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BPOの意味とは?アウトソーシングとの違いや具体的なサービスを解説
BPOとは、「ビジネスプロセスアウトソーシング」の略称です。特定の業務を外部委託し、業務プロセスを効率化することを指します。 現在、BPO市場は拡大中です。特にIT企業におけるBPO市場規模の伸び率が大きく、2019年度の統計では前年度比4.0%増の2兆5,758億円となりました(注1)。 そこでこの記事では、BPOの概要を改めて解説。具体的なサービスや、ビジネスに取り入れる際の注意点もご紹介します。
企業におけるBPOの意味とは
BPOとは、特定の業務を、専門的なノウハウを持つ業者に一括して外部委託することを指します。たとえば会社の総務や経理といった、1つの部署が請け負う仕事を丸ごと外部委託するのがBPOです。営業や、コールセンター業務を請け負うBPOサービスもあります。
BPOは、外注された業務を依頼どおりにこなすだけではありません。業者独自のノウハウを活用し、業務の効率化を進めます。業務を体系立て、よりスマートにこなせるようプロセスを改善するのです。
BPOとアウトソーシングの違い
BPOと似た言葉である「アウトソーシング」は、一部の業務の外注を意味します。一方、BPOは特定の業務の外注から業務プロセスの見直しまでが一連のサービスです(注2)。
イメージとしては、一部の業務を外注するのがアウトソーシング。特定の業務に対してノウハウのある業者を、一部署として社内に配置するのがBPOといえます。
BPOをビジネスに活用するメリットとは
BPOは一般的な業務委託と異なり、社内業務を効率化できるサービスです。BPOのメリットを理解して活用すれば、高い費用対効果が期待できるでしょう。
BPOは既に、ソニーやベネッセコーポレーション、JCBなど多くの大手企業で活用されています(注3)。では、BPOにはどういったメリットがあるのでしょうか。
主力業務に多くのリソースを割ける
BPOで特定のサービスを外注すると、社内のリソース確保が可能です。確保したリソースは、主力業務に充てられます。
主力業務に割くリソースが厚くなると、盤石な経営体制で売り上げの向上も見込めるでしょう。新たな商品やサービスの開発にも有利です。
人件費などのコストカットが期待できる
BPO業者は、特定の業務に精通したプロです。高いパフォーマンスで業務をこなし、常に業務プロセスの見直しを行います。そのため、社員に業務を担当させるより高い費用対効果が期待できるでしょう。
これまで特定の業務のために契約社員やパートといった人員を確保していた場合、BPOで大幅に人件費を減らせる可能性があります。業務の効率化で無駄がなくなり、その他の経費削減にもつながるかもしれません。
業務の質が向上する
BPOを活用すれば、外注した業務はもちろん、主力業務の質も向上させられます。業務の体系を常に見直し、フローの改善と効率化を図るBPO業者のノウハウは、社内の業務に適用できるかもしれません。
BPOの活用で質の向上した業務を社内のモデルケースとし、社内全体により良い循環を生み出すこともできます。
業務内容が整理できる
多くのBPO業者は業務にあたり、マニュアルを新規に作成して業務プロセスを可視化します。複雑に思える業務も、内容の可視化で業務内容が整理できます。効率化が図れていなかった原因の洗い出しもできるでしょう。
また、マニュアルが整備されれば業務の継続性が保たれます。人員配置の変更や、災害などといった不測の事態への備えとしても有効です。
BPOのサービスとは
特定の業務に特化した業者や、幅広い業務を請け負う業者など、BPOのサービスは多岐にわたります。企業の主力業務に集中するため、外部受託するサービスを細かに選択可能な点もBPOの特徴でしょう。
ここでは、BPOサービスの具体例を紹介します。自社で活用できそうなサービスがあるか、ぜひご確認ください。
サポートデスクやコールセンターのBPOサービス
サポートデスクやコールセンター業務にBPOを活用すれば、顧客対応に社内リソースを割かずに済みます。また、対応プロセスの効率化や改善も図れるはずです。
具体的な業務としては、顧客からの問い合わせや契約手続き、発送資料の用意などが挙げられます。電話対応に付帯して特別な業務がある場合は、業者に相談の上、一括受託してもらいましょう。
人事や労務管理のBPOサービス
給与計算や労働時間の管理、人事異動への対応や人事の採用活動の外注もできます。
会社の内部に深く関わる業務のため、当然社内の方針や特色を踏まえて対応してもらえるので安心です。
またBPOでは、よりコストのかからない方法を積極的に実施します。そのため、社内では手が付けにくいペーパーレス化へのシフトなども簡単に行えるでしょう。
マーケティングや経営戦略策定のBPOサービス
営業の打率が悪く、見込み客リストを改善する必要がある場合や、営業担当者のタスクが複雑化して現場が回っていない場合などにも、BPOは有効です。
マーケティング系のBPOでは、最適な顧客層の選定から実際の営業までを一貫して請け負う業者もいます。中には、自社に必要な業務だけをいくつか組み合わせて外注できる業者も。新規事業を立ち上げる際の顧客開拓にも活用できます。
受発注業務のBPOサービス
商品の受注や発送、仕入れなどにかかる発注業務にも、BPOが活用できます。たとえばオンラインショップでの注文対応や、データ入力などです。場合によっては受発注にともない、出荷指示を出したり配送車の手配をしたりする業務の外注も可能です。
受発注の増減によって社員の作業が左右されず、繁忙期の受注ミスも防げるでしょう。
BPOをビジネスに取り入れるには
BPOを自社のビジネスに取り入れるには、外注する範囲の設定と信頼できる業者の選択が重要です。BPOをうまく利用すれば、人手不足や業務効率の停滞などの悩みが解消されます。
しかし、BPOの取り入れ方を誤れば、適切な効果は得られず、かえって業務が複雑化してしまうでしょう。ここでは、実際にBPOをビジネスに取り入れる際の注意点を説明します。
BPOサービスの利用範囲を決める
外注する業務の内容や範囲によって、BPOで得られる効果は変わります。業務の体系化、プロセス改善の可能なBPOにおいては、ある程度一貫した業務を外注しましょう。また外注する業務は、大まかに構造化できるものが良いでしょう(注4)。
たとえば採用業務には社内独自の判断基準が含まれますが、業務のプロセス自体は構造化できます。一見外注の難しそうな業務でも、内容を切り出せばBPOのメリットを最大限活かすことができるはずです。
ただし、BPOは1つの業務に対して、会社に則した改善を繰り返します。そのため、事業内容や人員配置が頻繁に変わる会社にはあまり適しません。
BPOサービス事業者の選定は慎重に
BPOサービス事業者を選定する際は、以下の点に注意しましょう。
- 費用対効果の高さ
- 外注したい業務の実績と専門性
- 情報セキュリティレベル
- BPOサービスの範囲
特に社内情報を扱うBPOでは、社外秘の情報をどう守るかが非常に重要です。社内の基準に足るセキュリティレベルがあるかどうかは、事前に確認しておきましょう。
また、イレギュラーな事態への対応など、サービスの範囲はあらかじめ明確にしておくとトラブル防止になります。
BPOサービスの需要拡大が予想される
日本国内において、BPOの活用はまだ発展途上です。しかし、今後は限られた経営資源を有意義に使うため、BPOを活用する企業が増えるでしょう。
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(参考)
注1:BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2020年) | 株式会社矢野経済研究所
注2:アウトソーシング・ビジネスの現状と課題 | 関口和代-19項
注3:オフショア・アウトソーシング・ビジネスにおける地域優位性 | 関口和代-207項
注4:採用とアウトソーシング | 小宮健実
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