生産効率とは?計算方法や「生産性」との違い、向上方法まで解説

生産にかかるコストを無駄なく活用できているかを把握したいとき、「生産効率」の算出が効果的です。 生産効率を上げることで、製造ライン全体の作業効率が上がり、無駄のない現場作りが実現可能です。市場の競争激化に対応し、限られた人的コストを有効活用するためにも、改めて生産効率を見直すことは大切といえます。

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生産効率の意味と計算方法

「生産効率」の意味と計算方法について解説します。従業員1人ひとりが行える作業量を増やし、より多くの生産を行うことで、生産効率を高めることができ、生産性の向上にも繋がります。

生産効率とは

「生産効率」とは、生産における稼働状況が分かる指標です。生産効率を算出すると、生産に必要なコストに対し、実際はどれくらいの人・時間などのコストがかかったかがわかります。例えば10個の部品を1時間で製造をする機械が、故障や整備不良などで、1.5時間かかってしまった場合、生産効率が低下したといえます。
「生産効率」とは、生産における稼働状況が分かる指標です。

生産効率の計算方法

生産効率の計算式は以下のとおりです。

生産効率= 生産にかかるコスト(人・時間) ÷ 投入コスト(人・時間)

生産にかかるコストとは、製造に必要となる人数や時間などを指します。

一方、投入コストとは製造に対して実際に要した人数や時間です。
このほかにも、かかった金銭的コストや物の数量などでの計算もできます。

たとえば人間10人でできる仕事に対し、実際は20人が必要となった場合、生産効率は10÷20=0.5となります。

パーセンテージで表すと生産効率が50%、つまり1人が本来の半分の働きしかしていないことになり、作業で無駄が生じていることが読み取れます。

生産効率が100%に近づくほど、無駄がなく効率的な製造ラインを実現できていることになります。

生産効率と生産性の違い

似た言葉に、コストに対する出来高(生産量)を示す「生産性」もあります。生産性を算出することで、ものやサービスをどのくらい少ないコストで生産できたかがわかります。

生産性は労働力ではなく「出来高」にフォーカスしたものなので、生産効率とは意味が異なります。生産性の計算式は以下の通りです。

生産性=産出量 ÷ 投入量

産出量とは、「生産できた部品の数」や「販売額」など、実際にどれだけのものが生産できたのかを指します。

投入量は、従業員の数や生産に必要な工数、消費した原料など、生産のために投入した資源の量を指します。

例えば10人の従業員が100個の製品を製造した場合、従業員1人あたりの生産量は10個となります。

このように、生産性は投入した資源に対する成果を示す指標、生産効率は最大限の成果を産むための指標です。

生産効率を向上させる方法

生産効率を上げるためには、現状の問題点を把握し、製造ラインの改善を重ねることで、最大限のパフォーマンスが発揮できる環境を整える必要があります。

ただし製造ラインを一度に改変すると、トラブルにもつながりかねません。
現場社員との連携を大切にした上で、少しずつ改善しましょう。

具体的な改善方法は以下の通りです。

1.生産フローを見直し、作業手順を効率化する

生産効率が低い場合、生産フローのどこかに業務を停滞させるボトルネックとなる部分があるはずです。

そうした部分が生産効率を押し下げているため、まずはそれがどこなのか洗い出しをしましょう。

ボトルネックとなる箇所では、以下のようなことがしばしば考えられます。

  • 作業の遅延がよくある(作業にあたる人数が不足している)
  • 作業内容の頻度が高い・または多い
  • 同じミスが頻発する

洗い出しは、生産フローを細かく分割し、それぞれの工程にかかる時間を明確にすることで容易になります。
ボトルネックとなっている箇所が分かれば、そこを重点的に改善していきましょう。

製造ラインの停滞や遅延がある場合は、まずはどの持ち場も常に滞りなく作業が進められるよう、改善する必要があります。

そのために、生産フローを見直し、作業手順をより効率化しましょう。

持ち場ごとの稼働効率が上がれば、全体の生産効率も自然と上がる可能性が高まります。(注1)。

2.設備や生産環境を見直す

同時に、設備や生産環境そのものを見直すことも重要です。

たとえば製造ラインを流れる製品が、次の工程へ行くまでの距離を最短化したり(注1)、似た作業の持ち場を近くしたりといったことです。
現場内の環境を見直すことでも、生産効率が上がる場合もあります。

また、製造機器の歩留まりが悪い場合や、製造機器そのものに不調が頻発する場合は、機器の交換を検討するのも1つの手でしょう。

3.最適なロット数を検討する

工程そのものや設備だけではなく、一度に製造する製品の量(生産ロット数)を調整することで、結果的に生産効率も上がる可能性があります。

生産現場には、それぞれに最適なロット数があります(注2)。

たとえば1つの生産ロットの設定が多すぎる場合、各製造フローにかかる時間が長くなり、稼働効率が下がっているかもしれません。また、余剰在庫出てしまう場合もあるでしょう。

最初に設定した内容にこだわらず、適宜ロット数の見直しをしていくとよいでしょう。

4.不良品を減らし歩留まりを上げる

不良品や作業ミスが出ていないかにも、注意を払いましょう。

不良品や作業ミスが出ている場合、無駄なコストが発生し、結果的に生産効率を下げている可能性があります。

不良品やミスが発生する場合はその原因を探り、改善に努めましょう。

具体的な改善策としては、ミスの頻発する箇所に人員を増やしたり、製造ラインに立つ従業員への教育やフォローを徹底したりする方法が挙げられます。

不良品が減り、利益につながる製品の割合が上がれば、生産効率だけでなく生産性も高く維持できるでしょう。

5.IT化を検討する

生産管理システムなどのITツールを導入するのもよいでしょう。生産管理システムでは、在庫管理、工程管理、進捗管理など、あらゆる工程の一元管理が可能です。

コストはかかりますが、紙やエクセルでデータを管理するよりも紛失やミスが起こりにくく、より正確に管理ができます。

また、カメラやセンサーを設置しIoT化を進めることで、リアルタイムに情報を得られ、また人では気づきにくい異常を検知することができます。

勤怠管理、経費精算、カスタマーサポートなど、製造以外の業務にITツールを導入し、コスト削減に繋げるのもよいでしょう。

また、中小企業・小規模事業者のITツールの導入を支援するIT導入補助金が受け取れる場合もあるので、気になる方はぜひ調べてみてください。

生産効率を向上させる際のポイント

生産効率を向上させるためには、以下のポイントを意識しましょう。

  • 目標値を具体的に設定する
  • 現場の従業員と共通認識を持つ
  • 従業員のケアを怠らない

特に製造業は、現場に立つ従業員のモチベーションが大きく生産効率に影響します。
そのため、トップダウンで一方的に施策を打ち出すのではなく、現場との連携を大切にしつつ生産効率化を目指しましょう。

また、生産効率の向上は一朝一夕でできるものではありません。
たとえば製造フローを変更した場合、従業員が慣れるまで一時的に生産効率の低下も考えられるしょう。

そのため、生産効率化は計画的に中長期的な目線での実施をおすすめします。現場社員との連携を大切にした上で、少しずつ改善しましょう。

目標値を具体的に設定する

まずは製造フローをどのように改善するのか明確に内容を定めた上で、目標値を設定しましょう。

目標値は従業員のモチベーションを高く維持するためにも、現実的に達成しやすい目標値を少しずつ設定していくと良いでしょう。

なお、目標値を従業員に共有する際は、具体的な施策と目的をあわせて伝えることを忘れないよう注意しましょう。

この点を怠ると、従業員のモチベーション低下につながり、ひいては生産効率が低下する危険があるためです。

現場の従業員と共通認識を持つ

現場の従業員とは、生産効率化の改善目的と具体的な施策について共通認識を持つようにしましょう。

トップダウンで指示を出すと、現場の従業員が付いて来ず、思った結果が出ないケースもしばしばあります。
なぜなら、指示に対する認識にズレが生じているためです。

たとえば製造フローがどういった目的でどのように改善されるのか、しっかりと説明しましょう。

社内における認識の統一によって、生産効率化がスムーズに行えるだけでなく、改善後のトラブルが生じにくくなります。

従業員のケアを怠らない

生産効率を100%に近づけるためには、従業員全員が無駄なく稼働する必要があります。

そのためには従業員のケアを怠らず、働きやすい環境を提供することも重要です。

たとえば適性を判断した上での人員再配置や、福利厚生の強化などの施策も良いでしょう。

こうした施策で適切に従業員のモチベーションを上げるためには、常に現場の声を吸い上げられる体制作りが欠かせません。

モチベーションを高めるという観点では、現場の従業員を定期的に評価する機会を設け、当事者意識を育てる施策も有効です。

生産効率化は製造業において不可欠

製造業において、生産効率化は避けて通れません。管理体制や作業工程の可視化を行うことで、適切な人員配置ができているか適宜見直す必要があります。
また、生産効率化を実現するための方法は複数あるため、現状のボトルネックや従業員のモチベーションを考慮しつつ、適切な施策を行っていきましょう。

引用(参考)
注1:生産現場の改善と原価計算 | 柊紫乃・上總康行
注2:生産ラインにおけるロット数変化による生産効率の改善 | 峯村匠

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