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内部統制報告制度「J-SOX法」とは? なぜできたのか?
企業における内部統制は、様々な業務が適正に行われ、組織が適切にコントロールされているかどうかをチェックすることを指しますが、その中でも事業年度ごとの財務報告の内部統制について定めているのが、J-SOX法(内部統制報告制度)と呼ばれる制度です。 J-SOX法は、事業年度ごとに公認会計士ないしは監査法人の監査を受けた内部統制報告書と有価証券報告書とともに内閣総理大臣へ提出することが義務付けられています。 また違反した場合は、金融商品取引法に「(責任者は)5年以下の懲役または500万円以下の罰金またはその両方(法人の場合は5億円以下の罰金)」と罰則が定められています。 しかし、結果的に企業の内部統制を強化し、不正会計などのリスクを減らすことができるため、J-SOX法は企業にとってもメリットのある制度と言えます。 この記事では、J-SOX法の解説のほか、ITシステムに関する「IT統制」についても解説しています。企業の監査部門や、内部統制に関する部署で働いている方は、ぜひ参考にしてください。
J-SOX法とは? 不正会計を防ぎ、企業に内部統制を求める制度
J-SOX法とは、企業が財務報告を行うにあたって、適切な内部ルールを作り、不正を予防するために、チェック体制の設置を定めた制度です。
ここではJ-SOX法の詳しい内容に加え、成立した背景や名前の由来を解説します。
J-SOXの由来と成立の背景
J-SOX法の正式名称は、「内部統制報告制度」で、2006年6月に金融商品取引法が成立した際に規定されました。
J-SOX法は、もともとアメリカで作られたSOX法(企業改革法)からとっており、日本(Japan)のSOX法ということで、J-SOX法と呼ばれています。
米国のSOX法は、エンロン事件やワールドコム事件など、2000年代に起きた大規模な不正会計事件をきっかけに生まれた法律です。
SOX法もJ-SOX法も、財務報告において企業に内部統制を求め、不正会計を防ぐことを目的としている点では同じです。
しかし、米国で定められた運用方法では、一部大企業で100,000時間を超える作業時間が費やされるなど、企業側の負担やコストが増大してしまいました。
そこでJ-SOX法では、経営者向けのガイダンスを用意したり、企業の監査人自らが内部統制をテストする「ダイレクトレポーティング」を許可したりするなど、企業負担の低下に努めています。
J-SOX法の内容
金融商品取引所に上場しているすべての会社は、事業年度ごとに財務諸表や連結財務諸表などの財務計算書を作成しなければなりません。
J-SOX法では、この時に有価証券報告書とセットで、公認会計士や監査法人などから監査を受けた「内部統制報告書」を内閣総理大臣に提出することを義務付けています。
J-SOX法、内部統制報告書については、金融商品取引法第24条で以下のように定められています。
つまり、「財務計算書をきちんと作成している」「財務計算に不正がないかどうかチェックしている」ことを証明するための書類が内部統制報告書です。
内部統制報告書の作成を義務化することで、情報開示(ディスクロージャー)の信頼性を高めつつ、企業がミスや内部不正に気づき、リスクを回避しやすくなるというメリットがあります。
J-SOX法の対象は子会社や関連会社も含むすべての上場企業
J-SOX法の対象は、金融商品取引所に上場しているすべての企業です。また、財務報告は一般的に、自社の支配力が及ぶグループ会社などを含めた連結ベースで行われます。
J-SOX法の内部統制も同様に連結ベースで行われるため、本社・本店だけでなく、子会社・関連会社・在外子会社・外部委託先も制度の対象です。ただし、一部のケースでは内部統制が複雑化します。
たとえば、上場企業の本社と非上場企業の子会社が連結している場合は、本社が子会社の分も内部統制を行う一方で、子会社は自社の評価を行う必要がありません。
しかし、本社・子会社が共に上場企業である場合は、両社が共に内部統制を行います。連結ベースで決算を行うケースでは、「誰がどこまで統制を行うか」に注意しましょう。
J-SOX法に違反した際の罰則は? 法人の場合は最大5億円の罰金も
J-SOX法に違反し、内部統制報告書に虚偽の記載を行ったら、どのような罰則が与えられるのでしょうか。
内部統制報告制度の罰則規定は、金融商品取引法197条に存在します。その条文によれば、J-SOX法に違反すると「個人には5年以下の懲役または500万円未満の罰金もしくは両方、法人には5億円以下の罰金」となり、とくに法人は巨額の罰金が課せられるリスクがあります。
内部統制報告書を提出しなかった場合も、J-SOX法違反となるため注意が必要です。
J-SOX法と4つの「IT統制」
J-SOX法の対象企業は、内部統制において、ITに関する対応も行わなければなりません。
それが「IT統制」です。IT統制は「IT業務処理統制」「IT全般統制」「IT全社的統制」に分類できます。
IT業務処理統制:ITシステムによる業務プロセスの統制
IT業務処理統制とは、ITシステムを使った業務プロセスを監視し、データの入出力や処理などが正確に行われているかをチェックする仕組みを指します。
たとえば、企業の会計処理をITシステムで置き換え、数値の計算や仕訳処理などを自動化している場合、このプロセスに問題がないかを記録・監視する仕組みが必要です。
二重チェックや限度(リミット)チェック、コントロール・トータルチェックなどのデータ検証方法などが挙げられます。
IT全般統制:ITシステムを活用するビジネス環境の統制
IT全般統制では、ITシステムを使う部門や従業員を監視し、システムが稼働しているビジネス環境に焦点を当てます。
システムそのものの動作よりも、正しく動作する環境になっているかどうかをチェックするのが特徴です。
たとえば、システムの保守運用が適切か、セキュリティ対策やアクセス管理が万全かをチェックし、システムの誤作動や不正利用が起きにくい体制を作ります。
IT全社的統制:グループ全体のITシステムのリスクを評価
複数の会社を抱える企業グループの場合は、本社・子会社それぞれのITシステムのリスクを個別に評価するだけでなく、グループ全体としてのIT統制が必要です。
これをIT全社的統制と呼びます。グループ全体として、ITシステムの活用にどのような方針やルールを設けるかを再確認し、本社・子会社の区別なく、グループの末端まで情報共有することができる仕組みを構築します。
ログ・監査証跡の保存も重要
こうしたIT統制において重要なのが、内部統制に使う監査証跡の保存です。
IT統制の場合、監査証跡となるのはコンピューターの操作ログやシステムのアクセスログなどのログです。
もし、IT統制の過程で不正の可能性があるものを見つけたら、ただちにログを解析して調査を行います。
そのため、すぐに追跡できるような形式で、およそ3ヶ月~1年分のログを保存する必要があります。
ただし、数年後になって不正が見つかるケースもあるため、直近のログだけでなく、およそ3年~5年分のログもバックアップなどの形式で保存しましょう。
コーポレートガバナンスを遵守するためにもJ-SOX法の理解が必須
内部統制はコーポレートガバナンスの根幹とも言えます。その内部統制をチェックするためのJ-SOX法は企業にとって非常に重要な制度と言えるでしょう。
古今東西を問わず、不祥事によって莫大な損失を負った企業は数多あります。だからこそ、J-SOX法の理解を深めましょう。
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