メタバースで変わるエンタメ ゲーム会社へのM&A加速

“メタバース”への巨額投資が、エンタメ業界の構図を変えようとしている。多くの人が同時参加する仮想空間を運営するには、オンラインゲームの技術と高度なクラウド技術が必要で、大手企業によるゲーム会社のM&Aが加速する可能性もある。

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メタバースとは

メタバースとは

メタバースとは、3Dの仮想空間を意味する。大人数が同時に参加してゲームや買い物、仲間同士の交流など様々なサービスを経験することが出来る。

メタ(meta=超越した)とユニバース(universe=宇宙)を組み合わせた造語であり、文字通り仮想の世界を経験することが出来る。

メタバースサービスに関しては、2000年代初頭から存在していた。

グローバルで存在感を示した「セカンドライフ」(2003年サービス開始)は、3D空間の中でアバター同士が交流し、獲得した仮想通貨を現実の通貨に交換することも可能だ。

2010年あたりに日本の若年層に浸透したサイバーエージェントによる「アメーバピグ」などの成功例もあるが、現時点での最も有力なメタバースサービスとしては、Epic Gamesのオンラインゲーム「Fortnite」が挙げられる。

Fortnite上では、著名アーティストのオンラインライブが開催されるなど、ゲーム外でのコミュニティ要素も強まってきている。

FacebookからMetaに

FacebookからMetaに

2021年10月末に発表されたフェイスブック社の“Meta”への社名変更、並びに、事業の主軸を従来のSNSサービスから3D仮想空間を意味する“メタバース”の構築や関連サービスに遷移させる意向を示したこと、更に2021年だけでもメタバース関連へ100億ドル以上の投資を行うことは、IT関連業界やエンタメ関連業界を震撼させた。

Meta社もメタバースの本格的な普及は5~10年後と見込んでいるものの、それまでは高水準の投資が継続される見込みだ。

Meta社以外にも、マイクロソフトやソニーといった世界を代表するエンタメ関連企業も、2022年初頭に開催された米国家電ショー「CES」でメタバースへの取り組みを披露している。

メタバース運用には高い技術力が必要

メタバース運用には高い技術力が必要

メタバースの運用には、非常に多くの仮想空間上の分身となる3Dキャラクター(アバター)を、過不足なく、遅延なく動き回らせる必要がある。

それには、高度なオンラインゲーム関連技術と強力なクラウド技術が必要となる。

メタバースでも鍵を握るゲームエンジン

特に、PS5など最新のゲームコンソールと同等の、高品質なグラフィックを有するメタバースを効率的に構築するには、オンラインゲーム開発基盤のデファクトスタンダードであるUnreal Engineなどの“ゲームエンジン”が鍵を握ると考えられる。

参考記事「ゲームエンジンとは?映像コンテンツへの応用も

既にFortniteの開発元でUnreal Engineを展開するEpic Games社は、PS5/Xbox Series X/S向けに、映画「Matrix」をベースとしたプレイアブルなメタバースのデモを2021年12月にリリースしており、その技術力を誇示している。

マイクロソフトの狙いは、ゲーム技術

マイクロソフトの狙いは、ゲーム技術

また、マイクロソフトも相次いでコンソールゲーム会社の買収(2020年にベセスダ、2022年1月にActivision Blizzard)を進めている。強力なクラウド技術に加え、メタバース関連サービスの強化に乗り出す方針と見られる。

メタバース、日本の動きは?

メタバース、日本の動きは?

このようなグローバル企業の旺盛なメタバース構築意欲に対応し、国内でもメタバース構築を表明する企業も現れている。

NTTドコモは、世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」を運営する株式会社HIKKYとの資本・業務提携を2021年10月に発表。KDDIは2022年春から大都市に向けてリアルな街と仮想空間が融合するメタバース「VIRTUAL CITY」を展開する予定など、資金力/広範なユーザーを抱える携帯電話キャリアの取り組みが先行している。

エンタメ関連では、アバター販売で実績を有するグリーがメタバース関連事業への積極的な関与を表明するなど、徐々にメタバース事業化を目指す企業が広がってきている。

日本ならではの差別化が必要

ただし、国内企業がメタバースに対してMeta社のような巨額な資金を投入し得るとは考え難く、グローバルなメタバースに対して何らかの差別化を模索することとなるだろう。

その観点からは、ゲームでも見られるような、フォトルックなグラフィックに対して、アニメ調のセルルックを基盤とし日本アニメやキャラクターとの連携が容易なメタバースの構築が一つの解となりうると考えられる。

また、技術面に関しては、Unreal EngineやUnityといったゲームエンジンを活用して効率的にメタバースを構築する技術力を持つ会社が注目される可能性があるだろう。

メタバースを巡るM&Aに注目

先に述べたマイクロソフトのゲーム会社買収のように、メタバース運用に必要なゲーム技術、クラウド管理技術をM&Aによって獲得する動きは、十分考えられる。

2022年は、有力コンテンツ関連会社への出資/買収や、高い3DCG技術を有する会社の買収など、メタバースをテーマとするM&Aの動向にも注目したい。

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