自社株買いとは?企業のメリット・デメリット、最新事例も解説

最近、メディアの情報で「自社株買い」という言葉を目にする機会が多いです。自社株買いは企業の経営戦略・財務戦略の一つであり、企業や投資家にとってのメリットやデメリットをしっかりと理解しておく必要があります。本記事では、自社株買いのメリット・デメリットに加え、自社株買いの最新事例を紹介します。

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自社株買いとは?

自社株買いとは?

自社株買いとは、企業が自社の株式を自社の資本で買い戻すことです。

自社株買いは従来様々な制限がありましたが、2001年10月の商法改正以降、目的を定めない自社株買いができるようになってから、多くの企業が財務戦略の一つとして検討し、実践するようになりました。

自社株買いのメリット

自社株買いのメリット

自社株買いには様々なメリットが存在します。企業の目的に則したメリットがあれば、自社株買いを検討する意義があると考えられます。

既存株主・投資家へのアピール

自社株買いは自社株の価値を高められるため、投資家へのアピールとなります。自社株の価値の向上は、「1株あたり利益(EPS)」と「自己資本利益率(ROE)」、「株価収益率(PER)」の3つの観点で説明できます。

1株あたり利益(EPS)の増加

EPSを求める計算式は「当期純利益÷発行済株式数」です。当期純利益が減少しないと仮定すると、市場に出回る株式数が自社株買いによって減少しているため、EPSが向上します。したがって既存株主や投資家に対し、業績の向上としてアピールが可能です。

自己資本利益率(ROE)の上昇

ROEは「当期純利益÷自己資本×100」という計算式で求められます。自社株を購入するために自己資本を用いるため、自己資本が減少し、ROEが高まります。ROEは、利益を上げるための資本利用の効率を表す指標であるため、ROEの上昇が企業評価の向上につながります。

株価収益率(PER)の低下

PERは「株価÷EPS」の計算式で求められます。上述の通り、自社株買いによってEPSが向上するため、PERは低下します。PERは、企業の利益に対して株価が割安なのか、割高なのかを示す指標です。したがって、自社株が「割安な株」と判断され、投資家の注目を集められるのです。

自社株買いは株価上昇を促せるため、経営者が自社の株価が低位推移していると認識しているということのアナウンス効果があると言われています。経営者が、「今の自社の株価は経営陣が認識している株価と比べて不当に低いので、当社は自社株買いを行います」といった具合です。

一方で、「総還元性向」という指標もあります。総還元性向は「(配当総額+自社株買い総額)÷純利益×100」という計算式で求められます。企業による株主還元の度合いを示す指標であり、数値が大きいほど高いです。すなわち、自社株買いの額の増加は、株主に対する還元に注力していると表すアピールにつながります。

ストックオプション発行による役職員のモチベーション改善

企業は市場から自社株買いにより買い集めた株式を消却するだけでなく、「金庫株」として株式のまま保有し続けることも可能です。

金庫株として保有する株式は、「ストックオプション制度」に利用できます。ストックオプションとは、あらかじめ決められた価格で株式を購入できる、従業員や役員の権利です。

自社株買いで購入した株式を、従業員への金銭的なインセンティブ制度として活用できるため、自社株買いは従業員の株価上昇へのモチベーションを改善し、企業価値の向上につなげられると言えます。

敵対的買収の防止効果

敵対的買収では、発行済み株式総数の過半数を購入する必要があるため、コストがかかります。したがって、株価上昇が期待できる自社株買いを実施すると、敵対的買収のコストがますます上がる可能性の示唆となるため、買い占められるリスクの低減につながります。

また、株価上昇は経営者への株式市場からの信頼となり、信頼を受けている企業は敵対的買収の標的となりづらいため、自社株買いで株価上昇を目指す動きは防衛策として推奨されます。

自社株買いのデメリット

自社株買いのデメリット

メリットの多い自社株買いですが、デメリットも存在します。
ここでは、自社株買いにおいて想定されるデメリットについて紹介します。

既存株主の反感を買う

上述の通り、自社株買いは自社株の価値を高めるため、既存株主にとってもメリットとなります。一方で、自社株買いによる還元は、自社株買いに応じ、市場で株式を売却した株主のみに資金が還元されるため、不公平だと考える人も存在します。

キャッシュ残高の減少

自社株買いが企業の有するキャッシュ(自己資本)で自社株式を株式市場から購入する行為であるため、相当量のキャッシュの準備が必要となります。

自社株買いを行うことでキャッシュ残高は減少するので、将来的に大きな投資案件などが控えているかなど、中長期的な資金繰りを想定して自社株買いを実行しないと、思わぬ資金ショートに直面してしまいます。

また、「自己資本÷総資本×100」で求められる自己資本比率(ROE)を低下させてしまうため、財務リスクがあるとみなされてしまう可能性があります。

計画不足による株価低下

取得した自社株の処理方法には、消却や金庫株としての保有に加え、売却処分があります。
ただし、計画を立て慎重に売却を行う必要があります。なぜなら、自社株買いによる株価改善とは逆の理屈で、自社株の売却においては株価低下が懸念されるためです。

発行株式数が元に戻るため、EPSやPERも元に戻り、自己資本の増加によってROEも低下する恐れがあります。

また、自社株買いのメリットとして、自社の株価が不当に低いと暗に示すアナウンス効果がある一方で、自社株の放出は、自社の株価が適正、もしくは高いと経営者が考えているととらえられる可能性があります。

自社株買いの最新事例

自社株買いの最新事例

2024年3月期、自社株買い額と配当を合わせた「株主還元総額」は約25億円という過去最高の見通しが立っています。配当総額は前期比6%増、自社株買いは9%増の見通しでどちらも過去最高です。

株主還元が重視される時勢の中、最近発表された自社株買いの事例について紹介します。

伊藤忠

伊藤忠商事は、2024年4月3日に公表した2025年3月期の経営計画において、過去最大の約1500億円の自社株買いを実施し、総還元性向を50%程度に高める計画を発表しました。

この発表後の伊藤忠株は、一時前日比7%高と、過去最高値に近づき、終値は6%高となりました。

株主に対する還元への注力を過去最高額の自社株買い計画で示し、既存株主や投資家へのアピールできたという点が、順調な株価上昇の一因として考えられます。

ローツェ

半導体関連装置メーカーのローツェは、2024年4月11日に自社株買いを発表したところ、翌日ローツェ株が急騰し、上場して以来最も高い株価となりました。

12日の東京株式市場では、株主還元策を公表した企業の株式を買う動きが目立ち、5億円を上限とする自社株買いや株式分割を発表したローツェが筆頭です。

日経平均が80円高と、株式相場のトレンドである方向感が乏しい12日に、ローツェは23%高をたたき出し、東証プライムの値上がり率ランキングで一位となりました。

アスクル

事務用品の通信販売会社であるアスクルは、2024年3月15日、225万株、45億円を上限とする自社株買いを発表しました。

臨時的に発生した特別利益を自社株買いに回す経営姿勢や、45%と定められた総還元性向の目標が評価され、前週末比8%高という3か月ぶりの高値水準をつけました。

自社株買いで企業価値を高める

自社株買いは自社の株価対策となると同時に、株主からの信頼を得て敵対的買収などの脅威から自社を防衛する財務上の戦略でもあります。取得した株式の処理も適切に実施し、自社株買いで得られるメリットを最大限享受しましょう。
近年、自社株買いを始めとする株主還元の動きが多くみられています。自社株買いのメリット・デメリットを具体的にイメージするため、メディアなどで発信されている、海外事例も含めた最新の事例の確認が推奨されます。

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