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業務管理プロセスの手法、BPMとは?言葉の意味から推進ステップ、成功ノウハウまでを解説
BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)は、業務プロセスを可視化し、PDCAサイクルを回しながら業務の成果を上げていく業務管理手法の1つです。 1980年代に誕生し、90年代の隆盛期を経て、今日、さまざまなビジネス現場に浸透しています。 そこで本記事では、BPMの言葉の意味や目的、推進ステップについて説明していきます。BPMを成功させるためのコツについても説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
BPMとは?言葉の定義を説明
公益社団法人企業情報化協会は、BPMについて、「手順、役割分担、ルールで構成される業務のプロセスを、役割分担している関係者で共有し、日々の業務の成果を向上させる経営手法」と定義しています(注1)。
BPMは、具体的に4つのプロセスに分類されるPDCAサイクルで構成されます。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Act(改善)
BPMは、以上のPDCAサイクルを連綿と繰り返す中で、業務を改善させていく業務管理プロセスの手法です。
BPMの取り組みを支援するツールとして、業務プロセスの実行、管理を支援するBPMシステムがあるとされています。
ITにおけるBPMの目的
業務の遂行がWeb上で完結するIT領域は、業務を可視化しやすいことから、BPMとの親和性が高いと言われています。
これにより、NEC(日本電気株式会社)や日本オラクル株式会社など、名だたるIT企業がBPMを推進させるソリューションを導入しています。
BPMはIT業務においてどのような目的があるのでしょうか。
業務プロセスの課題点を解決する
BPMの第1の目的は、業務プロセスの進行上で発生する課題の解消です。
IT現場では、権限を持った人に限定される業務に、権限を持たない人が関わっていたり、エクセルの入力作業などシステムで自動化できる作業を人力によって行っていたりと、業務プロセスの課題が生じるケースが多々あります。
これらの課題点は、利益の機会損失や、ミスの発生といった二次的なリスクをもたらします。
しかし、業務プロセスを精査したり、業務プロセスのシステム化を進めたりすることで、リスクの回避と課題点の解消が可能です。
業務の可視化
BPMは、業務の可視化を促すことが目的です。
その背景には、特定の業務のやり方が担当者にしかわからない、いわゆる「業務の属人化」が、企業の現場で起きている問題があります。
業務の属人化が起きると、仕事の代替が難しい上に、業務の効率化に時間がかかります。
こうした事態を防ぐために、業務の可視化を図らねばなりません。
この業務の可視化に役に立つのが、BPMです。BPMの実行により、現状の業務プロセスの流れをはじめ、業務にかかる工数や人数が把握できます。
その結果、業務改善が実現しやすくなるでしょう。
世界標準の業務プロセスを確立する
主にグローバル企業に当てはまりますが、BPMは、世界標準の業務プロセスの確立を図るという狙いがあります。
IT業界では株式取得により、自社の事業や組織編成のグローバル化が急速に進むといった事例があります。
企業は、グローバル化により従業員が多国籍化し、個々のバックグランドが異なっても、業務を一律に理解できる業務プロセスの確立を求められます。
こうした事態に耐えられるよう、企業がBPMを実行することが有効でしょう。
企業が外資系企業とM&A(統合&合併)を行うケースも同様です。
BPMによって事前に業務プロセスが可視化され多言語化が進めば、海外市場での事業促進にもつながります。
BPMの推進ステップ
4つのPDCAサイクルで構成されるBPMは、細分化すると11の推進ステップに分類されます(注2)。
いずれの推進ステップも、BPMを円滑に進める上で欠かせない要素ですが、本記事では、より重要だとされる部分に絞って解説します。
改革テーマの抽出
業務プロセスの機能やサービス品質を高めるため、改革テーマの抽出(ピックアップ)が必要です。
BPMは、膨大かつ細かな行程の積み重ねです。すべてのステップを一度に改善することは大きな労力を要します。
改革テーマを抽出する際、販売やユーザー教育、保守、コールセンターなど、すべての担当部門を横断する業務プロセスが適切に運用される理想状態を構想しなければなりません(注2)。
業務の理想状態を想定しなければ、業務プロセスの不具合をうまく抽出できないためです。
また、事業のプロセス全体がどのように変化するかを考える「プロセス改革モデル」を十分に描き切った上で、改革テーマの所在を確認することが大切になります。
再設計
改革テーマを抽出した後、現状業務の分析から課題と解決手段を洗い出します。
それが、プロセス改革の成果目標を実現するための業務プロセスの再設計です。
再設計では第一に、業務プロセスで求められる事項を確認します。
何を改善し、どのように成果目標を達成するのかといった、設計対象の整理を行ないます。
続いて、業務プロセスの設計を担う実行者の役割を、組織の権限や実行権限、実行スキルの観点から類別します。
最後は、業務プロセスの再設計の要求事項や役割をもとに、新たなプロセス図を作成し、再設計のステップを完了させます。
実装と配備
再設計した業務プロセスの最終設計案は、コンピューター上で稼働して動くモデルとして実装することが不可欠です。
実装と配備の取り入れることで、再設計した業務プロセスが現場業務に実行可能な状態になります。
この推進ステップでは、システム開発を順序に沿って実行していきます。
プロトタイプ版の開発に始まり、システム・モジュールの開発・統合、業務マニュアルの文書化などの業務移行の準備を行った後、オペレーション演習と業務移行の流れが基本です。
実績の評価と監視
再設計した業務プロセスを実りあるものにするためには、実績の評価と監視が大切です。
実績の評価は、改革サイクルを1回または数回実施した段階で行います。
具体的な評価は、ビジネス・プロセスがプロジェクトそのものの費用対効果に見合うものであったかなど、経営改革への影響度とそのポテンシャルを精査します。
一定の実績が出た後に、新たな業務プロセスが業務効果を発揮しているか、問題が起きていないか、継続的に監視することもBPMの重要な要素です。
BPMを成功させるためには
BPMは、さまざまな推進ステップで成り立っています。推進ステップが多岐にわたることから、プロセス改革の成果目標を達成するという当初の目的を見失う可能性も考えられます。
また、BPMの取り組みそのものが、必ずしも全社的な理解を得られる訳ではありません。
これらの課題を踏まえ、ここからは、BPMを成功へ導くためのノウハウを紹介します。
目的を完遂する
BPMの実行によって事業の目的を叶えるには、業務プロセスの再設計に際して設定した経営上、業務上の目的を完遂することがマストです。
詰まる所、BPMはあくまでも、経営戦略の1つとして実行する業務プロセスの改善手法にすぎません。
業務経費の削減や、生産性の向上といった経営戦略上の目的を、プロジェクトメンバーや現場のスタッフの間で共有することが大切です。
目的の共有によって、BPMの導入そのものが目的になるという事態を防げます。
経営陣の支援を得る
BPMを導入してプロセス改革の成果目標を達成するためには、BPMを推進するチームの存在に加え、経営トップの理解と支援が欠かせません。
日本BPM協会による業務改革実態調査では、BPMの導入を成功させる要因として、回答企業の33.9%がBPMを推進するチームの存在を挙げたほか、同じく回答企業の32.3%が経営トップの理解と支援が必要だと答えています(注3)。
この理由について、横川省三理事・事務局長は「BPMは、いざ実行する際に、意思決定できる体制がないと、単純な効率化に留まってしまう。経営トップの参画は必須だ」と話しています。
プロジェクトに優先順位をつける
BPMは、実行時に意識するポイントとして、プロジェクトに優先順位をつけることが挙げられます。
すべての業務を対象にBPMを実行することは、リソースが限られる企業活動において、現実的ではないからです。
BPMは、業務プロセスを推進する際に、より大きなボトルネックとなっている業務プロセスから優先的に取り組む必要があります。
優先順位をつけずにBPMを進めると、モデリングの質に大きな差が生じ、全体の戦略を見失うという問題が起きる可能性があります。
その結果、BPMの成果が十分に業務プロセスに反映されず、現場のモチベーション低下を招くことになるでしょう。
BPMを活用し業務プロセスの効率化を
BPMは、業務プロセスの課題点を解決したり業務の可視化を促したりする業務プロセスの管理手法です。
成功させるためには、目的を完遂することや、経営陣の支援を得ることが重要だといえるでしょう。
ただ、業務プロセスは企業や業種によって異なるため、BPMを現場に導入し、成功させるのは一筋縄にはいきません。
継続した情報収集や改善活動に取り組む必要があるでしょう。
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<参考>
注1:公益社団法人企業情報化協会:BPMとは
注2:日本BPM協会:BPM推進のステップとキーポイント
注3:日本ビジネスプロセスマネジメント協会:AI・RPAの成否は何で決まる?業務改革手法としてのBPMの真価
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