攻勢強まる韓国「Webtoon」2強 「NAVER」「Kakao」のグローバル戦略

日本でも、韓国発電子コミックWebtoonの存在感が増している。世界2強である「Kakao」は日本国内では「ピッコマ」、「NAVER」は「LINE マンガ」という名前で展開。世界最大のマンガ市場を抱える日本のコンテンツ産業は、新しい時代への対応が求められている。

シェアする
ポストする

Webtoonとは

Webtoonとは

Webtoonは、韓国発の電子コミック配信サービスであり、スマートフォンでの閲覧に最適化されている。フルカラーで制作され、縦スクロールで読みやすいコマ割りになっている。

特に、韓国の「NAVER」と「Kakao」がグローバルで2強を形成している。

コミック市場で現在世界最大市場となっている日本(電子と紙の出版物を併せて7,000億円弱)においても、Kakaoの日本法人が運営する電子コミックサービス「ピッコマ」、NAVERが実質的に運営する「LINE マンガ」(Yahoo傘下のebook Japan買収を発表)が大きな存在感を示している。

特に「ピッコマ」に関しては、アプリでの月商が100億円規模にも達していると目されている。

また、Kakaoは「Kadokawa」の株式約7%を保有する筆頭株主となっている。

Webtoonとは

▼参考記事はコチラ
「韓国「Webtoon」から世界へ 日本→アニメ化の分業確立へ」

このような日本の電子コミック市場での韓国勢の攻勢は、先述したスマートフォンに適した電子コミック形態であるWebtoonの市場認知が拡がり、Webtoonで先行する韓国の有力タイトルを自社アプリ上に展開できる点が一因と考えられる。

個人制作の日本、分業制作の韓国

個人制作の日本、分業制作の韓国

日本のマンガの多くは紙の雑誌・単行本に向けに作られ、白黒ページ中心、ヨコ2ページの「見開き」での見栄えを重視している。通常の日本型の漫画制作は、マンガ家(原作・作画)のアイディア、独創性が重視される。あまり分業は意識されず、マンガ家は基本的にすべての工程に関わる。比較的組織化が進んでいるケースはあっても、マンガ家の作業をアシスタントが「補佐」して仕上げるという、個人営業型の制作スタイルとなっている。

ゲームに似ているWebtoonの分業システム

一方、Webtoonは、フルカラーという形態もあり、作画やプロット、採色などの制作工程を別工程で進めて統合する工房型制作スタイルを採ることが一般的とされる。

このような分業を前提とした制作スタイルは、デザイナー、脚本、プログラミング等をパラレルに進めて統合するゲーム開発と近似している。

今後、開発費高騰でスマホゲームの新規タイトル開発が困難となった中小スマホゲーム会社が、ゲーム開発リソースをWebtoon開発に転用する可能性もあるだろう。

更新頻度を維持するためにも分業は必要

配信に関しては、動画配信や投稿小説にもみられる通り、更新頻度が重要である。読者に注目され人気ランキングで高い地位を保持するためには、定期的な更新頻度を継続する必要がある。

この更新頻度の維持のためにも、分業による生産性向上が必須である。

世界的に存在感を増すWebtoon

世界的に存在感を増すWebtoon

スマホでの閲読に適したWebtoonは、韓国、日本のみならず、グローバルでの存在感も上がってきている。

NAVER傘下でWebtoonを展開するNAVER Webtoonは、グローバルのMAU(月間アクティブユーザー)が7,000万人以上に達しており、IPOを検討している。2021年8月には米国を代表するコミックブランドで、関連IPの映画化も多いDCコミック(スーパーマン、バットマンなど)との提携を発表。DCコミックのキャラクターがWebtoon化される見込みである。

今後も、このようなグローバルIPとWebtoonとの連携は、NAVERの経営スピードを考慮すると、ますます進展していくものと考えられる。

Kakaoに関しても、日本法人のカカオジャパンが、先日600億円規模の資金調達を発表しており、グローバル化やコンテンツの拡充のために積極投資を行う方針としている。

既に韓国では、日本でもドラマが大ヒットした『梨泰院クラス』を代表に、Webtoonのドラマ化などコンテンツの2次展開も積極的に行われている。日本でも韓国Webtoon作品のアニメ化が行われるなど、Webtoonがグローバルコンテンツの源流としても存在感を高める可能性がある。

国産Webtoon制作の機運も

国産Webtoon制作の機運も

このようなグローバル電子コミック市場やコンテンツ関連市場でのWebtoonの存在感向上に対し、日本のコンテンツ関連会社にもWebtoon制作機運が高まってきている。

出版関連や電子コミックプラットフォームにとどまらず、ゲーム会社やコンテンツ関連会社も新規事業としてWebtoon制作参入を検討する会社も増えている模様である。

その際には、先述の通り、分業を意識した制作チームを保持する必要があり、従来の有名マンガ家一人を抱えればよいという考えを、改める必要がある。

また、更なる効率化のためのツールを含めた制作のデジタル化が求められるだろう。

生まれるビジネスチャンス

このような観点から、ゲーム開発人材を自前で抱えるスマホゲーム会社や、ゲーム開発者の派遣で実績を有するエンターテインメント系人材派遣会社にとって、Webtoonはチャンスとなる。現在マンガコンテンツを制作する会社にとって、Webtoon制作には多岐にわたる人材が新たに必要となる。ゲーム会社・人材派遣会社と、マンガコンテンツ関連会社の連携、場合によってはM&Aの進展が注目される。

コメントを送る

頂いたコメントは管理者のみ確認できます。表示はされませんのでご注意ください。

※メールアドレスをご記入の上送信いただいた方は、当社の利用規約およびプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

コメントが送信されました。

関連記事