IR(インベスターリレーションズ)とは

IRの定義は様々ですが、本記事ではIRを、企業が株主や投資家に対して自社の経営状態や財務状況、将来の見通しなどの戦略を広く開示する活動と定義します。

そもそも上場企業は、金融商品取引法や取引所の規則などで、上場会社の義務として最低限の情報開示を行うことが求められています。

一方で、法律や規則の範囲を超えて、昨今、各上場会社は各社工夫を凝らして自社の情報を対外的に開示する広い意味でのIRを行っている現状があります。

「IRの目的は?」と尋ねると、「自社の株価を上げるため」と答えるIR担当者もいます。しかし、その答えは本質的ではないと思われます。

なぜなら、株価は会社の現況や将来の見通しを元に、株式市場の需要と供給で決まるものなので、会社が意図的に株価を上げることはできません。

従って、株式市場で自社の株を買ったり、売ったりする投資家に、正しい情報を適時適切に、かつ投資家毎に情報のバラツキがないように提供することで、「適正な」株価が形成されるものといえます。

よってIRの目的とは、自社の情報を株主や投資家に適時適切に提供することで、投資家ごとや、会社との情報の非対称性を解消し、結果、適正な株価を形成すること、と言えると思われます。

IR(インベスターリレーションズ)の効果

IRの目的を「適正な株価形成」と説明しました。ではなぜ、情報を適切に提供すると、適正な株価が形成されるのでしょうか。逆に情報を適切に提供しないと、適正な株価が形成されないと考えられる理由は何でしょうか。

それは各会社の情報を持っている関係者の情報量について差があるからです。
最も会社の情報を知っているのは、その会社の社長や取締役などの、経営の中枢人物であると言えます。次いで、従業員、そして取引先やユーザーなどといった具合に、経営の中枢からの距離が離れるにしたがって、情報量は薄れてゆきます。

そこでIRによって、特に投資に関する情報、具体的には財務情報や事業計画などを適時適切に開示することで関係者と投資家の間の情報のバラツキ、すなわち非対称性は解消されます。

結果、自社の成長に強い自信を持っている会社で、合理的にその自身を説明できる会社の株価は高く値付けされますし、逆に自社の成長が鈍化している会社の株価は相対的に低く値付けされることになります。

反対に、IRによって適切な情報が投資家に提供されていない場合、せっかく自社の成長に強い自信を持っていたとしても、その自信が適切に株価に反映することは難しいと考えられます。

また別の視点で効果を考えてみると、「IRは広い意味で広報(PR)だ」という人もいます。
特にBtoBの会社だと、一般消費者の目に普段留まることが少ないため、株式市場での認知が低いケースが多いです。

そこでIR活動を積極的に行うことで、一般消費者も含め、広く自社のことを認知してもらうことを目的としている会社も多いです。一方で、BtoCの会社であっても、IR活動を広報(PR)活動ともみなして自社製品を中心とする株主優待を行うことや、株主通信といった形で自社の情報を発信するなどを積極的に行うことで、結果的に自社のファンを増やす戦略をとっている会社もあります。IRが第三者に自社のことを理解してもらうという活動である以上、IRとPRの垣根は低いのかもしれません。

ただ、IR担当者の悩みとしてよく聞くのが、「IRの成果が測定しづらい」ということです。IR担当者が賢明にIR活動を行ったとしても、会社の業績が芳しくなければ株価は下がってしまいますし、株式市場の動向といったマクロ要因で思わぬ株価形成がなされてしまうこともあります。

したがって、IR担当者の業務実績の定量的な測定については、そのKPI設定も含めて、各社頭を悩ませているといった現実もあります。

IR(インベスターリレーションズ)の活動

具体的なIR活動は「法律や規則で定められている活動」と、「会社が独自に行っている活動」の2つに分けられます。

法律や規則で定められている活動とは、四半期ごとの決算短信の開示。そして四半期報告書や有価証券報告書の提出、開示などがあげられます。

これらは上場企業として実施しなくてはならない、金融商品取引法や取引所の上場規則などに定められている活動です。これらを少なくとも実施しないと、注意や罰則を受けることや、上場廃止ということになってしまいます。

一方で、会社が独自に行っている活動は、各社が工夫を凝らして幅広く実施しているので、各社の特色を垣間見ることができます。代表的なものだと、決算補足説明資料の開示や、個人向け、機関投資家向けの決算説明会の開催などが挙げられます。

株主通信や統合報告書の刊行に加え、工場見学会などを実施している会社もあります。また、自社の株式を保有している株主向けに株主優待を贈っていることも、IRの一環ということができます。

加えて、上記のような定期的な開示物の開示に加え、日々IR担当者は個人投資家や機関投資家とのコミュニケーションをとっていますし、一気に投資家とミーティングを行うロードショーと呼ばれるものや、カンファレンスといったイベントに参加している会社もあります。

IR実施の濃淡は各社によって異なりますが、経営者の株式市場への関心や、資金調達を含む経営戦略の意図によってスタンスは様々です。

しかし、最近はコーポレート・ガバナンスコードでも「株主との対話」が協調されていることや、株式持ち合いの解消といった流れを踏まえてIRに積極的に取り組む会社が増えてきています。

まとめ

インベスターリレーションズ(IR)の目的や手法は各社各様です。また、IRの効果測定の難しさなどもあり、なかなかIR予算を多く捻出できない企業も散見されます。

しかしながら、本記事でご説明した通り、工夫を凝らしてIRを行うということは、自社の戦略を適切に投資家に説明し、その理解を得るとことで適正株価を市場で形成するということが目的です。

昨今のコーポレートガバナンス強化の潮流や、市場からの資金調達の多様化といった文脈の中で、積極的にIRを行う企業が増えてきました。

まずは自社の現況を正確にとらえて、段階的にIRの精度を改善してゆくことを検討してみてはいかがでしょうか。

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