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リブランディングとは?ブランドの価値を見直すために大切なポイントを解説
販売する商品やサービスが売れるには、「顧客に自社の存在が知られていること」や「自社が顧客に信頼されていること」が重要になります。 これらの要素を同時に満たすのが「ブランド」です。 多くの人から支持されるブランドを持っているのは市場競争で有利ですが、時代の流れによってはブランドの価値が失われていく可能性があります。 そこで今回は、ブランドを見直す経営戦略の手法である「リブランディング」をテーマに、基礎知識や実施する上での大切なポイント、リブランディングに成功した企業事例を解説します。
リブランディングとは?
リブランディング(Rebranding)とは、企業や商品・サービスに定着したブランドを再構築する経営戦略の手法です。
ブランドは、商品やサービスに関連する名称・言葉・デザイン・ロゴ、または企業が培ってきた伝統・風土などが集合した概念です。
ブランドは、多くの企業が存在する中で、顧客に自社の存在を識別してもらうために必要となります。つまり、ブランドは各企業が持つ独自の価値(強み)といえるでしょう。
しかし、社会情勢やニーズの変化によって、ブランドの価値と世の中の感覚は少しずつずれていく可能性があります。
したがって、いかなる時代でも顧客に企業のイメージを正しく伝えるためには、リブランディングによる定期的なブランドの見直しが重要なのです。
リブランディングは、以下のような場面での実施が想定されます。
・新しいコンセプトによる商品のPR
・売上が落ちている商品・サービスのテコ入れ
・メインターゲットの変更
・新規分野・市場への参入
・企業イメージ全体の刷新
リブランディングを実施する上で大切なポイント
ブランドを構成する上で不可欠なポイントはふたつあります。ひとつは、中核にある企業理念。もうひとつは、ブランドを発信するためのアプローチです。
企業理念は貫く
企業理念は、企業の存在意義やあり方そのものであり、企業が意思決定をする上で根本的な判断基準です。
企業理念は、以下の3つの要素で構成されます。
・ミッション(日々果たすべき使命)
・ビジョン(実現したい目標や将来のあるべき姿)
・バリュー(提供したい価値・強み)
ミッションは短期的に、ビジョンは中長期的に「市場や社会に対する姿勢」を示し、バリューは「市場や社会に提供したい価値」を示します。
いずれも普遍的で、時代にかかわらず継承されるべきアイデンティティです。
企業理念を貫くことで、組織内の人間は進むべき方向性を見失わずに済みます。また、理念を貫く姿勢は、ステークホルダーや顧客からの共感や信頼を高めます。
したがってリブランディングの際は、自社のブランドを伝える力の源となる企業理念を安易に変えてはなりません。
アプローチは柔軟に変えていく
リブランディングはブランドの見直しを意味しますが、実際はブランドを発信するアプローチを見直すのと意味は同じです。
見直しの対象となり得るアプローチや、加えて行うと効果的なアプローチの例をいくつかご紹介します。
マーケティング活動の見直し
マーケティング活動は、市場調査に始まり、マスメディア・Webマーケティング・イベントPRなどを利用した広告宣伝活動の総称です。
どの商品・サービスを、どのようなターゲットに、どうやって発信するかを的確に設定すれば、ブランドの認知度やイメージの回復につなげられるでしょう。
ブランドロゴのデザインの見直し
何気ない瞬間にも消費者の目に留まるブランドロゴのデザインは、ブランドへの認知度を大きく左右します。
ブランドロゴを見直す場合は、以下のような観点を持っておくとよいでしょう。
・時代に合っているか
・ブランドのコンセプトを象形しているか
・印象に残るユニークなデザインか
消費者がロゴを見た瞬間にそのブランドを思い出せるほど、ロゴがブランドの象徴としての役割を持っているのが理想です。
CSR活動の実施
CSR(企業の社会的責任)活動とは、利益の追及だけでなく、環境活動やボランティア、寄付活動など企業としての責任を持って社会貢献に取り組む活動です。
CSR活動は、ひとりひとりの社員が、自社の社会における役割を理解するきっかけとなります。同時に、企業の価値観とも言えるブランドと、社会の価値観をすり合わせる機会とも言えます。
リブランディングによってブランドの価値を見直す場合、CSR活動を通して社員の意識を変えるという方法も有効です。
ストーリーの発信
ブランドに込められる企業の想いや世界観は、その企業が設立した際のエピソードや、その後の歴史などの「ストーリー」とは切り離せない関係にあります。
ストーリーは企業の数だけ存在し、真似することのできない独自の価値です。そこに消費者が信頼や共感を寄せ、ブランドイメージが定着する場合もあります。
ブランドを本当の意味で世の中へ伝えるには、企業理念だけではなく、その理念を支えるストーリーも合わせて発信するとよいでしょう。
リブランディングの成功事例
近年大規模なリブランディングを実施した企業の事例をふたつご紹介します。
湖池屋
株式会社湖池屋は、1953年に創業したポテトチップスを中心に製造・販売を行う菓子メーカーです。
湖池屋は2016年の社長交代を機に、全社をあげたリブランディングによる新生・湖池屋が始動したことで話題となりました。
その背景となったのは、コモディティ化した(商品の差別化が難しくなった)スナック市場の現状や、プレミアム市場と呼ばれる高付加価値商品の市場が伸びる傾向です。
これを受けた湖池屋は、ポテトチップスにプレミアムなイメージを付与するために動き出します。
まず、ブランドの看板となるコーポレートマークを刷新し、社内向けには企業の考えやルールをまとめたブランドブックを制作して全社員に配布しました。
さらに、「ポテトチップスは製造ではなく料理されたもの」というイメージを全面に出すため、社屋を料亭のような門構えや老舗旅館のような玄関に変更しています。
そして、実際に売り出すポテトチップスも、素材やじゃがいもの揚げ方、厚さ、脂の種類、味付けまで、すべてをこだわりぬいた商品として新開発されました。
こうした大胆なリブランディングは新商品や既存ブランドにも好影響をもたらし、2016年から2019年の間で売上は急速に回復していきました。
日産自動車
日産自動車株式会社は2020年7月、19年ぶりとなるブランドロゴの刷新を行いました。
この経緯には、電気自動車市場の活発化や、社会で急速に進むデジタル化の波に乗っていく狙いがあります。
新しいロゴは、エッジの効いたシンプルな雰囲気を帯び、デジタルと親和性の高いデザインとなっています。
同時に、一目で日産のロゴとわかるアイデンティティを残しており、「至誠天日を貫く(強い信念があれば必ず道は開ける)」という創業から続く理念は変わっていません。
今回のリブランディングによって、日産が電動化・運転支援・コネクティビティといったモビリティに関するサービスを提供する会社へと進化していくことを世に示しました。
ブランド価値の維持と時代の変化への対応を
ブランドは、消費者のイメージや消費行動に直結する大事な資産です。しかし、消費者の考え、ひいては時代の流れが変われば、ブランドへの見方や感じ方も変わります。
ブランドの価値を維持し続ける努力も必要ですが、時代の変化に対応したリブランディングも大切です。
ただし、時代に迎合するために企業理念すら変えてしまうと、顧客からの信頼を失う結果に繋がりかねません。企業のアイデンティティをそのままに、時代やニーズに合ったブランドの発信を心がけましょう。
また、現在リブランディングが必要でない場合も、自社の強みを理解し、消費者や社会の変化にアンテナを張ることも忘れないようにしましょう。
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