MedtTech(メドテック)とは?テクノロジーで医療分野に革新を

ITで世の中を便利にする「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、あらゆる産業で実用性が期待されています。 中でも、医療とITを組み合わせた「Medtech(メドテック)」という分野は、テクノロジーを駆使して医療の分野にイノベーションをもたらす産業として注目されています。 本稿では、メドテックが推進される背景や、メドテックが医療業界にもたらすメリット、国内での市場や展開内容などを解説します。

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Medtech(メドテック)とは?

Medtech(メドテック)とは、「Medical(医療)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語です。

IoTや5Gなどのテクノロジーを駆使し、医療の分野にイノベーションをもたらす取り組みを指します。

メドテックがカバーする領域は、医療機器・診断機器のIoT化や、医療・介護用ロボット、リモート技術による手術支援などさまざまです。また、センサーを用いて人体データを取得し、ビッグデータ技術による解析のもと、新薬開発につなげるバイオ・ファーマシー(生物医薬品)の分野とも関連します。

メドテックは、医療関連企業だけでなく、電機・通信大手などが積極的に推進しており、現在は新たな成長産業として注目されています。

Healthtech(ヘルステック)との違い

メドテックの類似語として、Healthtech(ヘルステック)と呼ばれる「Healthcare(ヘルスケア)」と「Technology」を組み合わせた造語が挙げられます。

ヘルステックは、医療分野の中でも病気の予防や健康管理、診察後のアフターサービスなどが対象です。

例えば、以下のようなサービスがヘルステックの取り組みと言えるでしょう。

  • 医療機関同士で患者の情報が共有できる「電子カルテシステム」
  • スマートフォンを用いたリモート診察
  • 処方薬の自動配送

ヘルステックによって、医療の効率化やコスト削減、医療が抱える課題の解決などが期待されています。

メドテック推進の背景にある国内の現状

メドテックによって医療イノベーションの加速を進めるべき背景は、国内の医療業界や経済情勢の現状にあります。中でも、特に関連のある3つの背景について解説します。

医療機器の国内市場は拡大中

近年、日本の社会保障給付費や医療給付費などは年々増加傾向にあり、今後の社会は超高齢化・少子化の時代に突入していくと言われています。

一方で、比較的病気や怪我をしやすい高齢者や乳幼児などのため、医療機器を使用する機会も増加することが想定されます。

経済産業省の資料によれば、国内の医療機器市場は拡大傾向にあり、特に治療系医療機器の市場の伸び率が高いとのことです。

医療・介護用ロボットの市場規模は拡大中

医療や介護などの現場では、多岐にわたる支援を可能にするサービスロボットの活用が進んでいます。

例えば、リハビリ支援や移乗介助などに役立つ介護用ロボットや、手術中の医師を直接支援したり、リモートでの手術を支援する医療用ロボットなど、用途に応じてさまざまな種類があります。

近年のロボット市場は、AIやIoT、5Gなどの革新的なITによって規模の拡大が進むと推計されており、医療・介護用ロボットも例外ではありません。

国内のメドテック業界も十分に成長機会がある

アメリカ大手コンサルのマッキンゼー・アンド・カンパニーは、メドテックが世界的に見ても常に参入の魅力がある業界であると指摘しています。

その上で、日本でメドテックに取り組む企業は、グローバル平均に引けを取らず研究開発への投資を行っており、イノベーション競争で十分戦える位置にあるとの評価を受けています。

つまり、国内のメドテック企業はグローバル規模で優位性を勝ち取れる可能性を秘めており、医療技術の革新だけでなく、日本の競争力向上をもたらす存在となり得るのです。

メドテックに期待できる医療業界への革新・メリット

メドテックが医療業界に革新をもたらし、世界的に成長機会の多い事業領域であることは間違いありません。

では、具体的にメドテックは医療業界に対し、どういった革新・メリットをもたらすのでしょうか?主にふたつの観点から解説していきます。

診断の正確性や速度の向上、リモート化

高齢化や医師の人手不足などの原因が積み重なると、医療従事者の負担は増加し、患者が十分な医療を受けられないおそれがあります。

この課題に対し、ITを活用して迅速かつ正確な診断が可能にしたり医師が患者と物理的に近くにいなくても診察できるシステムを構築するという方法があります。

これによって、従来のパフォーマンスを下げずに医療サービスが提供でき、課題解決の糸口となるのです。

例えば、スマホやタブレットによる遠隔診察や、ウェアラブルデバイスによるバイタルサインの自動測定、AIによる画像診断などが具体策として挙げられます。

手術中の医師や患者の負荷軽減

医療現場の最前線とも言える外科手術では、繊細な作業を長時間続けなければならない医師にとっても、身体にメスを入れられる患者にとっても負荷がかかります。

しかし近年は、切開を行わない内視鏡手術であれば、ロボットアームによる支援が可能な技術が確立されています。

ロボットが完全自動で手術を行うわけではありませんが、医師の作業負荷を軽減させつつ、最小限の手術痕で手術が完遂できます。

日本企業のメドテック展開の現状は?

日本国内においてメドテックに取り組む企業はすでに数多く存在し、グローバル規模で存在感を示す企業や、日本国内を中心に業界をリードする企業などさまざまです。

そこで、各舞台で活躍する企業の取り組みについて、以下に事例を挙げていきます。

グローバルリーダーのテルモ

すでにグローバル市場で強い競争力を示すリーダーとして、国内の医療機器最大手であるテルモ株式会社が挙げられます。

テルモはメドテックの取り組みのひとつとして、医療系のアプリの開発を手掛ける株式会社MICIN(マイシン)と業務提携し、糖尿病の治療を支援するアプリの共同開発を目指すことを2020年7月に発表しました。

当アプリは、血糖値や服薬状況、食事、運動の情報に応じて、患者一人ひとりへの適切な行動指針を提供する機能を持ち、医療機器として承認申請することも検討しているとのことです。

同社によると、血糖自己測定器やインスリン用注射針といった糖尿病領域の製品群の売り上げは横ばいの状態が続いており、アプリ開発をきっかけに新しい分野に踏み出し、事業の可能性を模索する狙いです。

国内リーダーのフクダ電子

国内に強い販路を持つ医療機器メーカーのフクダ電子株式会社は、オムロン傘下のオムロンヘルスケア株式会社と業務提携し、在宅医療向けの医療機器を共同開発しています。

オムロンのセンサー技術などを活用し、血圧や心拍を検査するウェアラブル端末などのモニタリング機器の開発をメインに、在宅医療の新規事業を開拓する狙いです。

外部からのイノベーターであるニコン

医療分野を専門としない企業からもメドテック事業への参入例があります。

例えば、光学機器メーカーのニコン株式会社が展開するヘルスケア事業では、光学・精密技術などを駆使し、バイオサイエンス・医療分野に貢献しています。

その内容は、顕微鏡ソリューションや再生医療・創薬支援に寄与する細胞ソリューション、超広域な網膜画像で眼科領域の発展を促す眼科ソリューションなどさまざまです。

国内の手術支援ロボット開発の動向

手術支援ロボットの開発は、アメリカのインテュイティブ・サージカル社の腹腔鏡手術支援ロボット「ダウィンチ」が首位を誇ります。

日本国内でも、2020年8月に川崎重工とシスメティクスが合同出資した株式会社メディカロイドが、国内初となる内視鏡手術用支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」を開発し、将来的には海外売上高比率を8割以上にする目標を掲げています。

そのほか、デンソー株式会社は、手術中の医師の腕を支える支援ロボット「iArms」を開発し、医師の作業精度や疲労軽減に寄与するアプローチをとっています。

オリンパスは2024年までにAIとロボットを活用するシステムを実用化すると発表しており、今後も手術支援ロボットの開発が進んでいくことが予想されます。

メドテックは医療業界を革新する成長産業

メドテックは、日本の高齢化が進み医療への負担が増えることが懸念される中、こうした負の状況を打開すべく生まれたIT×医療の新しい産業です。

医療機器やロボット、ITソリューションなどのアプローチから、医療の高度化・効率化を可能にし、今後はグローバル規模でさらなる成長が見込まれています。

メドテックの可能性は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」としての側面と、日本経済の成長を促進するイノベーションとしての側面の両方に注目すべきでしょう。

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