融資・投資したくなる事業計画書の書き方とは?必須項目から考え方まで徹底解説

2006年の会社法改正によって最低資本金制度が廃止されてから、日本における法人設立数は右肩上がりです。2009年が96,969社だったのに対し、2017年は131,981社と大幅に増加しています(※)。 ※参照:東京商工リサーチ 2017年 全国新設法人動向調査 資金調達の方法を問わず必要になってくるのが事業計画書です。また、新規事業を立ち上げるケースでも事業計画書が欠かせません。今回は、事業計画書を作成する目的や、金融機関や投資家が融資・投資したくなる事業計画書について解説していきます。

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事業計画書とは?3つの目的とともに解説

事業計画書とは、創業者の事業アイデアをどのように実現していくかを示す書面です。事業内容や事業戦略、市場環境や競合優位性、販売戦略や資金計画などを盛り込んだもので、Power PointやWordなどで作成するのが一般的です。

資金調達

事業計画書をつくる最大の目的は資金調達です。銀行・信用金庫の融資審査でも求められ、ベンチャーキャピタル(VC)や個人投資家・エンジェル投資家から投資を受ける際にも必要になります。

関連記事:いざ、資金調達! 経営者が押さえておくべき3つの方法とメリット・デメリット

希望する条件・金額で資金調達をするには、「いかに説得力のある事業計画書をつくれるか」という点が重要になってきます。

事業計画書を見た担当者が、「この会社は成長する可能性が感じられない」「この事業は成功するイメージが湧かない」と感じたら融資・投資を受ける道は閉ざされてしまいます。融資・投資の判断は事業計画書だけで決まるものではありませんが、金融機関や投資家の信頼を得るために極めて重要な書面だと言えるでしょう。

頭の中の整理

事業計画書を作成する過程にも意義があります。事業計画書を作成していると、事業計画の問題点や矛盾などが洗い出されます。それによって頭の中を整理でき、さらに事業計画をブラッシュアップしていくことが可能です。事業計画書の作成は、ビジョンや考え方を見つめ直すきっかけにもなります。

事業計画書と創業計画書の違い

事業計画書の一種に「創業計画書」があります。通常、事業計画書を作成するのは創業時か、創業後に資金調達が必要になる場合です。創業時に作成する事業計画書を、創業後に作成する事業計画書と区別するために「創業計画書」と呼ぶ場合があります。

創業後に作成する事業計画書では、過去の損益などの実績を交えながら、事業の現在・将来について説明していきます。一方で、創業時は過去の実績データが存在しないので、創業計画書ではまだ形になっていない事業についていかに説得力のある説明ができるかが重要です。

説得力のある事業計画書の作り方・書き方

事業計画書の内容次第で、融資・投資を勝ち取ることができるかどうかが左右されます。特に創業時は、形もなく実績もない事業に対してお金を出すことになるため、相手に頷いてもらうのは容易ではありません。

金融機関の担当者や投資家を動かせる事業計画書は、どのようにして作成するのでしょうか。意識していただきたいキーワードは「共感」と「納得」です。

事業の意義・想いを明確にして「共感」を得る

資金調達を実現するには、事業計画書で事業の意義や事業にかける想いを伝え、金融機関や投資家の共感を得なければいけません。そのためには、下記のような事業に関するあらゆる「問い」に対し、明確な答えを示す必要があります。

・なぜ、その事業に取り組みたいのか?
・なぜ、その事業には価値があるのか?
・なぜ、その事業は競合他社より優れているのか?
・なぜ、その事業をあなたがやるのか?
・なぜ、その事業を今やるのか?

特に重要なのは、「なぜ、その事業をやりたいと思うのか?」です。会社や事業を立ち上げる「動機」や「情熱」と言い換えることもできるでしょう。相手がここに共感できなければ、事業計画書の内容に入り込んでいくことができません。逆に、動機や情熱に共感してもらえれば、「この事業を支援したい」というモチベーションを持たせることができます。

事業の意義や想いは熱量たっぷりに伝えることが大事ですが、事業計画書に長々と書き連ねるのはNGです。明瞭さ、簡潔さを意識して短い文章で伝えることを心がけましょう。

収益の根拠・データを示して「納得」を得る

新事業を考えついた本人にとって、それは唯一無二の素晴らしいアイデアだと考えていることでしょうしかし一方で、融資・投資をする側はシビアな目を持っています。たとえ事業の意義に共感できても、収益が期待できない事業に資金を提供することはありません。

事業計画書のなかでも金融機関や投資家が重視するのは、売上・利益の実現可能性です。事業計画書に「月次売上1,000万円、利益500万円」と記すなら、なぜ1,000万円を売り上げられるのか、なぜ500万円の利益が出るのかについて説得力のある根拠が必要です。

客観的かつ論理的な裏付け

説得力のある根拠を示すには、官公庁やシンクタンクなど公的な統計データを用いるのはもちろんですが、たとえば、顧客・関係者へのアンケート調査や、需要ボリュームや競合優位性に関する調査など、独自の調査・検証を加えることが大切です。客観的かつ論理的な裏付けがあって初めて、相手は実現可能性を感じられます。

新規事業に自信がある人やより多額の資金調達を望む人は、事業計画書を「盛り」がちですが、根拠が薄ければ「現実が見えていない」と一刀両断されるだけです。もし相手が事業にポテンシャルを感じていても、収支に関する見通しが甘ければ融資・投資を勝ち取ることはできないでしょう。

ベンチャーキャピタル(VC)に見せる事業計画書

近年、ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達をするスタートアップ企業が増えています。ベンチャーキャピタルは成長・成功が見込める企業に出資して、将来の株式公開や事業売却によってキャピタルゲイン(売買差益)を得ることを目的にしています。

銀行・信用金庫などから資金調達をする、いわゆるデットファイナンスの場合は、元金に決められた利息を加えて返済すればよいのですが、ベンチャーキャピタルの場合は少し事情が異なります。ベンチャーキャピタルはより大きなキャピタルゲインを得るために、出資先企業に高い成長性・収益性を求めます。そのため、ベンチャーキャピタルから資金調達をする際は、その事業の成長性・収益性をより綿密に裏付ける事業計画書をつくらなければなりません。

事業計画書は「共感×納得」で勝負!

事業計画書の書き方に正解はありません。強いて言えば、金融機関や投資家の「共感」と「納得」を得られる事業計画書が一つの正解だと言えるでしょう。

なお、事業計画書は書面だけを見てもらうケースと、プレゼンテーションしながら見てもらうケースがあります。資金調達をする場合は通常、担当者との面談で事業計画書を見せながらプレゼンテーションをおこないます。

事業計画書がどれだけ魅力的に仕上がっていても、プレゼンテーションがうまくできなければ、その価値は半減してしまいます。事業計画書を作成する際は、必ずプレゼンテーションを想定したシミュレーションをしておきましょう。

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