景気循環の波「キチン・サイクル」とは?その定義やメカニズムについて

景気循環の波を語る上で欠かせない「キチン・サイクル(キチンの波)」とは、一体どのようなものなのでしょうか。この記事では、キチン・サイクルの定義やメカニズムに言及し、その他、3つの波について詳しく解説していきます。

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キチン・サイクル(キチンの波)とは

キチン・サイクルとは、短期的に変動・循環する景気波動のこと。資本主義経済にみられ、約40カ月の周期を持つことが特徴です。企業の短期的な生産計画と、消費者の短期的な購買計画との関係によって起こり、企業が抱える在庫品の変動が主な原因とされています。

キチン・サイクルは、米国の経済学者、ジョセフ・A・キチンにより1923年に明らかにされ、ヨーゼフ・シュンペーターの『景気循環論』によって、「キチン循環(キチンの波)」と名づけられました。また、景気循環の一形態であるジュグラー・サイクルなどと比べ比較的周期が短いことから、「短期循環」や「小循環」、「在庫循環(インベントリー・サイクル)」などとも呼ばれています。

そもそも景気循環って?

景気循環とは、(資本主義経済で)経済活動が拡張する「好況」と、収縮する「不況」が交互に発生する周期的な変動のこと。また、「好況」「後退」「不況」「回復」4つの局面が順番に繰り返し現れる、循環的な経済の動きを意味します。

好況の最頂点は「景気の山」、不況の最低点は「景気の谷」と呼ばれ、経済学では、景気の谷から次の景気の谷までを1つの周期として捉えます。また、”好況から後退”、”後退から不況”、”不況から回復”、”回復から好況”の過程それぞれを「景気の調整局面」と呼んでいます。

キチン・サイクルのメカニズム

キチン・サイクルを理解する上で欠かせないのが、企業家による在庫への投資です。一般的に企業家は、在庫残高が”自社が適正と考える在庫残高の水準”を下回ると在庫の数を増やし、下回ると在庫の数を減らします。こうした在庫投資の増減は、関連企業などを巻き込む形で行われるため、経済全体の拡大・収縮につながるということです。

ここで、スーパーマーケットや百貨店などの小売店を例に挙げて考えましょう。商品が売れる好況期では、販売元は大量に商品を仕入れ、品切れが発生しないよう在庫として商品を大量に保管します。しかし、景気が後退し販売状況が悪くなると、商品の仕入れを減らし、在庫の数を調整します。

基本的に、販売元が仕入れの数を増加させると商品の製造元であるメーカーの売上は増え、仕入れの数を減少させるとメーカーの売上は下がります。同時に、メーカーの売上が上がれば製造元で働く労働者の賃金は向上し、売上が下がれば賃金は低下します。

販売や製造、物流業者などに関する労働者賃金の向上・低下は、企業の需要と供給に大きな影響を与え、経済に大きな波を生み出します。つまり、キチン・サイクルが在庫循環とも呼ばれるのは、このように在庫の変動が景気の循環に大きく関わっているためということです。

景気循環を語る上で欠かせない4つの波

景気循環の基本の基として、しばしば取り挙げられるキチン・サイクル。しかし、景気循環を深く知るには、その他3種類の波について理解しなければなりません。従ってここからは、キチン・サイクルを除く、ジュグラー・クズネッツ・コンドラチェフのサイクルに関して、詳しく解説していきます。

ジュグラー・サイクル

ジュグラー・サイクル(ジュグラーの波)とは、中期的に変動・循環する景気波動を意味します。「主循環」や「ジュグラー循環」、「中期波動」などと呼称され、平均9~10年間の周期で循環するのが特徴。景気循環の周期的な反復現象を初めて実証した仏の経済学者、クレマン・ジュグラーによって提唱され、現在も経済学のさまざまなシーンでその理論が用いられています。

ジュグラー・サイクルを理解する上で重要となるのが、起業家による設備投資の変動です。企業が生産設備を増設したりシステムを更新したりする時期になると、設備の開発・提供を手掛けるメーカーの売上が一定期間増加。結果として、そこで働く労働者の賃金が上昇します。

もちろん、企業による設備投資が落ち着くと、売上が減少し労働者の賃金が下がることになります。この様に、景気変動の波が設備投資に起因することから、ジュグラー・サイクルは、「設備投資循環」とも呼ばれます。

9~10年のスパンで景気循環のサイクルが集結する理由は、設備の耐用年数や更新時期などが10年程度であること。従ってキチン・サイクルと比較し、周期が長くなっています。

クズネッツ・サイクル

クズネッツ・サイクル(クズネッツの波)とは、住宅や工場などの建築需要を軸にして、変動・循環する景気波動を意味します。キチン・ジュグラーの波と比較し、周期が20年と長いのが特徴。これは、約20年のスパンで各種建築物の建て替えが発生するためといいます。

米国では、上記の様に建築の需要や投資をベースに景気循環が発生すると考えられていますが、一部の国では、国際収支や輸出といった要素が起因しているとの考えや傾向がみられるということです。

クズネッツ・サイクルは、ソ連で誕生した米国の経済学者、サイモン・クズネッツによって提唱され、別名「建築循環」や「クズネッツ循環」などとも呼ばれています。

コンドラチェフ・サイクル

コンドラチェフ・サイクル(コンドラチェフの波)とは、技術革新によって発生する、長期周期の景気循環(景気波動)を意味します。その周期は、景気循環の4つのサイクルうち最も長く、約50年に上るとされています。旧ソ連の経済学者、コンドラチェフによって提唱され、「長期波動」や「大循環」などと呼ばれています。

コンドラチェフの波を発生させる技術革新には、蒸気機関や鉄道、自動車、原子力、航空力学、各種デジタル技術など、産業の歴史を大きく動かす技術が挙げられます。しかし、これと同時に、政治や外交、戦争(軍事)、またそれに伴う国際秩序の変更などを含むものと考える説も有力視されているようです。

最新の景気循環を巡る議論では、デジタルやバイオ技術がけん引するといった予測に加え、人工知能やロボットが第5波を引き起こすとの予測など、さまざまな学説が提唱されているといいます。

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