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注目される「オフショアリング」とは?種類やメリット・デメリットについて
グローバリゼーションに伴い、ビジネスシーンで注目されることが多くなった「オフショアリング」。この記事では、その定義や注目される背景、メリットなどに言及していきます。また、オフショア開発に伴うデメリットや、さまざまな課題についても分かりやすく説明しています。
オフショアリングとは
オフショアリング(Offshoring)とは、ある国を拠点に展開している営利事業や、それに伴う業務の一部を、他の国に移管したり委託したりすることです。事業を推進するに当たり、有利になる税制や人件費、人材の確保など、営利的な観点から実施されるケースが多くみられます。また、これらを目的として、国境を超えた事業開発を行うことを「オフショア開発」と呼びます。
オフショアリングに類似するビジネス用語として「アウトソーシング」が挙げられますが、これはあくまで、事業や業務の一部を”国内外を問わず”社外に委託すること。一方、オフショリングでは、事業や業務の一部を”海外”に移管・委託することを意味します。
オフショアリングの歴史や注目される背景
オフショアリングが進む背景には、グローバル経済の発展やテクノロジーの進化などが挙げられます。
グローバリゼーションが進む以前、企業は国内で商品やサービスを作り、国内の消費者に向けて販売することが一般的でした。しかし、冷戦の集結後、90年代頭頃から資本主義が世界中で拡大し、多くの国と国の間で貿易が盛んになりました。また、人や物、情報などが国境を超えて行き交うようになり、多くの多国籍企業が登場。国内のみならず、海外に拠点を設ける企業が爆発的に増加したのです。
商品やサービスの海外展開などを狙い、企業が国境を超えてさまざまな国に進出した結果、これまで国内で完結させていた生産業務の一部を海外に移管する動きが広まりました。それと同時に、国内で完結していたサプライチェーンやロジスティクスが海外にも拡大。販売先や流通経路、調達方法などが複雑になりました。
このように、グローバリゼーションが進む最中、登場してきたのが正にオフショアリングの考えです。コスト削減を目的として、企業はより労働コストの低い国に現地法人などを設立。そこで生産体制を築き、各国に輸出する方法が注目され始めたのです。また、労働コストの低い国で生産した商品を海外で販売するだけではなく、それらを”逆輸入”し自国内で販売するビジネスモデルにも視線が注がれました。
オフショアリングが注目される背景は、なにもグローバリゼーションに限ったことではありません。テクノロジーの進化もオフショアリングが進む背景の一つとされています。インターネットやコミュニケーションツールの発展により、国内拠点と海外拠点のコミュニケーションが容易に。また、ビジネスを管理するためのさまざまなシステムが開発され、各拠点の稼働状況などをリアルタイムで把握することが可能になりました。
オフショアリングの種類
オフショアリングの種類は大きく分けて二つ。一つは、「海外にある自社以外の企業に、業務を委託すること」です。この方法は、業務を自社で管理するのではなく、海外の他の企業に全てを任せます。人材を新たに確保したり設備を作ったりする必要はないので、初期投資などのコストを期待することが可能です。しかし、生産や人材の管理体制の改善などにあまりコミットすることができないといったデメリットも存在します。
オフショア開発のもう一つの方法は「自社の現地法人を設立すること」です。このケースは、子会社またはグループ会社としての位置づけで会社を運営することになるので、企業が業務に対して責任を持ち、運営を進めなければなりません。もちろん、場所や人材の確保、運営体制など全てに対してコミットする必要があるためコストが掛かります。しかし、生産や人材の管理体制に対して、企業がある程度コントロールすることが可能になります。
オフショアリングがもたらすメリット
ここから、オフショリングが企業にもたらすメリットについてそれぞれ解説していきます。
人件費のコスト削減
企業がオフショアリングを行う最大のメリットが、人件費のコスト削減です。一つの商品を生産するに当たって掛かる人件費は、先進国と発展途上国では大きな差があります。したがって、労働コストが低い国に生産体制を移管することで、企業は多くの人権費を削減することが可能です。
企業運営に有利な税制
ビジネスに関連する税制度は国により異なるため、自国よりも他国で生産した方が企業にとって大きなメリットになるケースがあります。その代表例が法人税。国によっては、税率が極めて低く、また0%で設定されているケースがあり、企業はビジネスに掛かる税金の支払いを抑制することが可能です。
人材の確保
オフショアリングのメリットは、なにもコストの削減に限りません。例えば、人口や労働生産人口が現象傾向にある日本では、大量に人材を確保することが難しくなっています。人口爆発が続く発展途上国に拠点を設けることによって、大量の人材確保が容易に。また、自国では確保できない高度なスキルや専門的な知識を持った人材を、獲得することも可能なるでしょう。
“ビジネスに有利”な法律
生産の営みなどを縛る法律については、自国のものではなく海外のものが適用されるため、生産を行うに当たってそれらが有利に働くケースがみられます。自国よりも労働基準が低い国では、その分、労働時間や生産量を上げることが可能になるかもしれません。また、福利厚生や労働環境の整備などに対して、大きな力や目を注ぐ必要がなくなるでしょう。しかし、人道・人権の観点においてさまざまな問題が生じる可能性があるので、慎重に考えなければなりません。
デメリット
同時に、オフショアリングにもさまざまなデメリットが存在します。
技術やノウハウの流出
事業やそれに伴う業務の一部を、他の国に移管したり委託したりするため、自社の技術やノウハウが海外に流出する恐れがあります。
文化の違いによる齟齬
人種や言語、価値観などが異なるため、ビジネスを進める上でさまざま齟齬が生じる可能性を孕んでいます。納期などに対する考えが著しく異なり、期限内に生産や納品を完了できないケースがしばしばみられます。また、言語が異なることで、コミュニケーションに対して今まで以上に注意を払わなければなりません。
雇用問題
その国の法律に縛られるため、オフショア開発先では一度問題が発生すると、解決することが困難になります。特に、オフショアリングを巡る雇用問題は近年大きな課題となっています。
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オフショアリングに関する理解は深まりましたでしょうか。グローバリゼーションの進化によって、ビジネスシーンはますます国内と海外の垣根がなくなっています。こうした状況の中、オフショア開発は正に企業の要。そのメリットやデメリットをしっかりと捉え、戦略的に進めることが大切です。
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