TCFDとは

TCFDとは

TCFDの正式名称は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」。G20の財務大臣・中央銀行総裁会合からの要請を受け、FSB(金融安定理事会)の下に設置された、民間主導によるタスクフォース となる。

2017年の最終報告で、気候変動におけるリスクと機会について、

  1. ガバナンス
  2. 戦略
  3. リスク管理
  4. 指標と目標

以上4項目について、投資家に開示するべきと提言した。

TCFD対応開示で記載すべきことは?

TCFD対応開示で記載すべきことは?

TCFD最終報告書が定める4つの開示項目および推奨開示内容は、上の表に示す通り。有価証券報告書の記載項目となる蓋然性が高い「ガバナンス」と「リスク管理」については、社内の組織体制の整備と定性的なコメント情報開示で事足りる。

難所となるのは、残る2項目の「戦略」と「指標と目標」だ。

これについては、シナリオ分析の前提となるリスク重要度評価、指標選定、シナリオ選定、実態把握/測定、影響度試算、対応策(いわゆるカーボンニュートラル戦略を含む)といった定量的なアプローチが必要となるため、多くの経営リソースの投入が必要となる。

TCFD対応は、まったなしの課題 2022年度での対応は必須

TCFD対応は、まったなしの課題 2022年度での対応は必須

TCFDへの対応は2022年度から求められる、「待ったなしの経営アジェンダ」と言える。

2021年10月8日の岸田首相の所信表明演説では、「新しい資本主義」のスローガンのもとで、上場企業の情報開示に関しても注目すべき発言があった。ステークホルダーの利益向上に向けて、

  1. 非財務情報開示の強化
  2. 四半期決算開示の見直しを検討

以上2つの実現について言及したのである。

これらはいずれも、「脱ショートターミズム」という共通のベクトルを目指す動きだ。

すなわち、株主や投資家は、四半期ごとの財務パフォーマンス(売上高や利益)に一喜一憂することをやめて、長期の企業価値や社会貢献について上場企業と対話するべき、という提言である。

四半期決算開示の任意化については、慎重な意見も多く、議論の俎上に載ったばかりのテーマだ。

かたや、非財務情報開示の強化を巡っては、2021年6月の改定コーポレートガバナンス・コード(CGC)に気候変動やサステナビリティ開示が追記された。

加えて、金融庁(金融審議会ディスクロージャーワーキンググループ)では、2023年3月期以降の有価証券報告書への記載義務化を討議している。

具体的に、何をしなくてはならないか

具体的に、何をしなくてはならないか

上場企業にとっての対応事項は、2022年4月の東証再編での市場区分によって異なる。

プライム市場に上場する企業は、上記の改定CGCの記載に基づき

(A)自社のサステナビリティの基本方針と具体的な取り組み
(B)TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のガイドラインに準じた情報開示

の二つに取り組むことが必要だ。

3月決算の場合、6月の株主総会の後に公表するコーポレートガバナンス報告書の中で上記(A)と(B)について開示しなくてはならない(開示しない場合はその理由を説明)。

プライム以外も、全上場企業に有報記載義務?

プライム以外も、全上場企業に有報記載義務?

加えて、金融庁の検討結果次第では、TCFD等の気候関連情報開示は、東証プライム市場の大企業だけでなく、全ての上場企業に対して、有価証券報告書への記載が義務付けられる可能性がある。

CGCに基づくコーポレートガバナンス報告書への記載は任意開示事項だが、有価証券報告書の記載は法的拘束力を持ち、全ての上場企業にとって不可避となる。

現在のところ、金融庁の議論(2021年10月29日の第3回金融審議会ディスクロージャーワーキンググループ資料)では、気候変動開示4項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)のうち、ガバナンスとリスク管理の2項目を開示義務化して、戦略、指標と目標については任意開示とするといった意見も出ている。

また、今後の重要イベントとして、2022年6月にIFRS財団の基準設定主体(ISSB)が気候変動に関する開示基準を決定する予定である。

金融庁はこの国際的な基準であるISSB決定を踏まえて、有価証券報告書へのサステナビリティ開示の個別項目を決定する方針だ。

ガバナンスやリスク管理の情報開示は必須

いずれにせよ、全ての上場企業は、2023年3月期以降の有価証券報告書において、TCFDの開示項目のうち、少なくともガバナンスやリスク管理に関する情報開示が必須となると考えておいた方が良いだろう。

TCFD対応は世界的な共通アジェンダに

TCFD対応を中心とするESG関連情報開示は、上場企業だけにとどまらず、上場企業と取引関係を持つ非上場企業も巻き込み、全世界的な共通アジェンダとなる。

ただし、ESG情報開示に関する法規制やガイドラインは現在進行形で見直されている状態であり、盤石な態勢を整えている企業はわずかである。まず着手すべきは、トップ経営者が陣頭指揮を取り、社内のサステナビリティ推進体制を整え、自社の重点領域(事業機会/リスク)に関する検討を開始することであろう。

関連記事

新生銀行の事例に学ぶ「有事導入型買収防衛策」 敵対的TOB過去最多

敵対的TOB(株式公開買付け)が増加している。2021年は10月までに8件と、すでに過去最高の水準となった。コーポレートガバナンス・コード(上場企業のための企業統治の指針)の定着、タブー視されてきた事業会社間の敵対的買収などが大企業でも見られる様になった事、アクティビスト・ファンドの活発化などが背景にある。この記事では、最近の敵対的TOBの動向とともに、敵対的買収の脅威が表面化してから導入する「有事導入型買収防衛策」について考察する。

「経済安全保障」 岸田政権の本気度は?

自民党が単独で絶対安定多数の議席を獲得した衆議院議員選挙(2021年10月31日投開票)。党の公約の一つに「経済安全保障戦略」の策定と「経済安全保障推進法(仮称)」の制定を掲げて臨んだ選挙だった。第一次岸田内閣では、新たに経済安全保障大臣を設置。おろそかになっていた経済安全保障政策を、どこまで推し進められるか、その本気度を測る。

取締役会の実効性評価とは?

2021年6月に発表された新たなコーポレートガバナンス・コードや、東京証券取引所の市場区分変更に伴う2022年4月のプライム市場、スタンダード市場、グロース市場への一斉移行を踏まえ、従来にも増してガバナンスの強化が話題となっています。 プライム市場に上場する会社は多くの項目でコーポレートガバナンス・コードへの遵守(コンプライ)が求められており、高い水準でのガバナンスの構築が必須と言えるでしょう。 ガバナンス強化としての取り組みのひとつが取締役会の実効性評価です。取締役会自体が、その役割を果たせているかを確認し、そして反省し、不足している部分を改善する取り組みを行うことでガバナンスの高度化がもたらさせると考えられており、上場会社にとって重要な取り組みの一つです。 そこで本記事では、取締役会が、期待されている役割をどの程度果たせているかを評価する取り組みである取締役会の実効性評価について解説します。

ランキング記事

1

注目を集めるCSV経営とは?実現のための戦略と事例を解説

CSVとは、「Creating Shared Value(共通価値の創造)」の略語です。社会的価値を戦略的に追求すれば、経済的価値も自然に生まれるという考え方を指します。 社会の利益と一企業の利益を同時に追求できることから、持続可能な経営に必要な考え方として注目されているCSV。しかしCSRとの違いや具体的なメリット、経営への落とし込み方について詳しく知らない人も多いでしょう。 そこでこの記事では、CSV経営のメリット・デメリットや国内大手企業のCSV経営事例を解説。またCSVを実践するために必要な経営戦略についても、分かりやすく説明します。

2

「日本製鐵がトヨタを提訴」の衝撃 業界最大手同士の大型裁判

「日本製鉄がトヨタ自動車を提訴」。2021年10月中旬に出たこのニュースを受け、鉄鋼業界に激震が走った。国内製造業の頂点に君臨するトヨタ自動車と、鉄鋼最大手の日本製鉄。長い間蜜月にあった両社が、裁判で争う事態は誰も想像していなかったからだ。

3

印刷業界の現状と展望は?直面する課題や打開に向けた取り組みを紹介

ポスターや雑誌といった印刷物を発行し、商取引を通じて利益を上げる印刷業界。日本活版印刷の始祖にあたる本木昌造が1869年に活版伝習所を興したのをきっかけに生まれた印刷業界は、印刷技術の発展とともに業容を拡大させてきました。 しかし、インターネットの普及に伴う紙媒体の広告費縮小、エンドユーザーにあたる出版社や新聞社の業績悪化によって、業界全体が厳しい状況に置かれています。 本記事では、そうした印刷業界の現状や課題とともに、現状打破に向けた取り組みを紹介します。

4

オーバーアロットメントとは 株価への影響や事例とともに解説

企業において新規株式公開や公募増資を担当されている方、また証券会社でこれから引受を請け負う若手の方、または今後それらの仕事を志す方等に向けて、今回は「オーバーアロットメント」という公募・売り出しの関連手法・用語について解説していきます。

5

破壊的イノベーションと持続的イノベーションの違いは?メリットや事例を解説

破壊的イノベーションとは、既存事業のルールを破壊し、業界構造を劇的に変化させるイノベーションモデルです。 この概念は、ハーバード・ビジネススクールの教授であった故クレイトン・クリステンセン氏の著書『イノベーションのジレンマ』で提唱されました。それ以降、飽和状態となりつつある市場に必要なイノベーションとして注目されています。 本稿では、破壊的イノベーションの理論や企業の実践例から、破壊的イノベーションを起こすために必要となる戦略までを解説します。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中