コロナ危機後の構造変化「次の一手」

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筆者が本稿を執筆している2020年3月20日現在、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数は世界158の国・地域で23万人超、死者数はついに1万人を超えたと報じられている。世界の感染者数・死亡者数の規模は、2003年のSARS(32の国・地域で約8千人が感染)はもちろんのこと、WHOがパンデミック(感染症の世界同時的流行)宣言を行った直近事例である2009年の新型インフルエンザの規模を超えることも必至の情勢だ。新型インフルエンザの死者数は約1万8千人に達したが、2009年春の発生確認からは1年以上を要しており、今回の新型コロナウイルスの拡大ペースはそれを圧倒的に上回っている。

新型コロナウイルスの影響は、株式・為替相場、原油市況等の金融市場の混乱を引き起こしたことにとどまらず、渡航制限や外出禁止等の感染予防措置に伴う企業・個人の活動縮減、その余波としての企業倒産や失業者の増加といった負の波及効果も含め、全容を予測することは困難を極める。

ただし、過去の疫病流行、自然災害、金融危機、無差別テロ等の発生時の経験をもとに、「コロナ危機後」の消費社会(消費者行動、価値観、企業動向)の構造変化を予測し、公共政策や企業戦略における次の一手を講じておくことは可能だ。

コロナによる「特需」の行方

mask

まず、足元の消費者動向から見ていこう。小中学校の休校や民間企業の自宅勤務等の外出自粛モードに移行した3月以降は、食品や日用品の買い溜め需要の恩恵に浴した一部の小売業(スーパーやドラッグストア)を除き、百貨店やSC等の大型店や飲食店の客数減少は深刻だ。かたや、ECやネットスーパー等の自宅で注文・受取が可能な販売サービスの中には、2月下旬から3月にかけて、一日当たりの販売額が過去最高を大きく更新する等の動きがみられる。

3月中旬には、ファッションEC最大手ZOZOTOWNの販売ランキングにおける珍事が話題となった。ランキング1位にマスク(洗うことで繰り返し使用可)が登場したのだ。中堅のセレクトショップがたまたま扱っていたマスクが、ファッションECであるZOZOTOWNでの売れ筋に浮上したのは言うまでもなく、新型コロナウイルス感染の影響でマスクや除菌用アルコールが品切れ状態となったためだ。

今回の騒動をきっかけに、再利用可能なマスク、自宅で除菌アルコールを作れる製造キット、除菌用の空気清浄機(より高機能を謳ったもの)、日頃から免疫力を高めておくための機能性食品や健康法などが、ポストコロナ危機の売れ筋商品として浮上してくるかもしれない。ちなみに、2003年のSARS時には、感染者数が最も多かった中国において、日本製の体温計や機能性食品(ヤクルト等)が爆発的な人気を博した。

SNSが拡散した「恐怖心理」

図 vix
VIX

※VIX指数(恐怖指数、Volatility Index)S&P500を対象とするオプション取引の数字から算出され、数字が高いほど投資家の先行き不安が大きいとされる

次に、今回のパンデミックが消費社会に与える中長期的な影響の可能性について考えてみよう。新型コロナウイルスの特徴として何よりも注目すべきは、感染エリアや感染者数の増加速度も然ることながら、「恐怖心理」の拡充スピードだ。

背景として大きいのは、前回のパンデミック時(2009年)には普及していなかったスマートフォンやSNSの存在だ。これらを通した疫病関連ニュースのインプット量と頻度の劇的な増加は、感染予防に関する有益な情報だけでなく、将来不安を煽る情報の流入をもたらした。結果として、金融不安や衛生用品や生活用品の買い溜め(および転売問題)など、経済や社会生活への影響がべき乗法則的に拡大しているものと推察される。

天変地異が価値観を変える

日用品

天変地異が人々の心理や価値観に与える影響は、「恐怖」だけではない。2008年の世界的な金融危機(いわゆるリーマンショック)は、市場経済における利己的な行動を是とする「リバタリアニズム」に対する反動を引き起こした。利潤最大化に向けた企業行動による「負の外部性(格差拡大や環境影響)」の問題についても、企業と市場の関係を巡る課題として、強く意識されるようになっていった。

金融危機を契機に、ミレニアム世代に代表される新世代の価値観は、社会貢献や自己実現といった経済的な対価以外を基軸としたキャリア形成や人生設計に移行してゆき、多くの起業者や社会活動家を世に送り出した。

その結果として、彼らをロールモデルとしたミニマリズム的かつエシカル(倫理的)な消費行動の機運も高まっていった。おそらく今回のパンデミック騒動後に醸成されていくのは、従来のミニマリズム的な消費トレンドに「健康」という要素が融合した新たな価値観や消費行動であろう。

日本では震災が価値観を変えた

日本においても、2011年の東日本大震災が人々の価値観に少なからぬ影響を与えた。被災地復興のネクストステップとしての「地方創生」が政策テーマとして浮上したことに加え、被災地支援の寄付行為や、他者との共感や「つながり」を求める消費者ニーズに応える民間企業サービス等の端緒にもなった。筆者は当時、流通業界担当の証券アナリストとして小売業界の販売動向をウォッチしていたが、震災後の東北で一時的に婚姻率が上昇したり、全国的にギフト需要が増加するなどの傾向がみられた。

医療、都市基盤の再整備が進む

再開発

今回の新型ウイルスの発生起点となった中国は、初期の対策こそ遅れたものの、感染拡大を最小限に抑止することに成功した。中国政府による国民の外出禁止等の封じ込め作戦の徹底ぶりはある種の成功事例として評価され、現在も感染者数が増加している欧州諸国等で同様の措置が導入されているようだ。

2001年の米国同時多発テロをきっかけに国際線旅客の身体・持ち込み荷物検査が強化されたことや、2005年の英ロンドンでの多発テロの教訓から市中に大量の監視カメラが設置されたことと同様に、今後は各国において、パンデミックに備えた緊急措置の制度設計や、国境での検疫強化が進められるのではないだろうか。

また、今回感染拡大が深刻化している南欧や中東地域においては、都市化(人口密集)と公衆衛生という近代以降のパンデミックに共通する社会課題が改めて認識され、都市基盤や医療機関の再整備や新規投資が進められる国・地域も出てくることも予感される。

まとめ

パンデミックによるマクロ経済や企業業績への影響に対して、危機管理等の守りを固めることは当座の優先課題だ。それと同時に、企業経営者やビジネスパーソンには、「ポストコロナ危機」に出現する事業機会を見据え、反転攻勢の準備を進める姿勢が求められるであろう。

▼続きはこちら
続「ポストコロナ危機」消費社会の構造変化に備えよ

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