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フィードフォワードとは?フィードバックとの違いや導入例を解説
現代において、企業のイノベーションは重要な経営課題の1つです。イノベーションを達成するには、革新のアイデアを生み出せる優秀な人材を育成する必要があります。 そこで注目されている方法が、フィードフォワードと言われる未来に目を向ける指導法です。 フィードフォワードは、従来行われるフィードバックとは全く異なる指導法だと言われています。 本記事では、フィードフォワードの意味やフィードバックとの違い、企業が導入する際の例について解説します。
フィードフォワードとは
フィードフォワードとは、人材を育成するためのコミュニケーションの1つです。フィードフォワード協会の代表を務める久野和禎氏は、次のように定義しています。
「過去や現状にとらわれてしまいがちな人に対して、(中略)その人が自分の未来に意識を向けて行動することができるように促す技術のこと (注1)」
フィードフォワードを実践すると、従業員の未来志向を促せるため、新たなアイデアの着想につながります。
そのため、イノベーションに貢献できる人材育成法として注目されているのです。
フィードフォワードが注目される背景
フィードフォワードが注目される背景には、企業のイノベーションや従業員定着の必要性が挙げられます。
近年、顧客ニーズの多様化やテクノロジーの進化により、企業には過去の枠組みに囚われないサービスや商品の提供が求められるようになりました。
そのため、過去のやり方にとらわれない、新しい考えやアイデアの醸成が可能な人材が求められています。
またフィードフォワードを実践すれば、上司が部下を評価したり、修正点を指摘したりせずにコミュニケーションを図れるため、若手従業員の自尊心を損なわないでしょう。
優秀な人材の確保を希望する企業においては、フィードフォワードの教育方針を取り入れて若手従業員の離職を防ぐ狙いもあります。
フィードフォワードとフィードバックとの違い
フィードフォワードと対照的な概念に、フィードバックが存在します。
フィードバックとは、相手の過去や現状に目を向け、成長に必要な事項を忌憚なく伝える指導法です。
評価できる点を伝えて相手の自己肯定感を高めたり、修正すべき点を指摘して相手の成長を促したりします。
フィードフォワードとフィードバックの差異は、指導の対象が過去や現在にあるのではなく、未来にある点です。
両者の違いについて、さらに詳しく見ていきましょう。
フィードフォワードとフィードバックとの比較表
フィードフォワード | フィードバック | |
---|---|---|
目的 | 未来の改善 | 未来の改善 |
起点 | 未来 | 過去・現在 |
内容 | 解決策 | 誤りや欠点もしくは、評価できる点 |
関係性 | 相互扶助を重視 | 主従関係を重視 |
両者は、未来の改善を目的としたコミュニケーションである点で共通しています。
しかし、議論の起点や内容、関係性については全く異なる性質を帯びているのが特徴です。
フィードフォワードでは、相手に対して将来の見通しや道筋を問いかけるようにして、コミュニケーションを行います。
また、上司と部下といった主従関係を重視せず、相互扶助に重きをおいて解決策を模索するのもポイントです。
フィードフォワードのメリット
ここでは、フィードフォワードを従業員教育に取り入れるメリットについてお伝えします。
反発を抑制できる
フィードフォワードでは、相手の欠点や誤り、問題を指摘せずに、相手自身が解決策を考えるように促します。
指摘により相手の自尊心が損なわれないため、反発を生みにくいのです。
広い視野で議論ができる
フィードフォワードでは、より高い立場からの解決策を考えさせる、抽象度の高い問いかけも可能です。
たとえば、「個人の問題に対する解決策を、社会全体に役立てるにはどうすれば良いか?」など、より広い視野に立った議論が行えるのも魅力です。
従業員の主体性を育める
フィードフォワードを実践する場合、相手の意見や希望を問いかけるようなコミュニケーションを重ねます。
たとえば、「これからどうしたいのか?」と問いかけて、相手に自分自身の考えを表明させるのです。
解決策の思案の習慣化により、問題解決に主体的に取り組めるようになります。
企業のフィードフォワードの導入プロセス
企業がフィードフォワードを導入する場合は、次のプロセスが考えられます。
従業員に趣旨を説明する
フィードフォワードをはじめる前に、まずは従業員に趣旨の説明を行います。
今後の方針について意見を聞きたい旨を告げ、意見交換の準備を依頼します。
面談のスケジュールを組む
面談のスケジュールを組む際には、全ての面談対象者の希望や考えを過不足なく聞き出すために、時間を決めておくのもおすすめです。
とくに初回は、30分から1時間程度の丁寧な話し合いによる、相手の考え方への理解が大切です。
数回の面談を重ね、相手の考えを把握できるようになったら、徐々に話し合いの時間を減らせるでしょう。
面談を実施する
面談実施の際には、労いの言葉からはじめ、相手が自分の考えを語りやすい場を整えます。その後、相手の考えや希望について問いかけます。
面談のポイントは、相手が述べた考えや希望を一旦は受け入れる点です。
会社の業務とは関係のない話や会社との利害の不一致があっても、受け止めて相手の立場を尊重するように努めます。
今後はフィードフォワードアクション(FFA)
生産管理や品質管理などの多くのビジネスシーンで、PDCAを回すように指導がなされます。
しかし、PDCAの運用には一定の時間を要するため、変革の激しい現在では時代遅れとの指摘もあります。
そこで、フィードフォワードを取り入れたフィードフォワードアクション(FFA)が、PDCAの代替プロセスとして期待されているのです。
ここではFFAについて解説し、PDCAとの違いについて解説します。
フィードフォワードアクション(FFA)とは
FFAとは、ゴール設定後に行動を起こし、その行動の結果を受けて無意識の振り返りとゴールの再設定を行うプロセスです。
ここからはFFAに含まれるフィードフォワードとアクションのプロセスについて解説します。
フィードフォワード
フィードフォワードに含まれるのは、次の2つのプロセスです。
- ゴール設定(再設定)
- 無意識の振り返り
振り返りを他者からのフィードバックや自己の反省で行うのではなく、ゴール達成を目指す本人が無意識に行います。
行動しながら、必要に応じて計画を見直していくのです。
アクション
フィードフォワードをもとに、アクションを起こすとFFAのプロセスが進行します。
アクションの後は、必要に応じてフィードフォワードを行い、計画の軌道修正やゴールの再設定を繰り返します。
PDCAとの違い
FFAは無意識の思考を大切にするため、フィードバックの不履行が、PDCAと大きく異なる点です。
たとえば、上司が部下に仕事を任せる場合を考えてみましょう。
この場合、計画の評価や改善は部下が行う無意識の振り返りに任せて、フィードバックは行いません。
上司が部下に対して行うのは、ゴール設定と計画についての問いかけです。
一方でPDCAの場合は、次のようにプロセスが進行します。
- P(Plan):計画(目標設定)
- D(Do):実行
- C(Check):評価
- A(Action):改善
FFAは、PDCAの「評価」や「改善」といったフィードバックに関連するプロセスを実施しません。
フィードバックの時間を設けないため、PDCAよりも実行に移すまで早く、変化の激しい現在のイノベーションに適したプロセスだと言えるでしょう。
新しい人材教育「フィードフォワード」に期待
フィードフォワードは、従来のフィードバックと比べると従業員の主体性を重んじた人材育成法と言えます。
指摘せずに済むため、従業員からの反発を招きづらい点も魅力です。
一方で、指導者は従業員の答えを待つ辛抱強さも求められます。
入社して日が浅い従業員の場合、経験や知識が少ないため、指導者の問いかけに対して自らの考えを述べるのが難しいでしょう。
現実的にはフィードフォワードのみで従業員教育を行うのは難しい場面もあるため、フィードフォワードとフィードバックの使い分けがおすすめです。
今後も、企業のイノベーションに貢献できる人材育成法が期待されます。
引用(参考)
注1 :久野和禎『いつも結果を出す部下に育てるフィードフォワード』(フォレスト出版、2018年)
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