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バーゼル条約とは?2019年の改正ポイントを含めわかりやすく解説
有害廃棄物は、その土地の環境を汚染してしまうリスクがあるため、現地で処分したり、そのまま海外へ運ぶことが禁止されています。 この越境移動を規制しているのがバーゼル条約で、世界187カ国(2019年6月現在)とパレスチナ・EUが批准している国際条約です。 1992年に発効されたバーゼル条約は、2019年に改正されました。この記事では製造業や輸入業などに関わる方を対象として、バーゼル条約の基本原則や、2019年の改正内容をわかりやすく解説します。
バーゼル条約は有害廃棄物の国境を超えた移動を規制する条約
バーゼル条約(Basel Convention)とは、船舶の航行などにともない、有害廃棄物が国境を越えて移動することを規制する国際条約です。
正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」で、1989年にスイスのバーゼルで開かれた国際会議で採択されました。
バーゼル条約が規制する有害廃棄物の対象は、「附属書」に定められた廃棄物で、鉛蓄電池、廃油、シュレッダーくず、医療廃棄物などがあります。
2019年6月現在、187カ国がバーゼル条約に批准しています。なお、米国はOECD加盟国ですが、バーゼル条約は締結していません。
バーゼル条約が締結された経緯は、1980年代に多発した有害廃棄物の越境移動にあります。先進国では国内での廃棄物規制の強化により、コストが増大。
そのため、キアン・シー号事件やカリンB号事件など先進国とくに欧米諸国から発展途上国へ有害廃棄物が運ばれ、環境汚染を引き起こすケースが多く、責任の所在を明らかにする国際的な枠組みを求める声が強まりました。
その後国連環境計画(UNEP)と経済協力開発機構(OECD)が協力し、バーゼル条約の締結に至りました。
バーゼル条約締結の背景
バーゼル条約締結の背景には、3つの理由があります。
- 有害廃棄物の国境を越える移動による健康や環境に及ぼす危険性の排除
- 発展途上国の利益確保
- 新しい低減技術や再利用技術などの開発や実施により危険性を削減するため
バーゼル条約が規制する有害廃棄物の対象は、「附属書」に定められた廃棄物で、鉛蓄電池、廃油、シュレッダーくず、医療廃棄物などがあります。
2019年6月現在、187カ国がバーゼル条約に批准しています。なお、米国はOECD加盟国ですが、バーゼル条約は締結していません。
バーゼル条約の3つの目的
バーゼル条約の目的は3つあります。
1.バーゼル条約の締約国から非締約国への有害廃棄物の輸出入の禁止
2.有害廃棄物の輸出が許されるケースでは、有害廃棄物の輸入国だけでなく経由国に対し、事前通告などの措置を義務付け
3.有害廃棄物が不法に持ち込まれた場合は、輸出側によって有害廃棄物を再輸入するなど、現状を回復する
有害廃棄物の不法な持ち込みを規制し、ゆくゆくは有害廃棄物の総量を減らしていくのが、バーゼル条約の目的です。
日本での動向は?1993年から日本でのルール適用が開始
日本は1993年9月17日にバーゼル条約を締結し、1993年12月16日からルール適用を開始しました。
当時の国内産業が、再利用可能な廃棄物を管理し、適切に輸出入を行っていた実績が認められたため、バーゼル条約の発行年(1992年)の翌年から適用がスタートしています。
バーゼル条約に対応するため、日本政府は1992年から「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(通称、バーゼル法)」の準備を進め、バーゼル条約の締結と共に施行しています。
バーゼル条約の改正ポイントは「プラスチックごみ」の規制
2019年5月10日にバーゼル条約の改正案が採択され、2021年1月1日から施行予定です。
企業は新たなルールに従って輸出入を行う必要があります。バーゼル条約の締約国会議は2年に一度開かれており、スイスのジュネーブで2019年4月19日~5月10日にかけて行われた第14回締約国会議(COP14)で今回の改正案が採択されました。
バーゼル条約の改正ポイントは、新たに「汚れたプラスチックごみ」を輸出する際に相手国の同意が必要となった点です。
近年、プラスチックによる海洋汚染が深刻化しており、2017年には中国が世界に先駆けてプラスチックごみの輸入を禁止するなど、プラスチックごみの越境移動を問題視する動きがありました。
バーゼル条約の締結国の間でも、有害な化学物質をふくむプラスチックごみや、リサイクルできない「汚れたプラスチック」を規制対象とすべきか議論がなされました。
ここでは、バーゼル条約の改正ポイントを解説します。
附属書の改訂
改正バーゼル条約では、どの廃棄物が規制対象の有害廃棄物に当たるかを決めるための「附属書」が改定されました。改定内容は次の通りです。
日本国内のプラスチックごみの2018年度の輸出総量は、およそ100万トンです。
アメリカやドイツに次いで、日本は三番目のプラスチックごみ輸出国であり、環境省も早急に対策を打ち出す方針を発表しています。
今後、環境に有害な影響をおよぼすプラスチックごみや、リサイクルができない「汚れたプラスチックごみ」を対象として、輸出入が規制される点に注意が必要です。
プラスチックごみに関するパートナーシップの設立
もうひとつ重要なのが、プラスチックごみに関するパートナーシップが設立された点です。
このパートナーシップは、バーゼル条約の締結国を中心に横のつながりを強化し、情報共有や技術提供を行うことを目的としています。
たとえば、プラスチックごみの総量を減らすための技術的支援や、ごみ削減の取組み状況のモニタリングなどで、各国の協力を強化します。
また、プラスチックごみに関する財政的な支援も想定されています。
それぞれの締結国が一丸となって、プラスチックごみによる環境汚染を防ぐための国際的な枠組みが誕生しました。
バーゼル条約の改正ポイントを理解し、プラスチックごみの削減に取り組む
今回の改正によって、国内におけるプラスチックごみ処理の需要が高くなることが見込まれます。
コンビニチェーンやコーヒーチェーンなど、飲食業界では紙でできたストローを導入するなど、環境保全に対する企業の動向に今後も注目です。
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