CASEとは?各キーワードや関連するビジネスについて解説

近年自動車を取り巻く環境は、自動運転や電動化などの技術革新にともなう大変革の過程にあるといわれています。 そのようななかで、自動車関連の企業はもちろん、異業種の企業にとっても無視できない脅威とチャンスが生まれようとしています。 そこで注目されるのが「CASE」です。CASEはこれからの車の常識を変える4つのキーワードで構成されており、将来的なビジネスや社会の変化を予測するうえで知っておく必要があります。 当記事では、CASEの各キーワードに関する知識や、それぞれに関連のあるビジネス概況や将来的な見通しなどを解説します。

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CASEとは?自動車産業を変革するキーワード

CASEとは、自動車に関する以下4つのキーワードの頭文字をとった造語です。

  • Connected(コネクテッド化)
  • Autonomous(自動運転化)
  • Shared & Services(シェア/サービス化)
  • Electric(電動化)

2016年にパリで開催されたモーターショーにおいて、メルセデス・ベンツが発表した中長期戦略の中で用いられて以降、自動車業界の新たな指針となっています。

これら4領域が進展していくと、車に関する商品構造やビジネスモデル、バリューチェーンや競争の相手などが大きく変化し、自動車産業だけでなく社会全体にも脅威とチャンスを生み出すともいわれています。

では、CASEの各キーワードについて、どのように社会が変化するのか、どのような関連ビジネスが考えられているのかを詳しくみていきましょう。

C(Connected:コネクテッド化)とは?関連するビジネス

「C(Connected:コネクテッド)」は、自動車がインターネットと通信できる機能や、データ通信を活かしたさまざまなサービスが関連する分野です。

この分野の基本的な構造は、次のようなサイクルで成り立ちます。

  1. 車載通信機(DCM)を搭載した自動車(コネクテッドカー)が道路を走る
  2. センサーなどによって車両状態や周囲の交通状況などのデータを収集する
  3. 収集したデータを無線通信でインターネット上に送信する
  4. データの蓄積解析を経てサービスとしフィードバックされる

たとえば、1台1台の位置情報がリアルタイムかつ正確にわかると、事故発生時の緊急通報システムや、盗難車両の追跡システム、災害時の通行実績情報の配信システムなどに有効活用できます。

ほかにも、安全運転支援を強化する交通インフラ(信号や道路標識)との情報通信や、ブレーキ回数や加速減動作といった運転中の行動から事故リスクを測定して保険料を算出するしくみ(テレマティクス保険)など、様々なアイデアが少しずつ実用化・導入されています。

すでに多くの自動車メーカーが独自のコネクテッドサービスを展開し、また通信インフラとして必須となる「5G」の研究開発も進んでおり、将来的にはほぼすべての乗用車がコネクテッド化される見通しです。

その頃には携帯電話がスマートフォンに進化したときと同様に、アプリやシステム関連のビジネスが再び急成長する可能性が高いでしょう。

A(Autonomous:自動運転化)とは?関連するビジネス

「A(Autonomous:自動運転化)」は、運転手が操作せずとも自動で車の走行や制御を可能とする技術です。

自動運転にはレベルが設定されており、自動化が行き届く機能の範囲や自動走行が可能な領域などで以下のように分かれています。

レベル 名称 機能例
1 運転支援 自動ブレーキや自動追従機能などの前後・左右いずれかの車両制御
2 部分運転自動化 ハンズオフ運転など特定の状況下(高速道路走行時など)においてレベル1の前後・左右を組み合わせた車両制御
3 条件付き運転自動化 自動追い越しや自動分合流など特定の状況下におけるすべての車両制御(ドライバーの適宜対応要)
4 高度運転自動化 特定の状況下におけるあらゆる車両制御
5 完全運転自動化 原則として場所・状況を問わないあらゆる車両制御

抜粋:自動車運転の安全ガイドライン | 国土交通省自動車局

自動運転レベル1〜2の技術が搭載される市販車はすでに多く出回っており、2020年ごろからは国際的にみるとレベル3も徐々に実現しつつあります。

さらにレベル4については、シャトルやバス、タクシーなどに搭載する方向で開発や実証実験が盛んになっています。マーケット調査会社の富士経済によれば、自動運転シャトルの国内市場は堅調に拡大し、2030年には170台、2035年には460台が導入される見込みです。

自動運転に関するビジネスチャンスとしては、車が「移動するための個室空間」という認識が主流となる頃のサービスアイデアが関連するでしょう。

たとえば、移動するパーティールームやホテル、会議室、倉庫といったレンタルサービスが挙げられます。

ほかにも、無人の移動販売車や清掃車、高齢者の自動買い物代行サービス、無人パトロールカーなど、自動運転車がさまざまなサービスや労務を肩代わりする可能性が広がっているのです。

参考資料:自動運転シャトルの国内市場を調査 富士経済

S(Shared/Service:シェア/サービス化)とは?関連するビジネス

「S(Shared/Service:シェア/サービス化)」は、車を個人が所有する「モノ」と捉えるのに対し、必要に応じて貸し借りできて、周りと共同所有できる「サービス」として捉える新しい考え方です。

「S」は4つの領域の中でも、自動車関連ビジネスや社会のあり方そのものを大きく変える可能性を秘めており、それを後押しする手段として残り3領域の革新的技術があると位置づけられます。

シェアについては、ドライバーが自分で運転する車を借りる「カーシェアリング」と運転者付きの車に乗客として乗る「ライドシェアリング」の2種類があります。

カーシェアリングはレンタカーとは異なり、数十分から数時間程度の短い期間で安く、いつでも乗れるのが特徴です。日本では駐車場の確保が難しい都市部などで、乗車した所に車を返却するステーションベース型が主に普及しています。

ライドシェアリングは、主に自家用車のドライバーと目的地が一致する利用者が相乗りするための個人間マッチングサービスが国際的な主流です。

しかし日本では自家用車を用いた有償旅客が法律(道路運送法第4条)で禁止されているため、タクシーの配車サービスやタクシー限定の相乗りマッチングサービスなどにとどまっています。

当面はシェアの拠点となる駐車場などの運営事業や、タクシー事業を巻き込んだマッチングや配車アプリの開発事業などで競争が激化していくでしょう。

参考資料:道路運送法 | e-Gov法令検索

E(Electric:電動化)とは?関連するビジネス

「E(Electric:電動化)」は、現在の主流となる内燃機関(ガソリンエンジンなど)で動く自動車から、ハイブリッド(HV)や電気自動車(EV)へシフトする方針・取り組みです。

これには、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出削減という環境への配慮や、EVという新しい産業の育成といった目的が背景にあります。

近況としては、EUが内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を発表していたり、自動車産業では後発だった中国が巻き返し策としてEVの普及を推進していたりと、多くの国が国策レベルで進めています。

日本のEV販売台数は2021年10月時点で乗用車全体の約1%となっており、普及はこれからというのが現状です。

EV市場最大の特徴は、自動車メーカーやバッテリーの供給会社だけでなく、あらゆる異業種の企業が参入を試みている点にあるでしょう。

EVは既存の自動車と比べて部品点数が圧倒的に少なく、半導体産業でよくみられる開発と生産を分担する水平分業を採用すれば量産技術ノウハウもゼロベースから始めやすいとされます。

「CASE」が社会的に影響のあるキーワードとされる現状もあいまって、自動車産業の外部からも意欲を示す企業が増えているのです。

自動車関連のエコシステムに参加する企業が増えれば、その分ビジネスチャンスも増えるでしょう。

参考資料:燃料別販売台数(乗用車) | 統計データ | 一般社団法人日本自動車販売協会連合会
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「MaaS」を含むCASEの今後の動向に注目

これからの車は、ハード、技術、サービスなどあらゆる面で革新され、社会システムの一部となっていくことが予想されます。

この将来に深く関連するのが、移動すること自体をサービスとしてとらえる「MaaS(Mobility as a Service)」という考え方です。

自動車というモノがサービス化されることで、自動車産業以外の業界をも巻き込む時代になっていくのはほぼ間違いありません。

CASEという4つの領域をどのように組み合わせ、いかに相乗効果を発揮してMaaS関連の事業・サービスを展開していくかが今後の焦点になるでしょう。

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