキング記事

1

「選択と集中」の誤算㊤ 大いなる誤訳

2020年3月1日、「経営の神様」と呼ばれたジャック・ウェルチ氏が死去しました。 1990年代後半、経済危機の最中にあった日本で、ウェルチ氏の存在はひときわ強い影響力を持ち、その言葉は「格言」として広まっていきました。しかし、最も有名な「選択と集中」という言葉に関しては、ウェルチ氏の意思が「誤訳」されて伝わっていました――。 フロンティア・マネジメントの代表取締役である松岡真宏が、機関誌「FRONTIER EYES vol.23」(2018年11月)に掲載した記事を再掲いたします。

2

ASEAN トピック「コロナ鎖国」に強いアセアン諸国 食料・エネルギー自給率を比較

コロナウイルスの猛威により、世界中が「巣ごもり状態」、いわば世界中が「鎖国状態」という前代未聞の状況となった。中国では他の地域に先行して生産活動に復調の兆しとの知らせも聞こえるが、地球規模の影響は長期化する可能性が高く、体力の弱い国の財政破綻の可能性すらありうる。一方、近隣ASEAN諸国に目を向けると、食料やエネルギーの自給率の面では、案外強いことに改めて気づかされる。

3

村上春樹さんから学ぶ経営②~作品に潜む成功へのヒント~

前回予告いたしましたように、「村上春樹さんから学ぶ経営」を、シリーズでお届けして参ります。今回のテーマは、「差異化」です。まずは次の一文をお読みください。

4

理想のコーポレートガバナンスを考える上で重要な「エージェンシー理論」とは?

多くの企業が、株主の利益を守るため企業経営を監視し、統制するコーポレートガバナンスを推進しています。 コーポレートガバナンスを考えるうえで有効なのが、ハーバード大学のM・C・ジャンセン氏らの論文で有名な「エージェンシー理論」(プリンシパル=エージェンシー理論)です。 コーポレートガバナンスの目的を達成するためには、まずエージェンシー理論の視点に立ち、経営者と株主の利害関係をとらえなおす必要があります。 本記事では、エージェンシー理論の意味やポイントを解説します。

5

「7割経済」時代の事業再生 Withコロナ ㊤バブル後30年の変化

コロナと共に生きるWithコロナ時代は、「7割経済」と言われている。これは、多くの産業で「コロナ前の水準に業績が回復することはない」ことを意味する。これまでの事業再生は、「経営改革を伴う再生計画を実行すれば、いずれ売上高も回復していく」という基本前提に立っているが、その前提が大きく崩れる。Withコロナ時代はこれまでとは異なる手法、事業再生の「ニューノーマル」が求められる。

人気のキーワード