「Fortnite」ゲームを超えた影響力

フォートナイトイメージ
▲Googleからブロックされ、EpicGamesの自前ウェブサイトでダウンロードする

iPhoneのアプリ配信プラットフォームであるApp Storeのビジネスモデルに、真っ向から異を唱える存在が、Epic Games社が提供する人気ゲーム「Fortnite」(フォートナイト)である。ゲーム内でプレーヤーに課金するたびに30%の手数料を徴収するAppleのビジネスモデルは、当然のようにゲーム内に独自の課金システムを導入することを規約で禁じており、「Fortnite」が独自の課金システムを導入したことから、Appleは規約違反を理由に、「Fortnite」の配信を停止した。Epic Games社は、Appleおよび同様のビジネスモデルを確立し「Fortnite」を配信停止としたGoogleを相手取り、訴訟を提起している。

EpicGames強気の背景

Epic Games社が強気の姿勢を示す背景には、「Fortnite」のゲームだけには留まらない影響力が考えられる。
「Fortnite」は、グローバルで3.5億ダウンロードを突破しており、2018年4月には、月間売上が300億円を突破したと推定されるなど、若年層を中心に高い人気を誇る“バトルロワイヤル”型ゲームである。
eスポーツの分野でも主要タイトルの一つとなっており、2019年7月に開催された世界大会の賞金総額はeスポーツ史上最高額の3000万ドルであった。グローバルネット動画配信事業者の雄であるNetflixも、TV画面を争うライバルとして「Fortnite」の名前を挙げるなど、ゲームとしての存在感は極めて大きい。

トラヴィス・スコット、米津玄師がゲーム内でイベント

ゲームに留まらない「Fortnite」の影響力は、「Fortnite」内でのバーチャルライブ開催が挙げられる。2019年より順次開催されてきたが、2020年4月に開催された人気ラッパー、トラヴィス・スコット氏の音楽イベント「Astronomical」では、累計で2,700万人が参加したことが判明している。日本でも、同8月には「Lemon」のヒットで知られる米津玄師氏がイベントを開催している。
コロナ禍でリアルライブイベントの開催が困難な環境下、「Fortnite」の若年層における高い人気を活用したバーチャルライブが、圧倒的な人数を動員可能なことは、「Fortnite」自体が、配信プラットフォームに依存しない優れたオンラインメディアであることを示している。

初代スーパーマリオ超え 「あつ森」の可能性

あつまれどうぶつの森イメージ

「Fortnite」だけではなく、任天堂の「あつまれ どうぶつの森」もメディア化の兆しが見られる。
「あつまれ どうぶつの森」はSwitch向けゲームタイトルで、販売本数はグローバルで2200万本以上に達する。そのうち日本は700万本超、1985年発売の「スーパーマリオブラザーズ」の681万本を上回る。
同タイトルでは、著名アパレルや、有名美術館、一般企業などがデザインしたアイテムを入手できるほか、通信機能を利用して、有名タレントのバーチャル握手会や、バーチャル結婚式、卒業式なども行われるなど、様々なバーチャルイベントが開催されている。上記の「Fortnite」のようなバーチャルライブ開催も十分に可能であろう。
自民党総裁選でも候補者の「あつ森」利用の是非が議論となり、米大統領選でも民主党のバイデン氏が選挙活動へ活用した。

強まるタイトル獲得競争

今後も、グローバルで人気化するオンラインゲームは、密なオンラインコミュニケーションや、ゲームならではのキャラクタ操作などをベースとして、新しいメディアとして存在感を高めていくものと考えられる。先日ゲーム機Xboxを展開するマイクロソフトが、著名ゲームを多数リリースする非上場大手ゲーム会社のベセスダを買収した。Fortniteなどメディアのプラットフォームになりえるゲームタイトルの獲得合戦は強まる可能性があるだろう。GAFAやグローバルネット配信事業者などによるグローバルゲーム会社のM&Aにも注目したい。

関連記事

メタバースで変わるエンタメ ゲーム会社へのM&A加速

“メタバース”への巨額投資が、エンタメ業界の構図を変えようとしている。多くの人が同時参加する仮想空間を運営するには、オンラインゲームの技術と高度なクラウド技術が必要で、大手企業によるゲーム会社のM&Aが加速する可能性もある。

TSMC熊本進出の衝撃㊤:進出の短中期影響は1.3兆円

半導体の世界最古にして最大のファウンドリーメーカー、TSMCが熊本県に進出することを発表した。フロンティア・マネジメントの試算では、熊本県を中心に中短期で1.3兆円の経済効果を予想する。この記事では㊤㊦に分けて、熊本県を中心に九州ひいては日本の半導体産業発展に向けた提言をしたい。

エレクトロニクス大手の復活は本物か㊦長期トレンドと22/3月期の注目点

国内大手エレクトロニクス8社の収益性が、改善方向にある。現在の2022/3月期業績予想が達成されれば、売上高営業利益率は7%を突破し、ROEも2桁へと上昇する公算が大きい。過去20年間で最高水準となるが、エレクトロニクス大手の収益性回復→復活は本物だろうか?今回の記事㊦では、長期トレンドの分析、21/7-9月期業績と22/3月期の注目点について、言及したい。

ランキング記事

1

アシックスの逆襲「箱根駅伝着用ゼロ」から復活

2022年の箱根駅伝は、青山学院大学が6度目の総合優勝を遂げた。記録は自らの大会記録を大幅に更新する10時間43分42秒。この記事では、レースの高速化を支えるランニングシューズを例に、21年の大会で「箱根駅伝着用ゼロ」に沈んだアシックスの巻き返し戦略に焦点を当てる。

2

2022年展望 不動産 住宅販売のリスクは、金利動向次第

2020年から2021年にかけて住宅の売行きが増加して、特に戸建住宅の売行きが好調だ。しかし、世界各国でインフレが進行しており、各国の利上げ次第では日本の長期金利にも影響し、高額物件の販売にブレーキがかかる可能性もある。

3

バルミューダ事例に学ぶインサイダー取引対応

2021年11月中頃、洗練されたデザインが人気の家電メーカー「バルミューダ」が華々しくスマートフォン市場に参入といった話題に、冷や水を浴びせるようなニュースがメディアを賑わせた。社外取締役によるインサイダー取引に係る社内規程違反と関係者の処分についてだった。本件を題材にインサイダー取引対応について考えてみたい。

4

2022年展望 中国 急激な規制から安定的な政策へ

中国は2021年、経済や文化、教育など様々な方面で、規制や制限を強化した。前年の急激な政策の影響を和らげるため、2022年の中国の経済政策は「穏」(安定)に変化していくとみられる。

5

TSMC熊本進出の衝撃㊤:進出の短中期影響は1.3兆円

半導体の世界最古にして最大のファウンドリーメーカー、TSMCが熊本県に進出することを発表した。フロンティア・マネジメントの試算では、熊本県を中心に中短期で1.3兆円の経済効果を予想する。この記事では㊤㊦に分けて、熊本県を中心に九州ひいては日本の半導体産業発展に向けた提言をしたい。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中