フルライン戦略とは?メリットやデメリット、最新事例も詳しく解説

ライフスタイルの多様化が進み、顧客のニーズも幅広くなる現在、各業界で熾烈な競争が起こっています。例えば、コロナ禍で危機的状況にある外食業界では業態改革が急務となっており、好調のIT業界でも技術の発展スピードへの対応力が必要です。 自社の競争力を高め、業界内シェアや利益を拡大し成長するためには選択する戦略が重要となります。 今回は、企業の戦略の一つであるフルライン戦略について解説します。

シェアする
ポストする

フルライン戦略とは?

フルライン戦略とは、ある製品における市場全体を対象として、幅広い製造系列を全て自社で展開する戦略を指します。アメリカの経営学者フィリップ・コトラーによって提案された、業界のトップ企業の成長戦略です。

例えば、腕時計業界を代表するセイコーウォッチ株式会社やシチズン時計株式会社などは、学生でも購入できる低価格帯のモデルから長年使える高級時計のシリーズまで製造し、あらゆるニーズに対応するフルライン戦略をとっています。

性能、サイズ、色やデザインなど様々なニーズを網羅した製品を全て自社ブランドで製造することで周辺需要の獲得・顧客層拡大も可能となるでしょう。

大企業を中心に取り入れられており、各業界での成功事例も多く存在します。

フルライン戦略の逆は?

市場全体を対象として幅広い製品展開を行うフルライン戦略の対義語として、集中戦略があります。集中戦略は、特定の顧客・市場にターゲットを絞って資源を集中的に投入し製造を行う戦略です。フルライン戦略とは対照的に、ニッチなニーズに対応するため中小企業のビジネスチャンスとなりうるでしょう。

関連記事:集中戦略とは?企業が選択するべき経営戦略を事例とともに解説

フルライン戦略の目的

フルライン戦略の目的は、業界におけるシェアの維持、顧客の流出防止及び新規顧客の獲得です。企業内での関連性の高い製品を開発・製造で、シナジー効果が発生します。これにより、業界内での競争優位性が確保されるでしょう。また、フルライン戦略は細かいニーズにも対応可能ですので、他者への顧客流出の防止も可能です。

こうした目的から製品の市場全体をターゲットとした展開を行い、周辺需要の獲得を目指すことでさらなる利益の拡大も狙います。

フルライン戦略のメリット・デメリット

競合他社との競争力を強化し、新たな需要開拓も見込めるフルライン戦略ですが、メリット・デメリット両面を持ち合わせています。
以下で詳しく確認していきましょう。

フルライン戦略のメリット

フルライン戦略を選択するメリットとして、市場全体をカバーし、市場拡大に成功した場合の利益を享受できる点が挙げられます。業界内の市場シェアのトップである企業にとっては、新たな利益獲得源によって成長できるため大きなメリットとなります。
幅広い種類の製品展開により規模の経済性が発生する、競合他社への顧客流出が防げるといった点もフルライン戦略のメリットです。顧客が求める細かいニーズに対応して低価格で展開することでトップシェアを維持できるでしょう。

フルライン戦略のデメリット

市場全体を対象とするフルライン戦略の特性上、大量の資源が必要になります。そのため、経営資源が豊富である大企業に適しており、中小企業の戦略としては不向きです。

競争優位性の獲得と高い売り上げが見込める戦略ではありますが、大きなコストもかかることを念頭に置いて選択する必要があります。

フルライン戦略を活用する企業事例

大量の経営資源の活用による展開可能になるフルライン戦略ですが、様々な業界のトップ企業が実践している経営戦略です。

以下では、各業界でフルライン戦略を採用している企業の事例を紹介します。

トヨタ自動車株式会社

2021年世界販売台数1050万台でトップを維持し、電動車販売や自動運転車の開発でも業界をリードしているトヨタ自動車株式会社ではフルライン戦略が採用されています。

トヨタ自動車では、軽自動車シリーズであるピクシスシリーズから最高級車センチュリーまで様々なニーズに応えた自動車を販売しており、フルライン戦略を実践する企業の代表例といえるでしょう。

またトヨタは、「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」と、ディーラーを系統で分け、同じ地域に展開しています。地域内であえてカニバリゼーションを発生させてシェアの獲得とディーラーのサービス向上を図っているのです。
トヨタ自動車はフルライン戦略の活用にも成功し、大きな利益を獲得しています。

2021年12月14日には電気自動車の事業戦略を発表しました。2030年までに30車種のバッテリーEV(電気自動車)を展開し、フルラインで電気自動車を揃える方針です。
今後の動向にも注目すべき企業といえるでしょう。

ヤマハ株式会社

ヤマハ株式会社は、様々な楽器をフルラインアップで製造・販売する世界最大の楽器メーカーです。ヤマハ株式会社は幅広い価格帯のアコースティック楽器・デジタル楽器を展開しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響により需要が拡大した電子楽器については、2021年3月現在世界で約半数のシェアを占めており、最先端の技術の活用も行う企業です。

プロのアーティスト用の高価格帯のものから音楽初心者でも演奏しやすいものまで、フルライン展開を行いながらも高品質な楽器を製造・販売し世界中の人々に支持されています。

ヤマハ独自のユニークな楽器の展開にも積極的で、顧客のニーズに応え続けています。

株式会社日本アクセス

株式会社日本アクセスは、チルド・フローズンに強みを持つ大手食品卸の企業です。食品業界では新型コロナウイルスの影響によりコンビニ向けの商品の売り上げが低迷し、各企業が打撃を受けました。日本アクセスでも売上が低下したことを受け、企業価値向上を目指した業務改革に取り組んでいます。

2021年度の基本方針の一つである成長事業・成長領域の拡大の具体的な取り組みとして、フルライン戦略の推進を掲げました。チルド・低温分野の強化だけでなくドライ分野の酒・菓子の強化や業務用を対象としたノンフードビジネス提案の拡充などを行っています。

フルライン卸の実現を目指し酒・菓子分野でのM&Aも行う方針を発表しており、フルライン戦略を積極的に進めている企業といえるでしょう。

フルライン戦略を活用して自社のビジネスチャンスを広げる

フルライン戦略の概要やメリット、各企業における事例を詳しく紹介してきました。業界をリードする企業はもちろん、中小企業の戦略策定にも役立つ戦略です。

フルライン戦略は経営資源が豊富な大企業を中心に展開されている戦略ですが、大企業の戦略を詳しく知ることで中小企業のビジネスチャンスの発見につながるでしょう。フルライン戦略についての知識や最新動向を活用し、利益につながるビジネスを展開していきましょう。

コメントを送る

頂いたコメントは管理者のみ確認できます。表示はされませんのでご注意ください。

※メールアドレスをご記入の上送信いただいた方は、当社の利用規約およびプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

コメントが送信されました。

関連記事