百貨店業界における売上推移とその背景

コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響で、百貨店の営業自粛期間は4月、5月の約2ヶ月に及んだ。

営業自粛期間中も多くの百貨店では、生鮮食品や惣菜等の販売を継続したが、外出自粛の機運も高まり、客足は思うように伸びなかった。

2020年4月の全国百貨店売上高は1,208億円、前年同月比72.8%減まで落ち込んだ。
これは1965年1月の統計開始以来最大の下落率である。5月下旬の緊急事態宣言解除を受け、2020年5月の全国百貨店売上高は1,515億円、前年同月比65.6%減と若干の回復傾向を見せたものの、依然として低水準が続いている(出典:日本百貨店協会)。
感染は「第二波」を迎え、客足や売上の回復の目途が立たない百貨店業界は大きな不安に包まれている。

消費者意識の変化

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たち消費者の購買意識にも大きな影響を及ぼした。

楽天は、2020年4月の国内Eコマース事業において、前年同月比57.5%の売上増加を記録。宅配を担うヤマト運輸は、2020年4月の小口貨物取り扱い実績が前年同期比13.2%増加した。
コロナを機にEコマースの新しい利用者が生まれ、多くがその便利さを実感。こうした消費者の意識の変化は、逆戻りすることはない。

一方で、サイト上の商品画像や消費者レビューを頼りに購入をするなかで、「やっぱり実物を見たい」「どんな商品なのか、詳しい説明が欲しい」と感じた人も少なくないだろう。

私たちは、手軽にさっと商品を購入したいと思う一方で、その反対に、丁寧な接客を受けて商品を吟味したうえで購入したいという、相反する欲求を持っている。

百貨店本来の強みとは

百貨店の最大の強みは、丁寧な対面接客により、質の高い購買体験を提供することにある。

本来であれば、一歩足を踏み入れると、あちらこちらから「いらっしゃいませ」という元気で明るい声が響き渡る。

店舗の中では、販売員が私たちの来店目的や悩みに耳を傾けながら、最適な商品提案をしてくれる。日常におけるささやかな贅沢である百貨店での買い物という体験は、私たちに寄り添ってくれる販売員の存在がスパイスとなって、高い価値を生む。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大は、百貨店の強みを、根底から覆してしまった。

営業再開後のwithコロナ時代においては、マスクを着用し、ソーシャルディスタンスを保ち、不必要な会話を避けることが望まれている。

販売員は、顧客の表情から感情を読み取れないばかりか、会話を通じて来店目的や悩みを把握することもままならない。終息の兆しを見せない感染拡大状況において、客足の戻りも今一つだ。

対面接客には頼れない

いつまで続くかわからないwithコロナ時代と、その後に待ち受けているニューノーマルの世の中において、従来型の対面接客に重きを置いた事業スタイルを貫き続けることは大きなリスクである。

これまで培ってきた強みを活かしつつ、時代に即した新たな強みを築くことが急務だ。
今回は、新しい時代に即した手段として「オンライン接客」を提案したい。

岐路にたつ百貨店

米国の高級百貨店ニーマン・マーカスは5月7日、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請した。新型コロナウイルスの感染拡大が直撃して事業が行き詰まったことが原因と言われている。
海外と比較すると感染拡大が緩やかとも言われている日本においても、百貨店はビジネスモデルを見直す岐路に立たされている。

オンライン接客とは

今回提案するオンライン接客とはその名の通り、オンライン上で販売員が顧客に対し接客を行うスキームだ。
既に世の中では、消費者がチャットを通じて、オペレーターやAIと購買相談する仕組みが普及しつつある。

また、店舗のアパレル店員が考案したコーディネート案を、ショッピングサイト上に掲載。それを経由して実際に消費者が購買すれば、店員にインセンティブが入る仕組みを導入している企業もある。

だが、いずれのサービスも、百貨店の最大の強みである対面接客の良さを引き出せていないのが実情だ。

オンライン接客は、以下の2ステップを通して、オンライン上における接客の質をリアル店舗における接客と同等にまで引き上げることが最大のポイントとなる。

ステップ①オンライン接客ツールの高度化

第1ステップは、より高度なオンライン接客ツールの構築・導入だ。
消費者はPCやスマートフォンの画面を通して販売員と会話し、同じ画面上で商品を見ながら、購入を検討する。
従来のオンラインショッピングにはなかった「販売員と消費者の画面を通したリアルな会話」により、購買体験をリアル店舗同様に質の高いものにする。これまで取り込めていなかった貴金属など高価商品の購買客層にアプローチし、その躊躇を取り除くことが可能となる。

このスキームを百貨店に導入するにあたっては、いくつかの課題が生じる。百貨店の多くは「消化仕入」(商品の所有権を卸売業者やメーカーに残しておき、実際に売れた際に売上として計上する仕組み)の取引形態を採用しており、販売員もメーカー側が出すことが多い。
このスキームにおいて、誰がオンライン接客を担当するのか。在庫管理・負担は誰がどのように担うのかという根本的な問題に直面するだろう。

まずは現状の取引形態を前提としつつ、百貨店サイドで完結可能な、「○○展」などの催事や外商顧客を対象とした範囲で導入していくことを推奨したい。

本スキームは地方在住の外商顧客と首都圏における百貨店の催事をオンラインで繋ぐことにより、わざわざ足を運ぶことなく普段お目にかかれない特選商品の購入が可能になる。

反対に、都心部在住の外商顧客と地方をオンラインで繋ぐことにより、足を運ぶことなく地方物産展に参加することも可能となる。

新型コロナウイルスの影響で百貨店を訪れることが難しくなった人だけでなく、そもそも買い物の為に足を運ぶことが煩わしいと感じていた人にとっては、オンライン上で商品特性を理解し、質の高い接客を受けることができるオンライン接客は相性が良い。

ステップ②オンライン接客拠点としてのサテライト店舗

第2ステップは、オンライン接客に特化した小型のサテライト店舗の展開である。
バーチャルリアリティを用いたリアリティのある商品案内は、消費者の購買体験を店舗における購買と遜色のないものにするだろう。
AIが消費者の映像を認識、アバター化し、商品を試着したイメージを作成することもできるだろう。きらびやかな内装やゆったり寛げる空間づくりをすれば、実際に店舗を訪れる以上の満足感を与えることも可能だ。

そのような、オンライン接客顧客を対象としたサテライト店舗を各地に展開することで、消費者はわざわざ店舗まで足を運ばずとも、デジタル上でのリアリティのある接客のみならず、百貨店におけるサービス・空間価値をも内包した購買体験を楽しむことができる。

これらのステップを経ていわゆる外商分野でのオンライン接客が軌道に乗った暁には、裾野を拡大し、自主編集売り場以外の店舗販売にも展開していけば良い。将来的には、百貨店とメーカー各社間でデジタル販売事業に特化した合弁会社を設立。ブランド横断での販売プラットフォームを提供していくで、消費者により最適な提案を可能とするスキームを構築していくことも面白いだろう。

百貨店がニューノーマルで生き残るために

かねてよりの強みである丁寧な対面接客が生かしにくい現在、オンライン接客という新たな領域に足を踏み出し、Withコロナ時代、そしてその後到来するであろうニューノーマルの世の中における生き残りをかけた戦いに備えるべきではないだろうか。

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