建設機械レンタル業界の再編が進むか

国内の建設投資は曲がり角を迎えている。2020年の建設投資額は6年振りの前年比マイナスとなり、2021年度もさらに落ち込むと予想されている。建設機械のレンタル業界にとって、建設投資の縮小は建設機械の稼働率の低下に繋がり、収益面でネガティブな影響がある。既に、建設機械レンタル業界では、大手各社主導の再編が進んでいるが、その動きが加速する可能性もありそうだ。

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2020年度の国内建設投資は6年振りの前年割れに

図表

建設経済研究所では、国内建設投資は2020年度に前年比3.4%減の59.71兆円、2021年度に同5.8%減の56.25兆円と前年割れが続くと予想する。
2020年度は、政府建設投資は増勢を維持するものの、民間建設投資が同7%減と落ち込み、6年振りの前年割れとみている。
一方、2021年度は、民間建設投資が前年比1%増と回復するが、政府建設投資が同17.4%減と大きく落ち込むとみている。ただ、現在の設備投資抑制の一因となっている新型コロナの影響の収束状況によって、民間建設投資は変動する可能性がありそうだ。

レンタル市場は東日本大震災(2011年)以降急拡大

建設機械のレンタル業の市場規模は、1990年代は建設投資が縮小する中で、建設機械の所有からレンタルへのシフトもあり、横ばい圏で推移していた。現時点では、日本で使用されている建設機械の約6割がレンタルとなっている模様だ。

2011年以降は、東日本大震災後の復興需要、自然災害の復旧工事などを背景に建設投資が増加基調に転じたこともあり、2019年の建設機械のレンタル市場は、2010年比で2.6倍の1.2兆円と急拡大した。

新型コロナで、建設機械レンタル市場には減速感

建設イメージ

2020年に入ると、新型コロナの影響による建設工事の遅れなどもあり、建設機械レンタル大手各社の売上も増勢が鈍化。業界大手の「西尾レントオール」の売上高の伸び率は、20年1-3月3.5%増、4-6月8.7%減、カナモトは同20年2-4月3.7%減、5-7月1.0%減と両社ともに4月以降に減速感がでている。
前述したように、国内の建設投資は2020年以降に減少基調に転じると予想されている。これに伴い、レンタル用の建設機械の稼働率低下、レンタル価格の下落に繋がる可能性が高く、2021年度の建機レンタル各社の収益は厳しくなりそうだ。

中国建設機械メーカーの台頭も中期的な懸念要因

建設機器メーカーイメージ

中国の建設機械メーカーでは、最大手の「三一重工」(SANY、長沙市)が中国内や東南アジアなどで台頭しているが、日本での存在感は薄い。しかしながら、中国メーカーの台頭は、建設機械の中古機の市場に影響を及ぼす可能性がある。

日本の建機レンタル会社では、レンタルで使用した機械を中古車市場で売却することも収益の1つとなっている。日本や香港の中古車市場では、日本の中古機の人気が高く、中国や東南アジア、中東などのバイヤーが購入者となっている。
今後は、中国メーカーの中古機が大量に出回る可能性があることや、中国や東南アジアでは日本の中古機から中国メーカーの新車にシフトという動きもあり、日本メーカーの中古機の価格下落リスクが懸念される。

業界再編が加速する可能性も

日本建設機械レンタル協会の正会員は2020年5月で1,078社ある。このうち、同協会が毎年実施している調査で回答した企業715社でみると、資本金5,000万円以下の会社が約8割を占めており、地方の中小規模の会社が大半を占めている。
日本の建設機械のレンタル市場では、アクティオ、カナモト、西尾レントオール、レンタルのニッケンの大手4社が、売上規模1,000億円超の大手である。これらの大手企業は、地方の中小レンタル会社を傘下に収めて、シェアを上昇させている。今後も、建設投資の抑制、レンタル価格の下落、中古車価格の下落などの影響が強まれば、中小のレンタル会社は苦境に陥る可能性が高く、業界再編が加速することになりそうだ。

大手主導による業界再編が進む公算大

建設機械レンタル業界では、大手メーカーは(1)買収や提携によって販売網を拡充、(2)建設機械以外の分野でのレンタル事業の拡販、(3)海外レンタル会社の買収などによって、売上拡大を目指す動きを強めている。一方で、中小のレンタル会社は、単独での業容の拡大を図るのは難しく、大手や中堅のレンタル会社との連携強化が重要となってきそうだ。

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