「責任逃れする上司」との付き合い方

会社などの組織で働いていると、部下に責任を押し付け、自分はその責任から逃れようとする「ダメな上司」に出会うことがあります。多くの場合、こうした上司の行動は職場の「心理的安全性」を脅かし、部下のモチベーションを下げるでしょう。これは組織マネジメントを行ううえで、由々しき問題です。今回は、責任転嫁する上司の心理状態を押さえつつ、上手に付き合っていくための対処法について考えます。

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責任回避する上司とは

責任回避する上司とは

責任回避する上司。要は守ってくれない上司がいると、仕事へのモチベーションが下がるという声を耳にします。例えば、部下の起案を握りつぶしたり、失敗を部下に転嫁したりする上司のことです。先日お会いした友人の職場に勤務している若手社員も「責任回避する上司は困りものですね……」と語っていました。

  • 自分に自信がない
  • 責任を負わされたくない
  • 信頼を失いたくない

こうした心理から、意見をコロコロ変えたり、言い訳ばかりして、責任を他人に押し付ける発言をしたりするなどの回避行動に陥ってしまう。部下のモチベーションが下がるのは間違いないでしょう。

ちなみに採用系の会社が調査したアンケート結果で「ダメな上司」1位は大抵が、このタイプ。できれば、関わりたくない。ただ、上司は選べません。仕事をしていると、高確率で遭遇するくらいに責任回避型の上司は多いのでしょうか?

ある営業系企業で業績が悪化している状況になってしまったとき、仕事でお会いした若手社員は、状況を打破するため会社が決めている営業アプローチの方法に問題があると想定。そこで打開策が必要だと思い、新たな営業の仕方を上司に提案しました。

自分的には成果につながる可能性が高いと確信しての提案でしたが、上司の反応は「前提がない」「説得は難しい」と見解を述べるだけで、提案を上申することはしてくれない。

さらに同僚同士で飲みにいったときに「この会社はダメだと上司から愚痴を聞かされた」との話を聞いて、モチベーションが大いにダウン。転職も考えていると嘆きを聞くことがありました。

確かに、若手社員の発言が事実であれば、ダメな上司で、転職を考える気持ちになるのは仕方ないようにも思います。

上司の多くは責任回避すべきでないことをわかっている

上司の多くは責任回避すべきでないことをわかっている

そもそも、自分の部下を守らない上司、責任を回避する上司を高く評価する会社はありません。自分は企業の会議に参加する機会が多いですが、上司が部下を守らない上司、責任回避する発言をする上司はあまり見かけたことがありません。むしろ、

  • 仕事の成果は部下のもの
  • 仕事のミスは上司の責任

といった姿勢を示すことが上司のかがみであり、自分が高く評価されることになると自覚されているからでしょう。

先日、ある製造業の上司=管理職が集まる経営会議で一人の管理職が部下の仕事ぶりをたた称える発言をしていました。ところが、その仕事は相当に上司がサポートしながら行われていたようです。

にもかかわらず「部下は自分一人で頑張った」と仕事ぶりを説明。ただ、周囲は上司の手厚いサポートで成果が出たことはわかっており、部下の手柄にしようとする美談は、上司の評価にもつながっているように見えました。

あるいは部下のミスによる損害に対して「すべては上司である自分の責任です。懲罰になるのであれば、自分が背負います」と報告する上司がいましたが、その責任を背負う姿勢は役員から「反省して、取り組んでいただければいい」と情状酌量と責任感の強い上司としての好印象を得る機会になっているように思いました。

今の立場で生き残っていきたいなら、責任回避の姿勢はプラスにはならないことがよくわかっている上司が多いのではないでしょうか? ところが、部下の視点に立つと、責任回避している姿勢が見えてしまう上司がたくさんいる。その立ち振る舞いでモチベーションが下がる状況を起こしているとしたら、どうしてでしょうか。

権限のない「名ばかり上司」の存在

権限のない「名ばかり上司」の存在

若手社員が責任回避を指摘する上司と経営会議で会った上司。同じ上司のようで立場が違うかもしれません。自分が会議に参加して会った上司は会社が正式に管理職と認識している立場。いわゆる、管理監督者。管理監督者とは、事業の拡大・利益増加を実現するために、一般従業員の労働条件の決定や労務管理について経営者と同等の地位や権限を付与された社員。肩書ではなく、会社が立場として権限と責任を付与した存在。

出典:ITトレンド 管理監督者とは?管理職との違いや役割をわかりやすく解説

一方で、若手社員が上司と認識している存在は肩書的にはマネージャーとか、自分たちとは違う存在のように感じているかもしれませんが、会社から見たときに立場は一緒。守りたくても守れる権限がない。肩書上は上司のように見えるけれど、管理職ではないから守れない。同じ職場の先輩としての立場でしかないという認識から責任回避的な姿勢が来ている場合が多いように思います。

会社には権限規定というものがあって一定の立場になると自分で判断できること、できないことがわかります。すると、自分は職場の上司的に働いている立場ながら権限がない。いわゆる「名ばかり上司」との認識があると、部下からすれば責任回避的な姿勢になりがちかもしれません。

「ダメな上司」への対処法

「ダメな上司」への対処法

こうした状況で上司が部下からダメなやつとレッテルが貼られてしまうことは、望ましいものではありません。回避に向けて二つの対策があると思います。

部下は「管理監督者」を頼る

まず、ダメな上司の対応に悩む部下にアドバイスするとしたら、守ってもらえると期待したこと自体に間違いがあった可能性を示します。さらに言えば、守ってほしいなら、身近で権限がない上司ではなく、自分の管理監督者は誰か?を確認して、その人物を頼るべきでしょう。

自分も責任回避型の上司と一緒に仕事したことがあります。何か相談しても、握りつぶされてしまう。自分の仕事上のミスをカバーしてくれないと感じる日々を過ごしていました。そのときに、どうしたか? 直属の上司だと思っていた人物はマネージャーという肩書ながら立場は自分と同じであることが確認できました。責任回避型というよりは、そうした姿勢を貫くしかできなかったようでした。

自分はマネージャーとして若手社員とは違う存在のように立っていたい。ただ、権限はないので、握りつぶすしかないと考えていたようです。ならば、管理監督者である本当の上司に上申してくれればよかったのですが、2人の人間関係がよくなかった。そんな背景から自分は守ってくれないと感じる状況が生まれていたのですね。

権限がない上司は管理監督者と連携を

また、権限がない上司にアドバイスするとしたら、管理監督者との連携を深めて、職場の部下たちのモチベーションが下がらないように、支援体制をつくることが重要だと伝えます。 

例えば、部下から起案・相談があれば、どのようなプロセスで判断がなされるかを明確に伝えておく。そのうえで、管理監督者との情報交換をこまめに行っていく。

こうした姿勢が示せれば、守ってくれないという不安は随分と解消されることでしょう。

部下たちを守る環境づくりは組織マネジメントの一環

さて、ここまで「責任逃れする上司」との向き合い方について書いてきました。組織では、上司が部下を守る姿勢をしっかりつくっておくことが重要。ところが、守り切れない存在が上司として部下と関わる状況になることでモチベーションダウンが起きているとすれば、とても残念なこと。ただ、こうした状況が企業のあちこちで起きているのではないかと思います。

その理由は、「管理監督者=上司」という関係で組織が構築できていないことが要因かもしれません。職場環境的に管理監督者と部下たちの間にリーダー的な存在がいることは、それ自体に問題があるわけではありません。ただ、部下視点で考えたときに自分を守ってくれる存在は誰か?その存在は頼りになるのか?は、仕事をしていくうえで大いに重要なテーマです。

2023年のエン転職の調査でも尊敬する上司としてダントツ1位になっているのが「部下を守る」(55%)。今風に言うなら、「心理的安全性」の確保によって仕事が円滑に行えるということなのでしょう。

一方で上司としては「自分の職場環境は自分でつくりあげてほしい」と感じるかもしれませんが、部下たちの意向を理解して組織マネジメントを行うことが成果をあげる近道ですから、踏まえておきましょう。

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