ブルーオーシャン戦略とは?効果的な活用法と最新事例を紹介

ビジネスとは、需要があるから成り立つものです。そして世の中には、まだ誰も気づいていない需要がどこかに眠っています。 これを探し出し、市場に新しい価値を提供する施策が「ブルーオーシャン戦略」です。 本稿では、ブルーオーシャン戦略の基礎知識や重要となるポイント、戦略を採るメリット・デメリットから成功事例5選までを解説します。

シェアする
ポストする

ブルーオーシャン戦略とは?

ブルーオーシャン戦略とは、競争のない未知の市場である「ブルーオーシャン」を探すための戦略を指します。

未知の市場というのは、潜在的な需要は眠っているけれども、まだ誰も足を踏み入れていない市場のことです。

そのため、ブルーオーシャンは完全に新しく開拓された市場や、既存市場の中でまだ開拓されていない領域のいずれかに該当します。

ブルーオーシャン戦略は、INSEAD(欧州経営大学院)の教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュが著したビジネス書『ブルーオーシャン戦略』の中で提唱され、それ以降多くの経営者に影響を与えているものです。

レッドオーシャンとは?

『ブルーオーシャン戦略』では、競争のないブルーオーシャンという市場環境の対比として、「レッドオーシャン」という概念が登場します。

レッドオーシャンとは、参入する企業が多く、限られた需要を奪い合う状態が続く既存市場です。

こうした環境では、差別化できる要素が少なく、激しい価格競争が起きやすくなります。

レッドオーシャンの環境をどう生き抜くかではなく、どう抜け出すべきかを模索するのが成功への近道です。

ブルーオーシャン戦略の重要ポイント

ブルーオーシャン戦略最大の特徴は、低コスト化と差別化を両立することです。

すなわち、買い手が自社の製品・サービスだけに着目していて、かつコストを削って利益を最大化できる状態が理想とされます。

そこで重要となるのが、「バリューイノベーション(価格革新)」というアプローチです。

バリューイノベーション(価値革新)とは?

バリューイノベーション(価値革新)とは、市場にかつてない価値を提供して、顧客の満足度を大幅に高めつつ、無駄なコストを省き、低コスト化を実現することで、十分な売上を目指すアプローチです。

イノベーション(Innovation)は「技術革新」と訳されることもありますが、バリューイノベーションは技術的アプローチに限定されず、新しいサービスや価格体系といったビジネスモデルの革新も含みます。

続いて、バリューイノベーションを実践するためのフレームワークをふたつご紹介します。

フレームワーク1.戦略キャンバス

戦略キャンパス

戦略キャンバスとは、ある業界内で顧客の満足度が高い競争要因を探すためのフレームワークです。

競争要因は、「価格」や「接客サービス」など、顧客が満足し得る(価値を感じ得る)ポイントと置き換えてみましょう。

このフレームワークでは、グラフを使った分析を行い、横軸に「業界の競争要因」、縦軸に「競争要因がもたらす顧客の満足度」を設定します。

そして、自社や競合他社を含む会社ごとに、各競争要因の満足度を10段階などで評価していくと、画像のような折れ線グラフ(価値曲線)が出来上がります。

このように既存の業界を整理することで、どの競争要因でバリューイノベーションを実施するかの客観的な検討が可能になります。

フレームワーク2.アクションマトリクス

増やす 付け加える
業界標準と比べて増やすべき要因 業界がこれまで提供したことのないもののうち、今後付け加えるべき要因
減らす 取り除く
業界標準と比べて減らすべき要因 業界がこれまで提供してきたもののうち、取り除くべき要因

アクションマトリクスとは、現状の競争要因に対して、「取り除く」「増やす」「減らす」「付け加える」という4つのアクションを検証し、バリューイノベーションを具体的にどう実施するかを決めるためのフレームワークです。

ブルーオーシャン戦略には、差別化と低コスト化の同時達成が不可欠ですが、これらは何かを得ると何かを失うトレードオフの関係にあります。

つまり、差別化するために付加価値を「増やす」または「付け加える」と、その分コストが増えてしまいます。

そのため、代わりに別の部分のコストを「減らす」または「取り除く」ことで負担を軽減する必要があるのです。

アクションマトリクスは、このように付加価値とコストのジレンマを整理し、解消するための戦略を練るための土台として効果的と言えるでしょう。

ブルーオーシャン戦略のメリット・デメリット

顧客の価値観やニーズが多様化し、ビジネス課題が複雑化している現代こそ、ブルーオーシャン戦略が活きてきます。

しかし、あらゆる業界のどの企業も採用すべき万能な戦略とも言い切れません。ブルーオーシャン戦略を活用するにはメリットとデメリットの理解が必要です。

ブルーオーシャン戦略のメリット

低コスト・差別化の両立

さきほど紹介したブルーオーシャン戦略の特徴は、そのままメリットに置き換えられます。

低コスト化と差別化を両立した状態で、市場にきちんと需要があれば、大きな利益を手にすることができます。

シェアの獲得

ブルーオーシャンには競合他社がほとんどいないため、新規に開拓した市場ならシェアはほぼ独占できます。

既存市場の中でブルーオーシャンを発見できた場合も、その市場におけるシェアをさらに獲得できるでしょう。

ブルーオーシャン戦略のデメリット

高いマーケティング能力が求められる

ブルーオーシャン戦略では、これまでにない新しい価値を市場に投じることになるため、それが評価されなければ事業として成り立たないという一面もあります。

そのため、創造した価値を的確に顧客へと伝えるマーケティング能力が必須です。経営者は必ずマーケティングの知識やセールスポイントを備えておきましょう。

模倣されるリスクが高い

ブルーオーシャンは、いつまでも新しい領域でいられるとは限りません。

一度市場が開拓されてしまえば、他の企業がその存在を認知し、似たような事業を立ち上げてその市場に参入する可能性は十分にあります。

そのため、ブルーオーシャンにあぐらをかくことなく、市場環境の変化を見据えた戦略も検討しておきましょう。

ブルーオーシャン戦略の最新事例5選

ブルーオーシャン戦略を実施するための方法論やメリット・デメリットを理解していただけたところで、次は実際の企業が収めた成功からイメージを掴んでみましょう。

最新の事例から5つを選んで、それぞれの企業の試みについて解説します。

三菱電機

三菱電機株式会社は2019年4月、これまでにない異例のオーブントースター「ブレッドオーブン」を発売しました。

同商品は、食パン1枚をひたすら素早く、そして美味しく焼くことに特化しており、3,000円が相場のトースター市場の中で、1台3万円という高価格設定を打ち出しています。

市販の食パンを高級品にランクアップさせるという新たな価値が評価され、発売前の予約だけで、初回生産予約台数の2倍の受注が発生するほどの話題となりました。

新日本プロレス

プロレスの興行を営む新日本プロレスは、もともとマニアだけをターゲットにしていましたが、最近では非顧客層として女性を獲得する方向へと舵を切っています。

方向転換のため、暴力的な流血シーンやマイクパフォーマンスを取り除き、代わりにスポーティーで楽しい要素を増やすなど、より広い層に受け入れられるようにエンターテイメントの価値を変革したのです。

スタディサプリ

株式会社リクルートが提供する「スタディサプリ」は、月額980円で小学校から大学受験までに必要な授業をオンラインで受けられる学習サービスです。

従来の塾や予備校のあり方では、教室として使う場所や授業を教える教師を確保する必要があります。拠点によっては、授業の内容や指導力に差が生じるという課題もありました。

これに対しスタディサプリは、インターネットサービスという1拠点から授業を発信することで、物理的な制約や教育上の課題を解決するという新たな価値を生み出しました。

QBハウス

QBハウスは、10分1,000円という低価格で素早く散髪してもらえる理店の全国チェーンです。

これまでの理容業界で常識だったシャンプー・顔剃りといったサービスを行わず、ひたすらカットに特化しているのが特徴です。

髪を切る時間も惜しいほど忙しいビジネスマンを主とした顧客層の人気を獲得し、低コスト化と差別化を見事に実現しています。

星野リゾート

星野リゾートは、「星のや」「リゾナーレ」といったブランドを国内外に展開する高級リゾート運営会社です。

同社の経営は、土地や施設を所有せず、運営に特化したスタイルが特徴です。

都市型ホテルでは所有と経営の分離は一般的でしたが、リゾートや温泉旅館のカテゴリーでこのスタイルを採用するのは業界初の試みとなります。

結果として、施設を持つ上でかかるコストを撤廃しつつ、規模を活かして高い収益をあげることに成功したのです。

ブルーオーシャン戦略で自社の価値構造を見直す

ブルーオーシャンは、「誰も見たことがない新境地」という壮大なイメージが強いですが、その正体は深い奥底に眠っている顧客のニーズです。

そのニーズを掘り起こすのは地道で困難な作業となるでしょう。

近年では、インターネットひいてはスマートフォンやSNSの普及によって情報環境が著しく変化しました。

すなわち、ニーズは多様に散らばり、姿かたちを激しく変えるようになったのです。

市場の価値がうつろいやすい今だからこそ、ブルーオーシャン戦略を自社の価値構造の見直しに活用してみてはいかがでしょうか。

コメントを送る

頂いたコメントは管理者のみ確認できます。表示はされませんのでご注意ください。

※メールアドレスをご記入の上送信いただいた方は、当社の利用規約およびプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

コメントが送信されました。

関連記事