AIDMA(アイドマ)の法則とは?具体例やAISASとの違い、マーケティング活用法を解説

消費者は物を買うとき、購入に至るまでに決まった順序で特定の行動をとることが心理学的にわかっています。「AIDMA(アイドマ)の法則」や「AIDMAモデル」は、消費者の購買行動を心理的プロセスで表したフレームワークのひとつで、1920年代に提唱されたビジネスの基本です。消費者の行動を体系的に理解することは、現代のマーケティング活動でも役に立つでしょう。 本記事では、AIDMAの法則の基礎知識や購買行動プロセスを解説します。さらにAIDMAの法則を活用した具体例、AISASやAISCEASなど他のフレームワークとの違いについてもわかりやすく説明します。

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AIDMA(アイドマ)の法則とは?

AIDMA(アイドマ)の法則とは?

AIDMA(アイドマ)の法則とは、消費者の購買行動を心理的プロセスで表したフレームワークです。「AIDMA理論」や「AIDMAモデル」として説明されることもあります。

この法則は、1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱されました。

AIDMAの法則によると、消費者が商品(製品・サービス)を買うとき、無意識に次の流れを順に行うとされています。

▼AIDMAの法則が示す消費者の購買行動プロセス

プロセス 消費者の行動 頭文字 意味
1 認知段階 知る A Attention(注意)
2 感情段階 興味を持つ I Interest(興味関心)
3 感情段階 欲しいと感じる D Desire(欲求)
4 感情段階 記憶する M Memory(記憶)
5 行動段階 購入する A Action(行動)

AIDMAの購買行動プロセスを解説

AIDMAの購買行動プロセスを解説

次に、AIDMAの法則が示す消費者の購買行動プロセスについて、段階ごとに概要やポイントを解説します。

Attention(注意)

AIDMAの「A」は、消費者が商品について知ることを意味する「Attention(注意)」です。

消費者に商品を買ってもらうには、まずその存在を知ってもらうのが大前提です。

つまりこの段階では、商品の存在に消費者の注意を引きつけ、認知を広げるための広告活動が重要となります。

かつてはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の4大マスメディアが主な広告媒体でしたが、スマートフォンの普及によって、現在はインターネット広告が主流です。

Interest(興味関心)

AIDMAの「I」は、商品を知った直後の消費者に湧く「Interest(興味関心)」です。

この段階では、「こんな商品があるのか」、「おもしろい商品だ」といった感情が消費者に生じます。

ただし、興味関心を持ってもらえるかどうかは、最初のほんの一瞬で決まると言われています。

したがって、商品のコンセプトや、商品を買うメリットなどの情報を簡潔でわかりやすく広告に凝縮することが大切です。

また、特定のターゲット層に狙いを絞った広告を打ち出し、そのターゲットにとって特別感のある情報を印象付けて、関心を引くのも効果的です。

Desire(欲求)

AIDMAの「D」は、消費者が商品を欲しいと思う気持ちである「Desire(欲求)」です。

消費者の感情が興味関心から欲求へ変化する上では、「この商品は自分にとって本当に必要なのか」 「興味はあるけどこの価格で買って大丈夫なのか」といった不安が障壁となります。

そのため、消費者の購買意欲を引き出すだけでなく、無料トライアル体験や試供品の提供、詳細情報や商品の満足度などの共有によって不安を取り除くようなセールスが重要です。

Memory(記憶)

AIDMAの「M」は、消費者の「欲しい」という気持ちを呼び起こすための「Memory(記憶)」です。

消費者は欲求の段階になっても、その場で商品を購入するとは限りません。商品の価格や性質によっては、購入前にしっかりと検討する時間が必要なケースもあります。

また、消費者は常日頃からさまざまな商品を知ったり興味を持ったりするため、どの商品を欲しいと思っていたのか忘れてしまうものです。

そのため、過去にサイトを訪問したユーザーに再度表示させる「リターゲティング広告」などが効果的です。

Action(行動・購入)

AIDMAの「A」は、最終的に消費者が商品を購入するという「Action(行動)」です。この段階では、購入機会の提供や、保証制度の強調などによる購入の後押しが必要です。

消費者が購買意思を固めた後に重要となるのが、購買の手続きがスムーズにできる準備ができているかどうかです。

例えばスーパーのような小売店でレジが混雑していると、消費者は購入を諦める可能性があります。

また、インターネット販売などでは、購入するまでの流れを明確にしないと、「欲しいけど購入の仕方がわからない」と消費者が感じ、購入まで至らないケースも考えられます。

商品やセールス以外の観点も、消費者の購買行動に影響を与えることを意識しましょう。

事例でみるAIDMAの法則

事例でみるAIDMAの法則

では、実際の企業はAIDMAそれぞれの段階にどのようなアプローチをしているのでしょうか。

現実の成功事例をもとに、AIDMAの法則の有効活用法について理解しましょう。

【事例1】再春館製薬「ドモホルンリンクル」

株式会社再春館製薬所の「ドモホルンリンクル」は、保湿液や乳液などの基礎化粧品の人気ブランドです。

ドモホルンリンクルの商品は、主なターゲットである主婦層に向けたマーケティングを実施し、多くの売上を出すことに成功しています。

マーケティングにおける各アプローチは、以下のようにAIDMAの法則に則った形で行われています。

段階 アプローチ 消費者の行動
Attention(注意) ドモホルンリンクルのテレビCMを放映する 多くの消費者が商品の存在を知る
Interest(興味関心) 折込のチラシを直接住所に届ける 商品の存在を知るターゲット層が興味を持つ
Desire(欲求) 無料サンプルを提供する ターゲット層が試用し、気に入った場合は欲しいと感じる
Memory(記憶) ダイレクトメールで無料サンプルの利用者向けキャンペーン情報を届ける お得な時期に買おうと記憶する
Action(行動) インターネットで注文できる仕組みを作る 不便さを感じることなく自然と購入する

【事例2】日本コカ·コーラ株式会社「檸檬堂」

日本コカ・コーラ株式会社による初のアルコール飲料「檸檬堂」は、2018年発売でありながらすでに市場への定着を見せる人気ブランドです。

既存ブランドとの差別化や特徴的なエリアマーケティングによって話題を集め、現在の人気にいたっています。

檸檬堂のマーケティングにおけるアプローチは、以下のようにAIDMAの法則に当てはめられます。

段階 アプローチ 消費者の行動
Attention(注意) 居酒屋の店舗名のようなネーミング、「藍染めの前掛け」を模した特徴的なデザインで差別化する 他の缶チューハイとは異なる雰囲気を感じる
Interest(興味関心) 塩レモンや鬼レモンなど多種類展開する  「おいしそう」だと関心を持つ
Desire(欲求) 九州限定で発売する 限定的な先行提供とSNSでの評判によって購買意欲が高まる
Memory(記憶) テレビCMを全国展開する 購入しようと記憶する
Action(行動) 全国展開し、檸檬堂を無料提供する期間限定店舗を開設する 最寄りの店舗での購入や、期間限定店舗での試飲をする

このように、AIDMAの各段階に合った的確なアプローチを仕掛けることが重要です。

AIDMAの法則以外のフレームワーク

AIDMAの法則以外のフレームワーク

近年はインターネットやSNSの普及により、情報環境が著しく変化しています。
AIDMAは100年も前のフレームワークであり、消費者の情報取得の行動やパターンも変化しているため、AIDMAはもう古いのではないか、と言われることもあります。

ここでは、新しいものを含む8つのフレームワークと、AIDMAとの違いについて見ていきましょう。

AIDA(アイダ)の法則

AIDA(アイダ)の法則とは、アメリカのセント・エルモ・ルイスが提唱した理論です。最も古典的なフレームワークであり、AIDMAの法則を始めとした現在の購買行動モデルの原型となっています。

AIDAにおける消費行動は、「Attention(注意)→Interest(興味関心)→Desire(欲求)→Action(購入)」の4つのプロセスを経て行われており、AIDMAの法則とは「Memory(記憶)」の段階の有無で異なります。

したがって、比較的短時間で「Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)」のプロセスをたどり購入に至る、小売店や飲食店などで活用されています。

▼AIDAの法則が示す消費者の購買行動プロセス

プロセス 消費者の行動 頭文字 意味
1 認知段階 知る A Attention(注意)
2 感情段階 興味を持つ I Interest(興味関心)
3 感情段階 欲しいと感じる D Desire(欲求)
4 行動段階 購入する A Action(行動)

AISAS(アイサス)の法則

「AISAS(アイサス)」は、AIDMAの概念にインターネット普及後の消費行動を当てはめた比較的新しいフレームワークです。

AISASにおける消費行動は、「Attention(注意)→Interest(興味関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)」の5つのプロセスを経て行われます。

商品を購入する前にPCやスマートフォンで調べる「検索」行為と、購入した商品をSNSで「共有」する行為の重視が特徴です。

購入後の行動や消費者の自発的な行動をプロセスに含む点で、AIDMAの法則とは異なります。

▼AISASの法則が示す消費者の購買行動プロセス

プロセス 消費者の行動 頭文字 意味
1 認知段階 知る A Attention(注意)
2 感情段階 興味を持つ I Interest(興味関心)
3 行動段階 調べて比較する S Search(検索)
4 行動段階 購入する A Action(行動)
5 行動段階 評価を共有する S Share(共有)

AISCEAS(アイセアス/アイシーズ)の法則

「AISCEAS(アイセアス)」は、AISASに「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」の2つのプロセスを補足したフレームワークです。

消費者は商品の購入(Action)前にインターネットを通じて情報収集する傾向があります。

メーカーの公式サイトや通販サイトでの商品レビュー、SNSでの口コミなどの情報を比較・検討してから、実際に商品を購入する流れをひとつのプロセスとして捉えている点が特徴です。

AISASと同様に、AIDMAの法則とは消費者の能動性が重視されている点で異なり、さらに慎重な購入プロセスが考慮されています。

AIDCAS(アイドカス)の法則

「AIDCAS(アイドカス)」は、「Attention(注意)→Interest(興味関心)→Desire(欲求)→Conviction(確信)→Action(行動)→Satisfaction(共有)」の6つのプロセスを踏む購買行動のフレームワークです。

Conviction(確信)は、「この商品は信用できる」 「買うメリットがあるに違いない」といった消費者の期待、Satisfaction(満足)は、「買って正解だった」 「期待は裏切られなかった」といった購入後の満足感です。

AIDCASでは、購買だけではなく、消費者の満足感を高めてリピーターを増やすことまでを考えたマーケティングが重要となります。

▼AIDCASの法則が示す消費者の購買行動プロセス

プロセス 消費者の行動 頭文字 意味
1 認知段階 知る A Attention(注意)
2 感情段階 興味を持つ I Interest(興味関心)
3 感情段階 欲しいと感じる D Desire(欲求)
4 感情段階 必要だと確信する C Conviction(確信)
5 行動段階 購入する A Action(行動)
6 行動段階 評価する S Satisfaction(共有)

 

AMTUL(アムツール)の法則

「AMTUL(アムツール)」とは、消費者の心理・行動を長期的に考慮したフレームワークです。

AMTULにおける購買行動は「Awareness(認知)→Memory(記憶)→Trial(試用)→Usage(本格的使用)→Loyalty(愛用)」の5つのプロセスを経て行われます。

リピート購入や継続的な関係構築に着目している点でAIDMAの法則と異なります。

▼AMTULの法則が示す消費者の購買行動プロセス

プロセス 消費者の行動 頭文字 意味
1 認知段階 知る A Awareness(認知)
2 認知段階 記憶する M Memory(記憶)
3 感情段階 試用する T Trial(試用)
4 行動段階 本格的に使用する U Usage(本格的使用)
5 行動段階 愛用する L Loyalty(愛用)

VISAS(ヴィサス)の法則

「VISAS(ヴィサス)」の法則は、SNSに特化したフレームワークです。

VISASのプロセスは、「Viral(口コミ)⇒Influence(影響)⇒Sympathy(共感) ⇒Action(行動)⇒Share(共有)」の5つから成り立っています。

AIDMAやAISASと違い、自らの欲求によって行動を起こすのではなく、他者からの口コミが購買行動に大きな影響を与える点が特徴です。

偶発的に消費者が目にする場合もあるため、マーケティング戦略では、SNSでどのような情報を発信するかが重要になります。

▼VISASの法則が示す消費者の購買行動プロセス

プロセス 消費者の行動 頭文字 意味
1 認知段階 口コミによって知る V Viral(口コミ)
2 感情段階 口コミの影響を受ける I Infuluence(影響)
3 感情段階 共感する S Sympathy(共感)
4 行動段階 購入する A Action(行動)
5 行動段階 共有する S Share(共有)

DECAX(デキャックス)の法則

「DECAX(デキャックス」は、メルマガやオウンドメディアといったコンテンツマーケティングの中での消費者の行動を表すフレームワークです。

DECAXのプロセスは、「Discover(発見)⇒Engage(関係構築)⇒Check(確認)⇒Action(行動)-Experience(体験・共有)」の5つから成り立っています。

AIDMAを始めとする従来のフレームワークは売り手が主体となり、買い手となる見込み客のAttention(注意)を引くのがスタート地点です。

しかしDECAXの場合、見込み客が自発的に自社や商品の存在・魅力をDiscover(発見)するところから始まります。

そのため、インターネット検索で上位に表示されるようSEO対策や、コンテンツの品質を高めるといった工夫が重要です。

▼DECAXが示す消費者の購買行動プロセス

プロセス 消費者の行動 頭文字 意味
1 認知段階 検索して発見する D Discovery(発見)
2 感情段階 クリックや保存をする E Engage(関係構築)
3 行動段階 詳細や信頼性を調べる C Check(確認)
4 行動段階 購入する A Action(行動)
5 行動段階 商品を体験し、共有する X eXperience(体験・共有)

ULSSAS(ウルサス)の法則

「ULSSAS(ウルサス)」とはUGC(ユーザー生成コンテンツ)に着目した購買行動のフレームワークです。株式会社ホットリンクによって2019年に提唱されました。

「UGC(ユーザー生成コンテンツによる認知)→Like(SNSの「いいね!」)→Search1(SNSでの検索)→Search2(検索エンジンでの検索)→Action(行動)→Spread(拡散)」という6つのフェーズから成り立っています。

消費者のSNS利用が前提とされている点でAIDMAとは異なり、検索のプロセスがSNSと検索エンジンとで2段階に分かれている点が特徴的です。

RsEsPs(レップス)モデル

RsEsPs(レップス)は「Recognition(認識)、Experience(体験)、Purchase(購買)、Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)」の4つのフェーズで構成されたフレームワークです。日本プロモーショナル・マーケティング協会によって2019年に提唱されました。

日常的にSNSで情報発信をする消費者行動を背景に、認識→体験→購入という購買体験の各フェーズで、「Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)」を想定している点が特徴です。

また、商品やサービスを購入する前に体験するフェーズが想定されている点でもAIDMAとは異なります。

ASICA(アシカ)

「ASICA(アシカ)」とは、BtoBにおける購買行動のフレームワークです。

ASICAにおける購買行動は、「Assignment(課題)→Solution(解決)→Inspection(検証)→Consent(承認)→Action(行動)」の5つのプロセスを経て行われ、企業の課題を解決する商品・サービスを提案し、納得させるアプローチが重要となります。

消費者個人の心理に着目したAIDMAとは異なり、ASICAでは組織の合理的な意思決定を重視する必要がある点が特徴的です。

時代に適したフレームワークをマーケティングに活用しよう

AIDMAとは、消費者の購買決定までのプロセスを示すフレームワークの一つです。
マーケティング活動をするうえで、こうしたモデルから消費者行動の法則を理解し、適切なアプローチを行うことは重要と言えます。

インターネットが普及した現代において、100年前のモデルであることから「AIDMAの法則は古い」という意見もあります。しかし、人間の購買心理の本質を得た普遍的な考えであるのは間違いありません。

また、近年ではマーケティングのアプローチが変化し、ULSSASやVISASのように進化したフレームワークも増加しています。マスメディアと同様に、WebコンテンツやSNSを用いたアプローチが重要となっているのです。

現代でマーケティングを行ううえでは、こうした情報を常にキャッチアップし、時代に適応した消費者の購買行動のフレームワークを積極的に活用していきましょう。

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