サーキュラーエコノミーとは?注目される理由と最新動向を解説

近年、人間の経済活動が原因となる環境問題が深刻化しています。 気候変動、大気汚染や資源不足など、全世界に多大な影響を与えている問題についてはグローバル規模での早急な対策が求められている状況です。 環境問題の解決のため従来の大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした一方通行型の経済モデルの限界を迎えた現在、既存の資源を使って廃棄物を出さずに循環させる経済の仕組みである「サーキュラーエコノミー」への転換が進んでいます。 欧米を中心にビジネスへの導入が進められ、国内企業でもサーキュラーエコノミーの考え方をビジネスモデルに組み込む動きが注目され始めました。 本記事では、サーキュラーエコノミーの概要や、注目される理由、国内を中心とした事例や最新動向を解説します。

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サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーとは、資源を無駄にせず活用し、循環させる経済モデルです。

従来は、資源の採取→生産→消費→廃棄で構成される一方通行の経済モデル「リニアエコノミー」が浸透しており、経済を大きく発展させてきました。

しかし、環境問題の深刻化で社会的にサステナビリティも重視される動きが高まり、サステナビリティと経済成長を両立する「サーキュラーエコノミー」への移行が全世界で進んでいます(注1)。

サーキュラーエコノミーを推進しているエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則(注2)を掲げています。

  1. 廃棄物と汚染を出さない設計をする
  2. 原料・製品を使い続ける
  3. 自然システムを再生する

特に「①廃棄物と汚染を出さない設計をする」は、サーキュラーエコノミーの主軸である「廃棄物を出さない」に通じる原則で、現在のリニア経済の仕組みからの根本的な転換に寄与するため、最も重要視すべき項目と考えられています。

これらの3原則を満たした取り組みは、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行に大きく貢献するでしょう。

循環型社会との違い

サーキュラーエコノミーと似た意味を持つ言葉として、「循環型社会」が挙げられます。

似た概念ではありますが、この二つの言葉には決定的な相違点があります。

循環型社会は、発生した廃棄物をできるだけ無駄にせず再び循環させることを重要視する考え方です。

一方、サーキュラーエコノミーは最初の設計時点から廃棄物を出さず、長く活用することを重視します。

サーキュラーエコノミーでは廃棄物を出さない前提で経済活動が行われる点が循環型社会との大きな違いといえるでしょう。

サーキュラーエコノミーが注目される理由

近年、サーキュラーエコノミーがビジネスで注目されている理由は、主に以下の3つです。

  1. 持続可能なビジネスモデルの構築
  2. 企業価値向上
  3. 環境破壊による変化への対応

以下で詳しく解説していきます。

①持続可能なビジネスモデルの構築

従来浸透していた「リニアエコノミー」は、持続可能な経済モデルではありません。

効率的な経済成長を重視した大量生産・大量消費・大量廃棄は、地球環境の破壊ももたらしています。

地球環境の破壊により気候変動が悪化し、エネルギー供給が不安定になる可能性が高いです。

今後世界人口の増加により資源の消費量が増え続ければ、将来的には資源が枯渇しビジネスにも影響が及ぶでしょう。

このような状況を打破するサーキュラーエコノミーによる持続可能なビジネスモデルの構築は企業の利益にもつながります(注3)。

②企業価値向上

環境問題の深刻化に伴い、サステナビリティの観点を備えたビジネスモデルへの注目が高まっています。

投資家の意思決定にも大きな影響を与えるため、サーキュラーエコノミーへの移行のための取り組みを行う企業はサステナビリティを意識していると業化され、企業価値を向上させられる可能性があります。

③法的規制・デジタル化との関連性

経済成長を重視した活動による環境への影響が重要視されるようになり、温室効果ガス排出量の削減目標設定など各国で厳しい基準が課せられています。

基準の達成のための規制にも対応しつつ、利益を生み出せるようサーキュラ―エコノミーに着目したビジネスの展開は企業にとって重要です。

また、近年の目覚ましい技術発展による各企業のデジタル化は製品の寿命長期化や再生産・再利用を促進します。

このように、政府による規制やデジタル化などの変化への対応とサーキュラーエコノミーの実現には密接な関連があるため、企業にとっては重要視すべき問題なのです。

サーキュラーエコノミーに対する国内企業の事例

サーキュラーエコノミーの実現のため、欧米諸国をはじめとする世界中の企業が様々な取り組みを行っています。

以下では、国内企業による取り組み事例を紹介します。

伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社はサーキュラ―エコノミーの実現に向けて国内でも積極的に取り組む企業です。
2021年7月にはLOOP JAPAN合同会社と資本・業務提携し、持続可能なリユース容器を利用した循環型ショッピングプラットフォーム事業の拡大のため協力関係を強める意向を示しました(注4)。

また、2021年10月19日から国内法人向け中古携帯端末の流通事業へ参入したことを発表し、中古携帯端末のレンタルサービス「Belong One」と、買取買取サービス「Belong買取for Biz」の提供を開始しました。

このように幅広い事業の展開により、サーキュラ―エコノミーの実現に貢献しています。

株式会社ファーストリテイリング

大手アパレルブランド「ユニクロ」で有名な株式会社ファーストリテイリングも、サーキュラーエコノミーの実現に寄与してビジネスを展開する企業です。

事業の中核をサステナビリティとしており、多角的で読みやすい情報提供を行うことで投資家からも高い評価を得ています。

2020年には、回収したユニクロの服から再び服を作るプロジェクト「RE.UNIQLO」を開始し、商品第1弾となる「リサイクル ダウンジャケット」を11月2日(月)より発売し、話題となりました(注。今後の動向にも目が離せない企業の1つです。

サーキュラーエコノミーのための政府の最新動向

サーキュラーエコノミーへの移行は政府にも推進されている重要な課題です。

2020年5月22日には経済産業省から「循環経済ビジョン2020」が発表されています。1999年の「循環環境ビジョン」では廃棄物やリサイクル対策が中心となっていたのに対し、経済活動を循環経済へシフトさせる方向性が明確になりました。

また、2021年にはサーキュラーエコノミーの実現に貢献する企業が評価され、融資を受けられるよう、環境省と経済産業省が「サーキュラーエコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」を公開しています。

国内でのサーキュラーエコノミーへの移行を加速させるためには、政府の取り組みは大きく影響するでしょう。今後の動向にも目が離せません。

まとめ

今回は、サーキュラーエコノミーについて詳しく解説しました。
各企業でビジネスへの導入が進むサーキュラーエコノミーは、現状のリニアエコノミーの問題点を解決するだけでなく、持続的な経済成長も可能にする経済モデルです。
今後はリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行がさらに加速し、重視されるでしょう。

引用(参考)
注1:From a linear to a circular economy | Circular economy | Government.nl
注2:Circular Economy Hub – サーキュラーエコノミーハブ
注3:循環型経済への道‐なぜサーキュラーエコノミーが主流になりつつあるのか‐ | PwC Japanグループ
注4:LOOP JAPANとの資本・業務提携締結について|プレスリリース|伊藤忠商事株式会社
注5:廃棄物管理と資源効率の向上 | FAST RETAILING CO., LTD.
注6:サーキュラーエコノミーに係る サステナブル・ファイナンス促進のための 開示・対話ガイダンス |2021 年1月 経済産業省 環境省

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