新たな消費スタイル「トキ消費」とは?モノからコト、さらに次の消費行動へ

誰もがスマートフォンを持ち、SNSを通じてリアルタイムに情報や体験を共有する現代、「トキ消費」という新たな消費スタイルが生まれています。企業の経営者やマーケティング担当者は、最新の消費行動やニーズのトレンドを抑え、新たな戦略を立てなくてはいけません。本記事では、新たな消費スタイル「トキ消費」や「イミ消費」の特徴や、従来の「モノ消費」「コト消費」との違いについて、具体例を挙げながら解説します。

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トキ消費とは?一度しかない「今ココ」にコミットする消費スタイル

はじめに「トキ消費」の特徴や、それ以前の「モノ消費」「コト消費」の違いを解説します。

2010年代以降、音楽ライブやスポーツイベント、渋谷のハロウィンのように、一度きりの「今ココ」に参加し、自らも盛り上がりの一部となっていく消費行動が顕著に見られるようになりました。それが、博報堂生活総合研究所の提唱する「トキ消費」です。

トキ消費の特徴は、「非再現性」「参加性」「貢献性」の3つのキーワードで表すことができます。

非再現性
その瞬間の感動や盛り上がりを逃したら、二度と同じ体験をできないというリアルタイム性や希少性です。

参加性
第三者や傍観者としてイベントを体験するのではなく、主体的にイベントへコミットしていく姿勢や当事者意識を意味します。

貢献性
イベントの目的や達成目標を共に分かち合い、一緒に「貢献」しているという自覚です。

モノ消費、コト消費の次の消費行動が「トキ消費」

トキ消費が注目されるまでの消費者の行動は、「モノ消費」や「コト消費」で説明されてきました。商品そのものを所有することに価値を見出すのが「モノ消費」です。特に1970〜1990年代、高度経済成長期からバブル経済期の消費者は、最新の家電や自動車、時計など商品やサービスのそのものを通じて、物質的な豊さを実感していました。

1990年代後半から2000年代になると、消費者は多くのモノを所有するようになり、商品やサービス機能そのものに魅力を感じなくなり始めました。物質的な豊かさより精神的な豊かさを求めるようになり、商品やサービスではなく、それに付随する「体験」を欲する「コト消費」が消費行動の中心になりました。

さらに2010年代以降、スマートフォンやSNSが当たり前になった現代では、地球の裏側の出来事さえ容易に知ることができます。つまり体験も容易になってきました。「コト消費」から一歩進み、「今ココ」の体験へ積極的にコミットし貢献していくことに対し、消費者は価値を感じています。

トキ消費の5つの事例!渋谷のハロウィンから「ももいろクローバーZ」まで

「トキ消費」は若い世代を中心に広まりつつあり、企業がマーケティングやプロモーションのため積極的に活用しています。ここでは、トキ消費の代表的な事例を5つ解説します。

渋谷スクランブル交差点のハロウィンイベント

トキ消費の例としてよく挙げられるのが、渋谷のハロウィンイベントです。人びとが仮装したり、見知らぬ人とハイタッチをかわしたりするためだけにスクランブル交差点に集まるのは、「今ココ」の盛り上がりに参加したいという消費意欲のあらわれといえるでしょう。渋谷のスクランブル交差点は、ハロウィン以外でもサッカーの日本代表選などのスポーツイベントでも群衆が集まることで知られています。

アイドルグループのAKB48や「ももいろクローバーZ」のプロモーション戦略

アイドルグループの「ももいろクローバーZ」も、「トキ消費」をターゲットにしたプロモーション戦略を打ち出していました。日本武道館でのライブや紅白歌合戦への出場などを目標にかかげ、ファンとともに成長していく物語を演出したことで、同じ「トキ」を共有したいファンの支持を獲得しました。ファンとともに成長するストーリーは、例えば総選挙をおこなっていたAKB48らも同様です。

クラウドファンディングで成功した映画『この世界の片隅に』

映画『この世界の片隅に』(2016年公開)は、クラウドファンディングで制作費用の資金調達をおこないました。これも「トキ消費」の一例です。資金調達の目標金額を提示したことで、有名漫画作品が映画化されるプロセスに参加したい、貢献したいというファンの気持ちと制作サイドの思惑が合致して、映画公開に結びつきました。公開後も大ヒットを記録して、映画制作の新しいスタイルとして注目を集めました。

フレッシュネスバーガーの「スパムバーガー生き残りキャンペーン」

フレッシュネスバーガーは、2017年に「スパムバーガー生き残りキャンペーン」を展開しました。売上が伸び悩んでいたスパムバーガーを、「2週間の売り上げが8位以内なら販売継続する」と宣伝した結果、売上増を達成しました。消費行動がキャンペーンに組み込まれ(参加性)、メニュー継続に影響する(貢献性)点で、トキ消費といえるでしょう。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の期間限定・来場者参加型イベント

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも、期間限定(非再現性)のイベントや、来場者参加型(参加性、貢献性)のイベントを開催し、消費意欲を刺激しています。有名なのはハロウィンイベントですが、夏限定の「ミニオン・スノー・ファイト」や、冬限定の「セサミストリート・スノー・パーティ」、ミニオンなどのキャラクターと一緒に盛り上がる「ウォーター・サプライズ・パレード」など年間を通して、様々なイベントを開催しています。

多様化する消費行動。「トキ消費」に続き「イミ消費」が広がる

モノ消費からコト消費へ、コト消費からトキ消費へと、時代の移り変わりとともに消費行動は多様化しています。ここ数年は、トキ消費だけでなく「イミ消費」という消費スタイルも注目を集めています、

イミ消費とは、商品やサービスの持つ「(社会的)価値」に共鳴し、商品の購入を通じて自然環境へ貢献したり、地域活性のためにサービスを利用したりする消費行動です。ホットペッパーグルメ外食総研の竹田クニ氏が提唱しました。消費行動を通じ、社会へのコミットや貢献を目的としているという点で、「トキ消費」と共通点があります。

たとえば、横浜の飲食店が、地元産の「生しらす」の売上の一部を寄付し、海洋資源保護活動を支援するキャンペーンを打ち出し、大きな共感を集めました。

「トキ消費」と並び、自らのアクションが社会や自然環境に「貢献」する「イミ消費」も、消費者の大きな原動力となりつつあります。

多様化する消費スタイルは「モノ」から「コト」、そして「トキ」と「イミ」へ

商品やサービスを欲するモノ消費や、目新しい体験を欲するコト消費に続き、一度きりしかない体験に自らコミットし貢献していく「トキ消費」が広がりつつあります。

消費者はただ商品やサービスを購入するだけでは満足せず、それを通じて他者や社会、自然環境に貢献したいという欲求を持っています。そのため、マーケティングやプロモーションを行う企業は、いかに商品やサービスの価値を共感してもらい、消費行動を通じて社会貢献性を実感してもらうのか考える必要があります。

参考
「コト消費」では説明できない。博報堂生活総研が新たに提案する「トキ消費」とは? |博報堂WEBマガジン センタードット

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