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インストアシェアとは?その意味とシェア拡大のための戦略を解説
小売店を顧客に持つ消費財メーカーのような企業は、営業での売上・シェア拡大のために取り得る選択肢がふたつあります。ひとつが顧客数を増やし、ストアカバレッジを高めること。そしてもうひとつが、1店舗あたりの販売額を増やすことです。 前者の場合は商圏調査から新規開拓の営業を推進するなど、方法論としては比較的単純なものとなります。しかし、後者を実現するためにどのような戦略を立てるべきかわからない営業部の方は多いでしょう。 本稿では、店舗あたりの販売額を増やす戦略の指標となる「インストアシェア」について、その意味や求め方、インストアシェアが重要とされる理由、シェア拡大のための戦略に必要な分析や考え方を解説します。
インストアシェアとは?小売店において自社製品が売れる割合
インストアシェア(in-store share:店頭シェア)とは、取引先である小売店の売上高のうち、自社製品でどれだけの割合を占めているかを示す指標です。
一般的に小売店は、さまざまな企業の商品を発注し、顧客の選択肢を広げる陳列を行います。例えば、家電量販店であればエアコンひとつであれ複数のメーカーの製品を扱いますし、スーパーであれば非常に多彩なメーカーの食料品や飲料品を取り扱うものです。
こうした小売店において自社製品が売れる割合、すなわちインストアシェアは、自社の売上や市場でのシェアに影響を与えます。とりわけ小売店を顧客に持つ企業の営業部にとっては重要な指標となるのです。
インストアシェアはどのように求めるのか
インストアシェアは、次の計算式で求められます。
取引先が発注した金額ではなく、実際に販売して得られた金額を割るのがポイントです。
インストアシェアはなぜ重要か
小売店を顧客に持つ企業、特にその営業部にとって、インストアシェアはなぜ重要な指標とされているのでしょうか?
その理由となる3つの効果について解説します。
1.自社製品の相対的地位の把握
自社製品が他社製品と競り合う環境となる小売店において、インストアシェアは自社製品の相対的地位を把握するのに役立ちます。
つまり、自社製品が他社製品と比較して、顧客となる小売店の売上にどれだけ影響を与えているかがわかります。
インストアシェアが競合に比べて高い場合、自社製品は顧客の売上にとって欠かせない存在となるため、今後も取引継続が期待でき、さらなる購買機会の拡大に繋がる営業提案が可能となるでしょう。
逆に低い場合は、商品力や顧客への営業提案が弱い可能性があるため、戦略を立て直す必要があるかもしれません。
2.消費者の認知拡大
製品は顧客である小売店に取り扱ってもらうだけでなく、消費者に認知され、売れなければ意味がありません。この消費者の認知という観点でも、インストアシェアは非常に重要です。
インストアシェアひいては自社製品の相対的地位が高いと、小売店での陳列にも影響し、消費者の目に入りやすい位置に置いてもらえたり、小売店が独自にボードやPOPなどを販促したりしてくれる可能性が高まります。
逆にインストアシェアが競合に比べて低いと、自社製品があまり目立たない陳列になってしまったり、値下げ販売の対象となってしまったりしやすくなります。
結論として、インストアシェアの高さは消費者の認知度とほぼ比例すると言えるでしょう。
3.店頭プロモーション効果の把握
インストアシェアは、期間限定セールやプレゼントキャンペーンといった、小売店での店頭プロモーションの効果を把握する指標にもなります。
具体的には、その製品の市場シェアからインストアシェアを差し引いたとき、その差分がプラスかマイナスで、店頭プロモーションの成否をある程度判定できます。
差分がプラスだった場合、市場シェアの方が大きいため、ある自社製品がその店舗では通常より売れていないことになります。その場合、店頭プロモーションに何らかの問題がある可能性を考えるべきでしょう。
差分がマイナスだった場合、市場全体での平均よりその店舗で特に売れていることになるため、店頭プロモーションがうまくいっている可能性があります。
シェア拡大のために必要な分析と戦略の立て方
それでは、店舗ごとに対して行うシェア拡大のための戦略について、必要な分析のやり方と戦略の立て方について解説します。
既存顧客のインストアシェアを分析する
まずは戦略の対象となる店舗(既存顧客)のインストアシェアを計算して、その数値から顧客に対する自社製品やサービスの現状を把握しましょう。加えて、製品の魅力や劣っている点のアンケートやヒアリングを実施するのも効果的です。
その結果によって、さらなるインストアシェア拡大で消費者の認知度を高め、市場のシェア率拡大につなげていったり、余裕のない店舗へのマーケティングにリソースを割いたりするといった判断が可能になります。
また、インストアシェアが低い場合に、店頭プロモーションに問題があるのか、営業活動や商品力に問題があるのかを判別しておくと、リカバリー用の戦略が立てやすくなります。
デシル分析で売上高構成比を分析する
デシル分析とは、購買履歴データをもとに全顧客の購入金額を高い順に10等分して、各ランク(デシル1~10)の購入比率や売上高構成比を算出する分析方法です。
既存顧客の分析をする上では、インストアシェアの把握だけでなく、自社の売上高を構成する顧客がどのような比率になっているかを把握することも重要です。
デシル分析によってどの店舗が自社の売上に貢献しているのかを明らかにして、上位ランクのグループに属する店舗に重点的にマーケティング戦略を実施しましょう。
例えば、インストアシェアが20%と30%の店舗があったとき、20%の店舗の方が売上高が遥かに大きい場合、30%の店舗よりも優先して戦略のリソースを充てた方が効果的だと言えます。
1W3Hに基づいて戦略を立てる
インストアシェアと売上高構成比を求め、どの店舗にフォーカスすべきかが整理できたら、最重要となるシェア拡大のための戦略作りを行います。
戦略作りは、必ず「1W3H」に基づいて論理的に行い、かつ実践可能な内容にすることを心がけましょう。「1W3H」の内容は次の通りです。
- どのお客様をターゲットにするのか(Who?)
- どのような活動をするのか(How?)
- どの程度の状態にするのか(How Many?)
- どれくらいシェアが上がるのか(How Much?)
例えば、売上規模の大きい東京都の店舗Aをターゲットに、期間限定プレゼントキャンペーンを利用した販促プロモーションを活動として取り入れ、インストアシェアを前月比で5%アップさせる、といった具体的な戦略が好ましいでしょう。
インストアシェアは売上・シェア拡大に必要不可欠なピース
インストアシェアは小売店を顧客とする企業にとって、自社製品の強みや小売店での立ち位置、消費者の認知度や店頭プロモーション効果など、さまざまな要素を分析するために重要な指標となります。
とくに総売上の高い店舗でインストアシェアを高められれば、自社の売上や市場シェア率を飛躍的に拡大させるチャンスです。
売上・シェア拡大のためにはインストアシェアの数値を把握し、デシル分析などのフレームワークによって必要な情報を洗い出し、「1W3H」に基づいた適切な戦略を立てられるようにしましょう。
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