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O2Oとは?OMOやオムニチャネルとの違いを事例とともに解説
インターネットの普及によってECビジネスが拡大し、消費者は場所も時間も問わず買い物ができるようになりました。 一時期は実店舗がなくなる、などとも言われていましたが、現在では実店舗の価値を見直す動きや、アマゾンが実店舗を出すなど様々な変化が生まれています。 その代表事例がECサイトと実店舗を連携させるO2O(Online to Offline)です。 本記事では、O2Oの基礎知識を押さえたうえで、O2Oに取り組む企業を紹介します。また、O2Oと似た概念である、オムニチャネルとOMOについても解説します。
O2Oとは
O2O( Online to Offline)は、インターネット店舗(オンライン)と実店舗(オフライン)を連携させて、消費者の購買活動を活性化させるマーケティング施策です。
具体的には企業がスマホアプリやWebサイト、SNS、メールマガジンといったオンラインツールでクーポンを配布し、実店舗へ集客するといった手段が挙げられます。
最先端のO2O事例では、ITを駆使してマーケティング効果を上げています。顧客の位置情報をスマホで入手できれば、顧客が店の近くに来たときに、電子クーポン券をスマホに送信することが可能など、O2Oでは顧客データの電子化が容易なため、マーケティング効果を測定しやすいメリットがあります。
拡大するO2Oの市場規模
サイバーエージェントとデジタルインファクトの共同で行われた市場調査によると、2018年の国内のO2O関連の広告市場は135億円でしました。同社はさらに、2023年には2018年の12倍の1,616億円に到達すると予測しています。
出典
サイバーエージェント調べ
O2Oは「オムニチャネル」や「OMO」と何が違うのか
O2Oとよく比較される概念として「オムニチャネル」と「OMO」があります。
O2Oとオムニチャネル、OMOの違いを解説します。
オムニチャネルとO2Oとの違いとは
オムニチャネルは、販売するタッチポイント(チャネル)を複数持つ考え方です。実店舗だけでなく、カタログやオンラインストア、ECサイトなどオンライン、オフラインを問わずチャネルを増やします。これらすべてのチャネルを統合して「総合販売チャネル」をつくるのがオムニチャネルです。
OMOとO2Oとの違いとは
OMO(Online Merges Offline)とは、「オンラインとオフラインの融合」です。
O2Oやオムニチャネルは、オンラインとオフラインが別々に存在するという前提のもとでの考え方です。
それに対して、OMOは、オンラインとオフラインがすでに融合した世界を想定し、そのなかでシームレスにマーケティングを考えていきます。
O2Oの事例
O2Oの事例として、家具大手のニトリとアルコール飲料大手のキリンの取り組みを紹介します。
ニトリはリアル店舗の購買体験を拡充するためにO2Oを導入
ニトリは2018年8月に「O2O推進室」という部署を設置するほど、O2Oに力を入れています。
O2Oの具体的な取り組みのひとつが、スマホアプリのアップデートです。2019年8月に「ニトリアプリ」に画像検索機能を追加しました。
たとえば、ユーザー(消費者)が、友人の家で素敵なソファを見つけたとします。ユーザーがスマホでそのソファを撮影し、ニトリアプリに取り込むと、そのソファアに似たニトリのソファアが画面に表示されます。
それだけではなく、そのソファアの値段やそのソファを扱っている店舗もわかります。
参考
「ニトリ、画像から似た商品を検索 アリババのエンジンを国内で初採用」日本経済新聞
キリンは「客と店の間に割って入るため」にO2Oを実施
飲料メーカーのキリンのビジネスモデルは、BtoBtoCという特徴があります。キリンは消費者が購入する最終消費財をつくっていますが、キリンがそれを消費者に直接売ることは少なく、キリンは小売店や飲食店や卸売店にビールなどを販売します。
それでB(キリン)toB(実店舗)toC(消費者)となるわけです。
BtoBtoCの欠点は、キリンが消費者の動向をつかみづらいことです。そこでキリンは「客と店の間に割って入るため」にO2Oを実施することにしました。キリンがその際に用いたツールLINEです。
店頭でキリンの飲み物を購入すると、LINEポイントが貯まるキャンペーンを実施しました。消費者は、どこかのサイトに登録することなく、LINEでキャンペーンに参加できます。この「縛りのなさ」が、このキャンペーンの最大の特徴です。
消費者はキリンの商品を3本買わないとLINEポイントをもらえませんが、1本買うだけでキャンペーンへ参加可能です。
もし消費者が1本買ってキャンペーンに参加したものの、2本目をなかなか買わなかったとき、キリンはLINEで、リマインドのお知らせを消費者に送信します。
この施策は消費者に、キャンペーンに参加していることを意識させ、2本目、3本目の購入を狙うことが目的です。
このキャンペーンの参加者数は、以前に行ったハガキを使ったキャンペーンをはるかに上回ったそうです。
また「タピネス(Tappiness)」というサービスでは、キリンの自動販売機で飲料を購入したあとに、スマホを自動販売機にかざすと、ドリンクポイントが貯まります。
このサービスの目的は消費データの収集です。「誰が、どの自動販売機で、どの商品が、いつ、どれだけ売れたか」というデータを集めることで、マーケティング資料にすることができます。
その結果、缶コーヒーは、自販機ユーザーの10%が、自販機のコーヒーの売上の45%を購入していることなどがわかりました。タピネスは「自販機というリアルの販売ツール」と「スマホというネットツール」をつなぎ、マーケティングリサーチを行った好事例といえます。
参考
午後の紅茶 ザ・マイスターズ &ファイア ワンデイ スプリングキャンペーン│キャンペーン│キリン
Tappiness(タピネス)|キリン
オンラインとオフラインの融合は必要不可欠
いまや「実店舗だけ」でも「ECサイトだけ」でも、販売量を増やすことはできません。さらにいえば、実店舗とECサイトの双方を展開するだけでも足りないでしょう。デジタルを活用してリアルの売上を増やし、リアルでデジタルの売上を増やしていくO2Oは、今後当たり前になっていくでしょう。
キリンの事例と同様に、リアルとデジタルの融合したデータの蓄積が重要になります。アマゾンが実店舗を出している理由はフィジカルとデジタルの融合です。キャッシュレス時代で、年代、性別、時間帯などで、どの商品がどういう頻度で売れるのか、などのデータを蓄積しています。
データが蓄積されると、次はAIによる分析・解析を行います。そうなると正確にユーザーに対してリコメンドできますし、売上予測も正確になります。企業はオムニチャネル化やO2O化を進めながら、OMOの準備に取り掛かる必要があるでしょう。
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