データレイクとは? データウェアハウスとの違いや導入メリットを解説!

AIやIoTと行った最新技術の登場や、経産省が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)の認知拡大に伴い、多くの業種業界にデジタルシフトの波が押し寄せています。デジタル技術を活用することで、企業の取り扱うデータ量は増加。そうした膨大かつ複雑なデータは「ビッグデータ」と呼ばれ、その中から価値あるデータを抽出・分析することで競争優位やビジネスチャンスといった経営戦略に役立っています。
そこで、ビッグデータを効率的に蓄積・分析・活用するために注目が集まっているのが「データレイク」です。今回はデータレイクの概要、データウェアハウスやデータマートとの違い、データレイクを導入するメリットなどを解説していきます。

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データレイクとは?

データレイクとは、あらゆるデータを蓄積できる「湖」のようなデータ貯蔵庫をさし、データをより柔軟に活用するため事前処理を行えます。

企業に蓄積されるデータは、大きく「構造化データ」と「非構造化データ」に分類できますが、データレイクのメリットになっているのが、構造化データだけでなく非構造化データもそのままの形で保存できる点です。

まずは理解の前提として、構造化データと非構造化データの違いについて確認しましょう。

構造化データとは?

構造化データとは、「列」と「行」の概念を持ったデータのこと。ExcelやCSVデータのほか、ERPやCRMなど業務支援ソフトで利用されるRDB(リレーションデータベース)に格納されるデータなどが構造化データに該当します。

構造化データはフォーマットが決まっているため検索・集計・比較しやすく、データの解析・分析にも適しています。

非構造化データとは?

非構造化データとは、用途や形式が様々で、構造化されていないデータのこと。メール文書やOfficeドキュメント、SNSのテキスト、画像、動画、音声などのデータが代表的です。

エッジデバイス・IoTデバイスから収集されるセンサーログやGPSデータなども非構造化データに該当します。

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データレイクの特徴・メリット

データレイクの特徴・メリットとしては、一般的に以下の3点が挙げられます。

様々な形式のデータを一元管理できる

ビッグデータは構造化データ・非構造化データ問わずあらゆるデータを意味しますが、昨今の企業で取り扱われるデータの大部分は非構造化データです。

非構造化データは容量が大きく、データ量の増加にともないデータの一元管理に苦労する企業が増えています。この課題を解決できるのが、様々なデータを同じように保存できるデータレイクです。

本来、構造化データと非構造化データは別々に管理されますが、2つの異なるデータを結合することで、より高度な分析が可能になります。データレイクは異なる構造のデータを同じ場所に収容・一元管理できるため、企業のデータ分析を推進する方法として注目を集めているのです。

データの蓄積と抽出が簡単

データレイクは、ビッグデータを生データ(ローデータ)のまま保存できるのもメリットです。データを格納する際に構造化する必要がなく、未加工のまま蓄積できます。手間・労力をかけることなくリアルタイムに大量のデータを次々と格納できるのは、データレイクの真骨頂だと言えるでしょう。

また蓄積されたデータは、必要に応じて簡単に抽出・参照できます。データレイクでデータ活用のための事前処理を極力削減することで、企業は新しい情報資源を迅速に獲得し、スピード感を持った意思決定が可能になるのです。

データウェアハウス(DWH)とデータマートとの違い

データレイクの特徴を理解するため、データウェアハウスやデータマートとの違いも把握しておきましょう。

データウェアハウス(DWH)とは?

データウェアハウス(DWH)とは、構造化データの格納・分析に最適化された貯蔵庫のこと。あらかじめ決められた指標を分析するためにデータを収集・蓄積します。なお、データウェアハウスと近いものに「BI(ビジネスインテリジェンス)」があります。

データウェアハウスに格納されたデータは構造化されているため、効率的かつスピーディーにデータを抽出・分析できます。一方で、事前に決められた定型的な分析しかできないほか、データそのものが少ないと効果を発揮できないことがあります。

データマートとは?

データウェアハウスが全社的に使われるシステムであるのに対し、データマートは部門単位で利用されるシステムのこと。データウェアハウスのなかから、特定の用途・目的に合わせて必要なデータだけを抽出して利用するのがデータマートです。その意味で、データマートはデータウェアハウスの一部だと言えます。

データレイクとデータウェアハウスの違い

データレイクもデータウェアハウスも、企業内に散在するデータや日々増え続けるデータを統合し、一元管理するためのシステムですが、主に以下の2点で異なります。

非構造化データならデータレイク

データウェアハウスは、非構造化データを蓄積するのには向いていません。データウェアハウスに格納する非構造化データはETL処理をおこなう必要があり、膨大なデータを処理するとなると莫大なコスト・労力を要します。

刻々と生み出されていくビッグデータをリアルタイムに格納するには、ローデータのまま格納できるデータレイクが最適です。

特定の目的があるかどうか

データウェアハウスは、データの分析要件ありきで、特定の目的に沿ったデータだけを社内の各システムから収集・蓄積します。

一方で、データレイクはデータ収集時に目的を定義しません。多種多様なデータをリアルタイムに蓄積し、後に必要なデータを抽出・活用するのが特徴で、「何に使うか分からないけど、使う可能性があるデータは貯めておこう」という思想が根底にあります。

データレイクの課題

データレイクには多種多様かつ膨大なデータを蓄積できますが、やみくもにデータをプールしていくと、後になって「必要なデータの場所が分からない」「データが利用可能な状態か分からない」といった問題が生じます。

この状態は、データ(魚)が見つけやすいレイク(湖)から、データ(魚)を見つけにくいスワンプ(沼)になる様子になぞらえて「データスワンプ」と呼ばれます。

データレイクがデータスワンプ化するのを避けるには、「データカタログ」が欠かせません。データカタログとは、各データのタイトルや概要、出どころ、ファイル形式などのメタデータを付与して整理整頓したものです。

データカタログを作成することで、誰でも容易にデータの状況を把握でき、必要なデータを簡単に発見・抽出できるようになります。

データレイクの構築事例|アプリ開発に役立てる株式会社ジンズ

眼鏡大手の株式会社ジンズは、データレイクを導入してアプリ開発などに役立てています。

同社が開発した「JINS MEME」は、加速度センサーや眼電位センサーなどが付いており、黒目の動きやまばたき、頭部の傾きや揺れなどを測定できます。同社は、JINS MEMEから得られたログデータをデータレイクに蓄積・分析することで、新しいアプリ開発のアイデアとして活用したのです。

結果、2018年以降2つのアプリを開発しリリース。アスリートやランニング愛好者向けに走行フォームの改善点をアドバイスする「JINS MEME RUN NEXT」や、デスクワーク時の集中力を測定する「JINS MEME OFFICE」です。

同社のデータレイク活用は新規サービスの開発にとどまらず、既存アプリの改良にも役立てています。

ビッグデータをより柔軟に、より多元的に活用しよう

目まぐるしく変化する市場において、将来どんなデータが必要になるかは分かりません。今は価値がないように思えるデータから、後に画期的な発見が生まれる可能性は十分にあります。

今後、ビッグデータの活用が激化するデジタル時代において、データレイクの活用は、新しいビジネスやサービスが生まれるアイデアのきっかけとなるでしょう。

本編では、データレイクとデータウェアハウスを比較しましたが、これらは選択的に導入するものではなく共存共栄の関係にあるものです。それぞれの長所を活かした運用ができれば、ビッグデータをより柔軟に、より多元的に活用できるでしょう。

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