対談ウェビナー②「役員のチームビルディング」 株式会社スコラ・コンサルト 柴田昌治プロセスデザイナー代表

日本企業の変革を阻んでいるのは何か。大企業が抱える病理とは…。株式会社スコラ・コンサルト創業者の柴田昌治氏と、フロンティア・マネジメント株式会社大西正一郎代表の対談ウェビナー、第2回目は変革のための「役員のチームビルディング」について語り合います。

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役員のチームビルディングはなぜ必要なのか?

役員のチームビルディングはなぜ必要なのか?

大西:対談ウェビナー第2回目は、役員のチームビルディングというテーマでお話をさせていただきます。

環境変化が著しい中で、経営陣が一丸となって会社を変えていくことが求められる時代です。そこで重要となるのが、役員のチームビルディングです。

日本の大手企業はどこも、ビジネスモデルの変革を行う必要性を感じていると思います。

例えば、日本の自動車産業はEV化の潮流の中、どうやってビジネスモデルを変えていくのか、という検討をしないといけない。

そのためには現在の役員の方々が、一丸となって、経営課題や変革を進めて行く、ということがとても大切なわけですが、そこに大きな課題を感じています。

表面上は仲がいい役員

表面上は仲がいい役員

大西:日本企業の役員チームビルディングについて、何が課題だと思われますか。

柴田:一番大きな問題は、役員同士が「相互不可侵条約」を結んでいることだと思います。

表面上は、非常にお互い仲良くしているのですが、話しにくいことを気兼ねなく話せているわけではないんです。お互いに本心で何を考えているか、ほぼ知らないといってもいいと思います。

ここに大きな問題があると考えています。

役員がバラバラでは、「面従腹背」を生む

大西:経営改革において、役員のチームビルディングはどうして最初に必要になるのですか?

柴田:役員がお互い「バラバラ」だというのは、「下」からはよく見えているわけなんです。

役員が「私たちは仲良くやってるよ」というふうに言っていても、社員は役員のことを「でも、肝心な話はできてないでしょ」と、みんな思っているわけです。

仕事をトップダウンで「とにかくやれ」と降ろしていくけれど、(下は)納得しないままに「面従腹背」が横行しているというのが、中堅規模以上の企業では圧倒的に多いです。

面従腹背でもビジネスモデルが安定していると、仕事はそれなりに回ります。

でも、転換や変革をしなければならない時は、それでは全く機能しなくなるのです。

ほとんどの企業変革が、中途半端な結果になっているというのは、役員のチームビルディングができていないからだと私は確信しています。

逆に言えば、経営トップがとにかくチームになるということが、変革成功の必須条件となります。

役員が本音を語りあうためには

表面上は仲がいい役員

大西:役員が本音を語りあうのは、簡単じゃないと思うんです。どのようなことをして本音を引き出していますか?

柴田:心理的な安心感が大事です。お互いに警戒心を持ちながら業務を進めている状況を変えないといけません。

大西:役員合宿では、自分の仕事への価値観や思いを本音で話すのが、非常に大事なように思います。でも、「話してください」といって、役員の方は話すものですか?

柴田:それではたぶん話さないですね。

我々がまず行うことは、トップが本当に思ってらっしゃることを徹底的に聞き出して、それを整理することです。

トップは色々なところで、自分の想いを語っていらっしゃいます。

でも、自分が本当に何を考えているのか、何をしていきたいのかを整理できている方は割合に少ないんです。
それを徹底的に整理することからスタートします。

そして、整理したものを前提にしながら、役員一人一人にインタビューをしていく。最初に整理され、言語化されたトップの問題意識を前に置いて目に見える状態にしながら聞き出すことが非常に大事なところですね。

そうすると、結構皆さん自分が思ったことをしゃべってくれるものです。

大事なジブン語り

合宿ではプライベートなことや、仕事に対する想いなど、「ジブン語り」をやってもらいます。単なる経歴ではなく「経験」を話してもらいます。つまり、感情の動きとか、気づきとか、学びを語ってもらいます。

最初の人が、自分をさらけ出すと、日本人は非常に面白いもので、次の人も同じようにやってくれる可能性が高くなります。

仕事上の悩みとか、本当に思っていることを言い合った後の議論は、クオリティが良い方に変わってきます。

「強い社長」の場合

「強い社長」の場合

大西:過去私が接したケースでは、パワーが強い社長さんがいる役員合宿だと、みんな本音で話せない。社長さんがいない場だと、みんな話せるということがありました。こういうケースで役員合宿をやる際、配慮されることはありますか?

柴田:社長や人事権を持っている上の方は、参加を遠慮願うこともあります。特に「ジブン語り」は社長のいるところではやりたくないという人が多いですね。

全社的な議論をするために

「強い社長」の場合

大西:役員は執行部門の利益代表として行動している方が比較的多いです。全社的な視点で話せるようになるためには、どんなことに配慮したらいいですか

柴田:正直それは非常に難しいテーマですね。

一回合宿やったら、全社的な視点が持てるかというと、そういうことではないと思います。

ある会社で役員合宿を行ったときのことですが、その懇親会の時に、対立しているはずの事業部長同士がふたりで喋っていたことがあります。二人が対立しているのは、全役員が知っていますので、驚きの目で見ているわけですよ。

合宿を通じてこういう変化が起こることが大事です。

この会社は、ある事業部に大きな問題を抱えていて、合宿でいかに現状がしんどいか、本音で話していただきました。参加した役員の方は、後になって「ちょっと前までならいかに隠すかしか考えてなかった。みんなでそういう話をするようになったから、役員が連携して全社的にどのように進むのかを考えることができるようになったんだ」と言っていました。

役員が一枚岩でないケース

役員が一枚岩でないケース

柴田:大西さんが関わっていらっしゃる企業で、経営陣が一枚岩でないために、会社の利益が損なわれているようなケースはありますか。

大西:はい、あります。

二つぐらいのケースがありまして、ひとつ目は、例えば小売業で仕入れる方からすれば「利益率がいいもの」を仕入れたい。売る方からすれば「お客さまに売りやすいもの」を調達して欲しいというようなケースです。

お客さまが欲しい人気の商品は、粗利率が低かったりするんです。仕入れ側からすると、「いやいやそんなのじゃなくて、粗利率が高いものを売ってくれよ」という話になる。

つまり、どういう商品戦略をとるのか、立場によって異なるということです。

ふたつ目は役員の出自が違うケースですね。

例えば投資ファンドから来ている役員と、プロパーの役員とで利益が対立するケースがありました。

企業価値を上げるため、という目標は同じだけど、エグジットするときの方向性が違うというケースです。

また、親子上場の会社で、親会社出身の役員と、子会社のプロパーの役員との利害の違いもありました。

柴田:結構それは難しいテーマですが、実際どういうふうに切り抜けられていますか?

大西:利害の不一致はどうしてもあります

例えば親会社と子会社の例でいえば「短期的な利益を出せよ」っていうことを親会社が求めると、これは連結のためですね。投資ファンドさんとかに比較的多いと思います。

それに対しプロパーの社員からすると「中長期的な投資をしたい」というケースです。

例えば産業再生機構時代に当社共同代表の松岡とともに経営陣として再建を担当したダイエーには、プロパーの方がいて、やっぱり利害は全く違うわけですよね。

そこでも企業価値をどう上げるかっていうことを、きちんと議論する。もしくは交流する中で、利害対立を回避していきました。

柴田:経験や個人の力量で、何とかやってこられたという話ですね。個人の能力だけに頼らず、一つの体系的なやり方を確立していけるようにすることが大切なことだと思います。

フロンティアさんと一緒に組むことで、そのあたりを整理し、成果を提供しやすくできるのではないかと思っています。

大西:大事だと思うのは、役員合宿が一時の楽しい「イベント」で終わってはならないと言うことです。

合宿で一時的に打ち解けるだけではなく、半年、一年後も同じように話せているように、継続しなくてはいけないと思うんです。

柴田:一般的な役員合宿では、「2日目はゴルフで、飲み会を長くやる」というような懇親の場になるのが実際には多いと思います。

我々は懇親が目的ではなく、真のチームビルディングを行うために、ものすごく綿密な準備を行います。そうすることで成功確率はかなり上がると考えていただいていいと思います。

コストはかかりますが、費用対効果は非常に良いと思っています。役員がお互いにきちっと本当の気持ちを話すようになっているかどうかを、社員はよく見ているものなんです。役員が本音で向き合っている姿が見えると社員の動きが変わり、組織のパフォーマンスが上がります。

これは非常に大事なことだと思います。

視聴者からの質問

視聴者からの質問

:「役員層に期待せずに、企業変革を実現することはできないのでしょうか?」「役員合宿をやる意義に疑問を感じます」

柴田:「役員はチームになんかならないよ」と思ってらっしゃる方は、結構多いのが実態です。

ある大組織のグループ会社で起こったことですが、役員のチームビルティングを成功させて、その後しばらくして社長の交代が発表されたんですね。

当時の社長が新しい社長とともに私のところにいらっしゃって、「私のミッションは今できている役員のチームを、新しい社長に引き継ぐことだ」というふうにおっしゃいました。

実はその方は、役員合宿を行う前は、会うたびに自社の役員陣に対する愚痴をおっしゃっていたんです。それがここまで変わるんですね。

役員はチームにならないと思っておられるかも知れませんが、「実はそうではないんだ」という話だと思います。

合宿をイベントで終わらせないために

合宿をイベントで終わらせないために

進行役:役員合宿をイベントで終わらせないためはどういうことをやるのでしょうか?。また、具体的にはどのような成果が出ていますか?

柴田:合宿を1回行って、「よかったね」で終わってしまうのでは、本当の成果は上がらないですね。濃い中身の合宿の後は、1~2ヶ月に1回、半日でいいからミーティングをずっとやっていくんです。

「オフサイトミーティング」というのですが、最初は自由に自分の状況や、抱えている経営課題などを話します。

それから意思決定のルールを変えます。日本の一般的な企業では「合議制」で決めますが、それではスピードが遅いんです。

本当は決めるべき人が決めたら、それをみんな徹底して実行していくという体制でないといけないわけです。

半年ぐらい経ってから、各企業の課題に応じた情報や知識を持ってらっしゃる専門家の方を招いて勉強会をします。

そういうことで、どんどん議論のクオリティを上げていくということをやるわけです。

こうしたことはチームビルディングができたベースの上でやっていくことが重要であると考えています。

合宿をイベントで終わらせないために

大西:大事なのは継続的にやることでしょう。継続的にやっていくうちに打ち解けた状態を保つという意味では非常に重要だと思います。

先ほどの「役員陣には期待していない」、という趣旨の質問への回答ですが、そうはいっても社長一人じゃなにもできないですよね。

経営陣も今の株主から選ばれている以上、機動的にチームとなって動く責務があるわけです。役員のチームビルディングにコストをかけることはマストだと思います。

スコラ社「チームビルディング」→FMI「企業再生」のリレー方式

スコラ社「チームビルディング」→FMI「企業再生」のリレー方式

進行役:収録が始まる前のお二人の雑談で、スコラ・コンサルトで役員のチームビルディングをやった後、フロンティア・マネジメントにバトンタッチして企業変革を成功させた経験をお話しされていました。その成功要件や両社が連携することで起こるシナジーについて教えていただけますか。

柴田:フロンティアさんを使いこなすのは、通常の企業にとってはそれほど簡単な話ではないです。知識と経験と考える力が、自分たち(つまり、クライアント企業側)になければ一緒にお仕事をしても、本当の意味で変革は成功しないと思うんですね。

実際にやったケースでいうと、スコラの支援を通じて、企業側のメンバーがフロンティア・マネジメントのような高度な経営技術者集団を使いこなせるレベルになっていた、ということが言えると思います。

そういうことがなければ、多分「なんかコンサルに入ってもらったけれども、やっぱり上手くいかなかったわ」、みたいな話になるところが、そうはならなかった。

大西:そうですね、私どもの立場からすると、我々の仕事って何らかの経営課題が顕在化してそれを解決するために仕事をするというパターンが多いです。

先にスコラさんが役員チームビルディングに入っている中で、きちんとした形で経営課題を顕在化されたのが大きいと思います。

経営課題について役員がチームになって議論する中で、課題を浮き彫りにできたこと。その課題の具体的な解決としてリレーで言えばバトンをスコラさんからフロンティアに渡されたというふうに、連携できたのが良かったのかなと思います。

柴田:得意分野をお互いにリレーしたっていう、そんな感じですね。

大西:当社フロンティア・マネジメントはスコラ・コンサルトさんと提携したことで、次世代の経営人材の育成、現経営陣のチームビルディングにより力を入れることができるようになりました。これらを通じて、日本企業の活性化や変革を行い、企業価値向上の総合的なコンサルティングを実現できるのではないかと思っています。

ぜひスコラさんと提携を成功させたいと思っております。

柴田:実務に強いフロンティア・マネジメントさんと一緒に仕事をさせていただくことに我々は非常に大きな意味を見出しています。この提携が日本に大きな影響を与えられる状況を作っていきたいと、本気で思っております。

第2回目のまとめ

  • 多くの日本の企業が、ビジネスモデルの転換を求められている
  • 役員層が企業変革のボトルネックになっているパターンが意外と多い
  • 周到なアプローチをきちんと行えば役員層を「チーム」にすることが可能である
  • 役員がチームビルドできた場合の効果は、十分投資に見合うものである

▼ウェビナー動画

▼前回の記事
対談ウェビナー①「次世代経営者の人材育成」
新「両利きの経営」のススメ

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