プロダクトライフサイクル(PLC)とは? 成長フェーズに適したマーケティング施策を解説

プロダクトライフサイクル(PLC)は、製品・サービスを「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのフェーズに分けてS字の成長曲線を描き出すモデルです。1950年にジョエル・ディーンが提唱したマーケティング理論です。 製品ライフサイクルとも呼ばれ、製品が市場に投入されてから衰退するまで「商品には寿命がある」という考え方です。消費者ニーズが細分化した現在、多くの製品や事業で「プロダクトライフサイクル」が短くなっています。 そのためプロダクトライフサイクルを長期化し、利益を最大化させるには、プロダクトライフサイクルの4つのフェーズ(導入期・成長期・成熟期・衰退期)に関する分析・把握が欠かせません。今回は、プロダクトライフサイクルのフェーズごとの特徴を中心に解説していきます。

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プロダクトライフサイクル(PL/製品ライフサイクル)とは?

プロダクトライフサイクル(PL/製品ライフサイクル)とは?

プロダクトライフサイクルとは、製品や事業が生まれてから消えるまでのプロセスのこと。いわば「製品の一生」を表す流れを言います。

プロダクトライフサイクルは一般的に、売上や利益、競合他社の数や顧客層などから見て、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのフェーズに分類されます(成熟期と衰退期の間に「飽和期」を入れて5つのフェーズで説明されることもありますが、本記事では4つのフェーズで説明していきます)。

プロダクトライフサイクルを理解するメリット

プロダクトライフサイクルを理解する最大のメリットは、最適なマーケティング戦略によって利益を最大化できることです。

プロダクトライフサイクルにおける「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4フェーズの特徴を知ったうえで、「自社製品が今、どの段階にあるか?」を把握することで、最適なマーケティング戦略を導き出すことができます。

たとえば、成長期に入ったと見るや増産して販路を拡大したり、衰退期に入ったと判断すればコストを抑えつつ撤退を検討するなど、製品の「現在地」によってマーケティング戦略も事業の方向性も大きく変わってきます。逆に、現在地を見誤るとマーケティング戦略も的外れなものになり、チャンスを逃したり、無駄なコストを垂れ流したりする原因になります。

投資するタイミング、経営資源の分配率、競合他社の参入時期、顧客ニーズの変化、市場からの撤退時期など、正確な予測に基づいて適切な判断をするには、プロダクトライフサイクルの理解・分析が必須です。

導入期

プロダクトライフサイクルの導入期は、製品が市場に投入されたばかりのフェーズです。顧客の認知度も需要も低く、売上も大きくありません。開発や広告などの初期投資をしているぶん、利益はほとんど出ません。

この段階で製品を購入してくれる層を「イノベーター」「アーリーアダプター」と呼びます。いわゆる最先端の技術や流行に敏感な新しいもの好きです。

導入期は認知形成が最優先

導入期は、製品の認知向上のため、顧客への啓蒙を中心としたマーケティング活動に専念しなければいけません。一般的には、試供品・サンプルの提供、発表会・展示会の開催、SNSの活用などによって認知向上に努め、地道に市場を開拓していきます。

成長期

プロダクトライフサイクルの成長期は、市場での認知形成が確立し、製品が普及していくフェーズです。市場規模が大きくなり、一気に売上拡大を目指すことができます。また、生産効率の向上にともないコストを削減できるため、利益を最大化できる時期です。一方で、新規参入してくる競合他社も増加します。

成長期には、新製品が市場でシェアを獲得するために超えなければいけない大きな溝「キャズム」があります。このキャズムを超えられるかどうかで製品の成否が決まってくるため、あらゆる製品にとって導入期は非常にタフな時期だと言えます。

関連記事:キャズム理論を徹底解説。市場を独占するために何が必要か?

成長期はシェア拡大&売上の最大化を狙う

成長期は、規模の経済性や学習曲線による経済性(経験曲線)を活かしながら、設備投資や販売チャネルの拡大に努め、大量生産を進めていきます。一気にシェア拡大を目指せる時期であり、「普及率16%の壁」を超えられるかどうかが大きなポイントになってきます。

成長期の後半になると消費者ニーズが多様化してくるため、新機能の追加、製品の改良、種類・バリエーションの増加といった展開も必要になってきます。

成長期の顧客層は、いわゆる「アーリーアダプター」とそれに追随する「アーリーマジョリティ」が中心です。インフルエンサーマーケティングが奏功するケースは多く、嗜好の似た消費者を獲得していくことで大きくシェアを伸ばせる可能性があります。

成熟期

プロダクトライフサイクルの成熟期は、競合他社や類似製品が増えて市場が飽和するフェーズです。市場の成長は鈍化し、売上・利益ともに横ばいになります。市場のシェアが安定することで製品がコモディティ化(製品の市場価値が低下)するとともに、価格競争に陥りやすい時期でもあります。

成熟期は差別化が重要

成熟期に入ったら、シェアの高い企業はコスト優位性を活かしてシェアを守ることが重要です。一方で、シェアの低い企業は生き残りをかけ、特定のターゲットを狙った差別化戦略やリブランディングが重要になってきます。

関連記事:コストリーダーシップ戦略とは?差別化・集中戦略との違いやメリット・リスクを解説

成熟期の顧客は、いわゆる「アーリーマジョリティ」や「レイトマジョリティ」と呼ばれる追随者が中心になります。彼らは、製品の目新しさより安全性や信頼性を重視し、周囲の大多数の人たちが使うようになってから同じ選択をするため、マスメディアへの広告出稿などが効果的です。

衰退期

プロダクトライフサイクルの衰退期は、市場のニーズが低下し、売上・利益が減少してくるフェーズです。顧客の購買意欲は低くなり、代替製品や他のテクノロジーを求めるようになります。事業の維持・継続が困難になるケースも少なくありません。

衰退期は新規市場の開拓、もしくは撤退を検討する

衰退期は、投資を縮小しながら既存顧客を維持していくことが重要です。既存顧客やロイヤルカスタマーのためにアフターサービスの充実やサービスの細分化などの施策をおこないますが、一方では、新たな市場を開拓する生存戦略を模索していく必要があります。新たな市場を見いだせない場合は、撤退のタイミングを見極めていくことになります。

短命化するプロダクトライフサイクル

経済産業省の「ものづくり白書(2016年版)」(※1)を見ると、あらゆる業界でプロダクトライフサイクルが短くなっていることが伺えます。製品ライフサイクルの変化について10年前と比べて「あまり変わらない」という回答が多いものの、すべての業種において「長くなっている」より「短くなっている」と回答する企業が上回っています。

プロダクトライフサイクルが短命化する主な理由は、以下の3点です。

理由1:市場ニーズの移り変わり

同白書では、製品ライフサイクルが短くなっている理由として「顧客や市場のニーズの変化が速い」(53.5%)という回答がもっとも多くなっています。顧客・市場ニーズの移り変わりが速くなると、成長期・成熟期を長く維持することが難しくなり、そのぶん衰退期が訪れるのも早くなります。

理由2:急速に進む技術革新

同白書では、製品ライフサイクルが短くなっている理由として「技術革新のスピードが速く、製品の技術が陳腐化しやすい」(20.7%)という回答も目立ちました。テクノロジーの著しい進化によって、既存製品の価値を代替する、もしくは上回る製品が登場するのが早くなっています。

理由3:POSシステムの普及

POSシステムの普及により、顧客ニーズを素早く拾い上げて製品化するのが一般的になる一方で、POSデータをもとに、売れ行きが良くない製品は早々に見切りをつけられるのが最近の傾向です。将来、成長期・成熟期へと進める可能性のある製品も、短期的な評価で姿を消すケースが増えています。

プロダクトライフサイクルの長期化か、多角化戦略によるリスク分散か

プロダクトライフサイクルの各フェーズに適した戦略を採用できれば、成長期、成熟期を長期化することにもつながり、結果として売上・利益の最大化に貢献できます。とはいえ、あらゆる業界でプロダクトライフサイクルが短命化しているのは、上述したとおりです。

今後は、複数の製品・事業を展開してプロダクトライフサイクルの影響を受けにくくする多角化戦略も視野に入れ、柔軟な経営を進めていくべきでしょう。

関連記事:アンゾフの成長マトリクスとは?多角化戦略などの4象限を事例とともに解説

※1参照:第1部第1章第3節 市場の変化に応じて経営革新を進め始めた製造企業:2016年版ものづくり白書(METI/経済産業省)

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