eスポーツ(e-Sports)市場の分析と課題 「投げ銭」普及でスポンサー頼みから脱却を

ゲームを純粋な競技として楽しむ「eスポーツ」。日本でも年々市場は拡大しているものの、ファンの数ほどには収益が増えていない。市場を更に拡大するには、収益の多くをスポンサーの広告収入に頼る構造から脱却し、ギャラリーからの「投げ銭」など新たな収入源を育てる必要がある。

シェアする
ポストする

eスポーツの市場規模 現状はスポンサー頼み

若年層から注目度の高い、ゲーム対戦をスポーツ競技に見立てた「eスポーツ」の2019年国内市場規模は、前年比26.6%増の61億円、ファン数は同26.2%増の483万人であった(KADOKAWA Game Linkage調べ)。
市場規模の項目別割合は、スポンサー料が全体の約3/4を占める。eスポーツ大会を主催/協賛する大企業が、若年層へのブランド訴求効果をねらった広告宣伝費が、市場を支える構図となっている。

市場の成長に欠かせないアイテム/課金は9%、放映権料収入は8%にとどまっている。現状では、観戦者やメディアが、「eスポーツ」に付加価値を見出し、多額の資金を供出する状況にはない。
やや“話題先行”とも言いうる市場環境と考えられる。

eスポーツ市場の課題は収益源

KADOKAWA Game Linkageは今後について、、国内市場規模・ファン数はいずれも年約26%ずつ成長し、2023年には153億円、ファン数が1,215万人に増加すると予想している。
しかし、ファンの数と比較すると、市場規模の面が特に物足りないと考えられ、スポンサー料に頼った市場成長には限界があるだろう。

eスポーツ市場拡大対策は付加価値と投げ銭

ファン数増加のペースを上回る市場拡大を実現するには、

1.観戦者にeスポーツ観戦に対する付加価値を感じてもらう

2.ファンが好きなプレイヤーや、秀逸なプレイに対して少額ギフト(いわゆる“投げ銭”)を支払う習慣を確立する

 

という施策が有効だ。

1.eスポーツに、付加価値の確立を

1.「付加価値」に関しては、eスポーツに使用されるタイトルの拡充と、大会や参加プレーヤーのストーリー性の確立が必要となるだろう。

現在、日本のeスポーツで使われているゲームは、

1 「フォートナイト」など“バトルロイヤル”タイプ(海外で人気)
2 「鉄拳」「ストリートファイター」といった知名度の高い格闘ゲーム
3 コナミの「パワプロ」「ウイニングイレブン」などスポーツゲーム

の3タイプが主軸となっている。

確かに、上記タイトル群の知名度は高いが、世界中で高い人気と厚いファン層を誇る任天堂系のタイトルは含まれておらず、タイトル拡充の余地は十分にあるだろう。

eスポーツのゲームは、一部のタイトルに人気が集中している側面もある。
野球やサッカーなどのスポーツゲームは、現実のプロチームとの関連性を意識してeスポーツ大会を盛り上げるというストーリー性の付与が行われている。また、「フォートナイト」など世界大会で高額賞金が出るタイトルは、一般ファン層でも大会について興味を持ってもらえる。

しかし、その他のタイトルによるeスポーツ大会は、認知度は極めて低い。
まずは一般ファン層にどう認知させるかが大きな課題であり、大会を盛り上げるストーリー性の付与に、プロモーターの手腕が問われることとなるだろう。

2.「投げ銭」の有効性

2.「投げ銭」に関しては、Jリーグの取り組みが注目される。Jリーグ各チームは、コロナ禍による無観客試合での試合開催を見越し、新しい収入源の候補として、練習試合などでオンラインでの「投げ銭」を試験導入している。サポーターからの反響は、良好のようだ。

Jリーグとしても今後、正式開催試合にて「投げ銭システム」を導入する方針と報道されている。国内プロスポーツを代表するJリーグが「投げ銭」による新たな収入源を確保できれば、他のプロスポーツにも「投げ銭」導入が進展するだろう。

「投げ銭」の普及で市場拡大を

eスポーツは特に、オンライン実況での放送が主力になると予想されることから、「投げ銭」との親和性は良好と考えられる。一般ファン層の「投げ銭」という行動の定着は、市場拡大に大きくプラスに作用するだろう。

コメントを送る

頂いたコメントは管理者のみ確認できます。表示はされませんのでご注意ください。

※メールアドレスをご記入の上送信いただいた方は、当社の利用規約およびプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

コメントが送信されました。

関連記事