株価低迷の旧来型産業、伸びる「IT」

時価総額

既に少し古いが5月1日に公表された東京商工リサーチ「第4回新型コロナウイルスに関するアンケート」によれば(4月23~28日までに回答があった1万2717社の速報値)、コロナウイルス問題は既に77%の企業活動に影響を与え、さらに22%の企業が今後影響を受ける、としている。業種別では一次産業(農林水鉱業)で影響なしが全体の13%と比較的高いものの、それ以外は0-2%が影響なし、逆に言えば98-100%が影響を受ける、としている。既にインパクトはリーマンショックを上回ると言われ、流通・観光・レジャー関連はもとより、今後建設・不動産や、日本に基幹産業である自動車へ大きな影響を与えていくだろう。

コロナ影響がどの程度企業別のファンダメンタルズに影響を与えるのかが見えない中、日経平均株価は3月19日に16553円まで年初来で31%下落した後、5/15現在で21%程度リバウンド。年初来では16%低いものの、大幅に下落した印象は薄くなった。NYダウは同様に35%下落した後、27%リバウンドと、日経平均と近い動き。
一方、注目すべきはNASDAQ指数の動きだ。NASDAQ指数は、年初来3月23日まで24%下落した後、現時点で31%リバウンドし、年初来の水準を上回る。「コロナショックはどこ?」という印象である。

NASDAQ指数を構成する企業は、一部の例外を除き基本成長性の高いハイテク企業が中心である。有名なGAFAをはじめ、Microsoft・Intel・Netflixなど大半の米国グローバルハイテク系はNASDAQ上場。これらの企業のうち多くは、リーマンショック後の新しい技術をB2B/B2Cユーザーニーズに合致させ、成長を遂げてきた。

webkaigi
コロナ問題による様々な規制・自粛は、ネットワークを使用したB2B/B2Cでのニーズを再確認させ、使用せざるを得ないこ環境となったことで使用時の違和感をなくし、需要を加速度的に拡大させている印象がある。また新たな需要は、既存の普及したハードウエアである程度実現が可能であることも認識され、付加価値はコンテンツ・サービスへ移行していると思われる。

大手5社中、3社が大幅増益

Wall street sign in New York with American flags and New York Stock Exchange background.
日本より一足早く発表された米国大手NASDAQ企業5社(時価総額合計US$5.4兆、日本の2018年GDPはUS$約5兆)の2020年1-3月営業利益を見ると、時価総額順にMicrosoftがUS$130億(YoY25%増)、AppleがUS$134億(同▲4%減)、AmazonがUS$40億(同▲10%減)、GoogleがUS$80億(同21%増)、FacebookがUS$59億(同78%増)、と大手5社中3社が大幅増益。
Amazonは、基幹のクラウド事業AWSが33%増収・38%増益ながら、EC等の減益が影響。好調なMSはAzureが59%増と全体を大きく牽引している。他にコンテンツ・サービスのNetflixやゲーム大手ATVI(Activision Blizzard)なども事前想定に対し好調な決算を発表している。

gaming

ネットワーク化・デジタル化の波は、リーマンショック後の企業/個人の行動様式に大きな変革をもたらした。その波は、コロナショックによって、今後加速度をもって急速に進む可能性が高い。リーマンショック以降の2010年代半ばまでは、スマートフォンの国際的普及による成長と、それに伴うビジネスモデル変革が主体だったが、既にスマートフォンを含む各種スマートデバイスは普及が一定規模に達しており、成長余地に限界も見える。

一方、普及したスマートデバイスを用い、B2B/B2Cにおいてコンテンツ・サービスには、依然成長余地が高いものと考える。
上記5社で比較すると、最もPER(株価収益率)が高いのがAmazonで低いのがAppleとなっており、成長期待の異なりがバリュエーションにも反映されている。

まとめ

日本では、コロナ後の新しい時代に想定される環境下で、新たな成長によりGDPや雇用を支えることが期待できる産業分野や企業は、現時点で見つかっていない。このままだとリーマンショック後と同様、米国IT大手に加え、十分な力を蓄えた中国IT大手に、再び成長ポテンシャルを奪われてしまう懸念が強い。

ランキング記事

1

プロスポーツチームの戦略オプション コロナ禍でとるべき選択とは

近年、国内においてサッカー、野球、バスケットボールを中心に各種競技でプロスポーツチームが多数誕生しており、スポーツ市場は拡大傾向にある。一方、経営状況が厳しいチームが多く、組織の維持・発展に向けては、地域・チーム特性を活かした独自戦略の構築が求められている。

2

中国で「食品ロス削減令」 農業振興の必要性高まる

農業国から先進国=工業国へ発展を進めてきた中国が、大食いや食料ロスを規制するとともに、農業拡大を強調している。背景には、都市化率上昇と共に、中国の食料課題が、世界にも大きな影響を与えている事情がある。

3

マスクの基準ない国、日本 JIS規格採用で生活の「質」改善を

マスク着用は、「生活習慣」として定着した。COVID-19(新型コロナウイルス)感染症の拡大から約1年半、性能や品質に基準のなかった日本で、業界団体によりJIS規格導入の動きが進む。本稿ではマスクの機能的な進化と課題、今後の方向性について考察した。

4

破壊的イノベーションと持続的イノベーションの違いは?メリットや事例を解説

破壊的イノベーションとは、既存事業のルールを破壊し、業界構造を劇的に変化させるイノベーションモデルです。 この概念は、ハーバード・ビジネススクールの教授であった故クレイトン・クリステンセン氏の著書『イノベーションのジレンマ』で提唱されました。それ以降、飽和状態となりつつある市場に必要なイノベーションとして注目されています。 本稿では、破壊的イノベーションの理論や企業の実践例から、破壊的イノベーションを起こすために必要となる戦略までを解説します。

5

任天堂は、新たな黄金期到来か?「サイクル」のピークか? 新体制下での最高益更新

任天堂はGW明けの2021年5月6日、過去最高益となる2021/3期決算を発表した。Wiiが大ヒットしていた2008/3期以来13年ぶりの更新となり、現在時価総額は8兆円を超えた。コロナ禍の「巣ごもり」による追い風はあったものの、40代で老舗企業を率いる古川俊太郎社長の下、若い力とシニア世代の力を融合させたガバナンス例として注目される。任天堂の好調は循環的な「波」によるものか、新たな成長トレンド入りなのか、検証した。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中