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壽屋×FMIの経営改善事例インタビュー【後編】経営層や各部門を有機的につなぐ施策の推進で業績好調を実現
主にフィギュアやプラモデルを扱うホビーメーカーとして知られる株式会社壽屋(コトブキヤ)は、2023年で創立70周年を迎える老舗企業です。同社は、ホビー商品の企画・製造・販売を主力事業に、直営店やオンラインショップも運営。近年では、オリジナルコンテンツとして自社IP*の創出にも注力し、人気シリーズを多数生み出しています。現在は好調に業績を伸ばしているコトブキヤですが、一時は業績が伸び悩み、FMI(フロンティア・マネジメント)がコンサルティングを担当したことも。その当時の状況や施策、成果について、前後編にわたり、株式会社壽屋の清水克多郎取締役とFMIのコンサルタントに話を聞きました。 *IP=キャラクターなどの知的財産権のこと
<記事前編はこちら>
話:株式会社壽屋 取締役 清水克多郎、フロンティア・マネジメント担当コンサルタント
聞き手:Frontier Eyes Online編集部
「モニタリング会議」で現在地を共有し、「経営委員会」で縦のつながりを創出
Q: ここまで、コトブキヤの変遷や課題、具体的な解決策として「部署横断プロジェクトチーム」と「企画審査会議」のお話をしていただきました。他には、どんな施策を打ったのでしょうか?
担当者:先ほどの課題の3つ目である「PDCAが十分に回せていなかったこと」に対して、「モニタリング会議」をご提案しました。会社や部門ごとの業績はもちろん、戦略方向性と施策によっても見るべき数字は変わっていくので、その時々で適切な数字を分析・可視化し、そのうえで課題を洗い出して対応策を練る会議を1ヶ月ごとに実施していただきました。
清水:そもそも、以前は経営情報を管理職に伝える場面が少なかったのです。どこまでの情報をどう出したらいいのかという問題や、情報管理の面でも心配がありました。そこで、「モニタリング会議」を導入するにあたり、社員に対して情報管理に関する勉強会を実施したのです。
そうした準備をしたうえで、毎月固定の情報として部門別の損益や経費、カテゴリー別の商品の販売状況なども管理職に開示するようになりました。
Q: 「モニタリング会議」を導入したことによる効果は感じていらっしゃいますか?
清水:はい。会社の現在の立ち位置や、目的に向かうために今のスピード感で大丈夫なのかをみんなで確認できるようになったのは、非常に良いことだと思っています。
担当者:今おっしゃったことに加えて、モニタリング会議では企画審査会議での話やそれぞれの部署で進んでいる施策の話なども増えてきたのですよね。
清水:そうですね。その時々のトピックスを共有したり、多少議論したりするような場にもなっています。毎月末に2時間半ぐらい、みっちり会議をしていますね。
担当者:今はもう社員のみなさんも慣れていらっしゃると思うのですが、導入当時はモニタリング会議の前に、私たちと一緒に事前準備のための会議を開いていました。そこで報告内容をブラッシュアップしていたのですが、準備に工数をかけ過ぎても本末転倒なので、数字の分析・レポート方法の仕組み化も行いましたね。
清水:あとは、FMIさんのご提案ではないのですが、「経営委員会」も自主的に始めました。実はそれまで、部長などの管理職層が現場の課題を経営層に相談できる場がなくて、何かあれば個別に社長や役員のところに相談しに行く形でした。
でもそれではハードルが高いうえに、その場で結論が出たり出なかったりしていました。そこで、経営委員会の会議を毎週固定で実施して、管理職が相談事を持ち込む形式に変えたのです。それによって現場の情報がタイムリーに入り、都度結論も出るようになったので、ものごとがよりスムーズに動くようになりました。
改革の推進には社内の理解と協力、内製化が不可欠
Q: 「部署横断プロジェクトチーム」と「企画審査会議」、「モニタリング会議」、「経営委員会」と様々な新しい取り組みを実施されてきたわけですが、コンサルティング会社を入れることに対する社内の反応はいかがでしたか?
清水:今でこそ成果が数字などで表れていますが、当初はやはり一部では拒否反応もありましたね。そもそも、当時の営業利益から考えると相当の費用を払ってコンサル会社を入れることを許可してくれた社長には、本当に感謝しています。そして様々な施策を受け入れて実行してきてくれた社員にも、感謝の気持ちでいっぱいです。FMIさんの実行支援+社長の理解+社員の行動力=業績好調だと思っています。
Q: やはり、改革をするには社内の理解と協力が欠かせないということですね。
担当者:私たちも、5名体制で段階に合わせて常駐や半常駐、往訪を使い分けながら連携を取ってきましたが、やはり常にリアルタイムで全てを把握できるわけではありません。上手くいったのは、何よりも先導してくださった清水取締役をはじめ、主体的に我々との橋渡しをしてくださる社員さんたちがいたからです。
清水:そうですね。最初はFMIさんに内部の分析や把握をしてもらって、仕組み化やレールを敷く作業をしてもらいましたが、そこからはやはり自分たちのものにしていくために社員と一緒に必死になって取り組んできました。
担当者:まさにそこが重要で、清水取締役がおっしゃっているように、やはりコンサル会社に丸投げではいけません。経営層に何をどう変えたいのか明確なビジョンがあって、それを実現するためにコンサルを利用する。そしていずれは自分たちでやっていく、内製化していくんだ、という姿勢が必要です。
「コンサル会社はまだ見ぬ未来の話をしてくれる」
Q: FMIがコンサルに入った結果としての満足度はいかがでしょうか?
清水:正直に言うと、入ってもらっていた最中の満足度は50%ぐらいでしたが、今は150%ぐらいです(笑)。というのも、当社の場合は企画が立ち上がってから販売までに少なくとも1年はかかるので。さらに会社全体の業績として考えると、入ってもらってから実際に結果が出るまでには2、3年はかかりますから。
具体的に言うと、FMIさんに入ってもらいはじめた2018年は売上高が約88億円だったのに対して、2022年は約142億円とおよそ1.6倍に伸びました。営業利益で言うと、2018年は約6億8千万円に対して、2022年は約23億3千万円とおよそ3.4倍にもなりました。
Q: FMIの対応については、いかがでしたか?
清水:当初、FMIさんと事業計画を立てる中で、当時は売上高が約88億円のときに100億円以上の目標を立てていました。とはいっても、私たちはまだ80億円台の世界しか知らないわけです。もちろん、このままだといずれは工場や物流のキャパが不足する、といった話が上がったことはあったのですが、そこまで優先的には考えてこなかったのです。
そんなときにFMIさんがプロの目線で、自分たちがまだ見えていない先のステージの話をしてくれたので、とてもありがたかったですね。
担当者:ありがとうございます。確かに、この工場でこの層の商品をどのぐらい作って、時間軸に合わせてどう育てていくか、といった話はしていましたよね。
清水:業績が伸びたことで今まさに当時想定していた課題に直面しているので、FMIさんに言われた通り、もっと真面目に取り組んでおけば良かったなと思います(笑)。
Q: コトブキヤの今後のビジョンについては、いかがでしょうか。
清水:今は次の事業計画を作っているところで、今後もプラモデルやフィギュアの企画・製造・販売に力を入れつつ、自社IPの活用方法を考えて柱にしていきたいですね。あとは、マーケットとして海外での売上比率も伸ばしていくつもりです。
自社IPプラモデルの「ヘキサギア」シリーズ。自分のスタイルに合った遊び方ができるのが特徴。
Q: 記事を読まれる方々の参考にお聞きしたいのですが、今日お話しされたような施策は、他のメーカーが取り入れても効果があるでしょうか?
担当者:私はあると思っています。どの業界でも消費者のニーズは多様化・複雑化してきているので、今まで以上にきめ細やかに応えていかないといけなくなってきています。そんな中で、先ほどの機能別チームの話で言うと、企画職は営業職よりも消費者からはどうしても遠い位置にいるわけです。
だからこそ、部門や職種間で有機的にコミュニケーションをとっていくことはどのメーカーにとっても必須なので、例えば「部署横断プロジェクトチーム」や「企画審査会議」のような取り組みは有効だと思います。他の施策もしかりですね。
清水:新しい施策を取り入れていく際は、やっぱり意思決定者や責任者が必要ですよね。そして決めたことはその通り実践して、上手くいかなければ軌道修正していかないといけません。
担当者:おっしゃる通りで、コンサル会社を入れて大きく改革していく場合は、部門を超えて統括できる役員クラスの方に先導していただかないと上手くいかないのです。部門に囚われずに全体最適を考えていく必要がありますね。
それから、様々な企業のコンサルに入らせていただく中で思うのは、一気に新しい取り組みをはじめて最初から100点を目指して進めると失敗するので、やはりスモールスタートで成功パターンを少しずつ積み上げていくのがいいということですね。
清水:FMIさんに頼むなら、あとはもう、信じて一緒に取り組んでいけばいずれ結果が出ると思います。
担当者:ありがとうございます(笑)。読者の方々で、もし経営面でお困りのことがあれば、ぜひFMIにご相談ください。
取締役 清水克多郎(しみずかつたろう)
1959年生まれ、東京都出身。株式会社イエローハット、株式会社セキチューを経て、2018年9月に株式会社壽屋に入社。2018年9月より取締役に就任。
設立 1953年1月
資本金 4億4,862万円
年間売上高 142億円 ※2022年6月期
従業員数 230名 ※2022年6月末時点
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